第10話 大福運案
「それは府を都にするようなものじゃないか!」
そう聞いてきたのは金髪のチャラい男だった。
「あれは確かに有効なことだろう。政治的な観点から言えば必要なことだ。」俺は答えてやる。
「二番煎じはごめんだ!」と立ち上がり去ろうとする。
「だからこそ、ここで立ち上がらないといけない。」俺はそう言って止める。
「府と県でやる必要がある。それに順番も大切なんだ!」俺は断言した。
「なぜだ!それをやるなら都の近くに府でも設ければ早い話じゃないか?」金髪は聞いてきた。
「お前、本気で言ってんのか?」と俺は聞いてみる。
「ちっ。」とドカッと座って聞く気になったようだ。
「俺の考えは都心部からの脱却だ。現在の人の流れを一度、都心部から地方へと流さないといけない。それを経済的に言えば流れになるのだろうさ。今府からそれをやってしまうと、更に二大都市圏に人間が集まりすぎる。」
「ふん。」と聞いてやるよという態度で先を促してくる。
「そしてそれを返す。最後の締めに府を都になってもらう、これを循環と呼ぼう、そしてこれが経済になる。」
「物が動くからか?だがそう簡単じゃないぞ?」
「だから、都から遠い所からこの改革をしないとダメになる。」
「一番遠くて都市になりうる。国内の都への流れを止めるんだったら、そうするしかないか・・・」と何やら考え込んでいる。
「国外からの流れも同時に受け止めるさ。ここにはアジアの国々が近くにある。」
「なるほど日本でアジアに一番近い都市になるわけだな。」と納得するこいつと話すのは面白いな。
皆を見るとポカンとしていた。
「まぁ今のはちょっとした俺の妄想の話だ。だが、これからの県の発展を考えると悪い話じゃない。」
うんうんと頷いているもの、よくわかってないものがいる。
「府と県でやるから大福運案だな。ゴロがいいのも縁起がいい。幕末で言うところの薩長同盟と言った所かもしれない。」
顔を上げる人達。
「幸せを運ぶことを俺達はやるわけだ。とりわけ俺らはサンタクロースか?」と金髪君が聞いてきた。
「さあな、これによって少なからず、良い方向にか悪い方向に変わっていく。終わり行くこの国を変える博打を打つなら、今この時しかないと俺は思った。ただそれだけだ。」
「はっ!ラストチャンスってやつか!それは激熱だな!」
「ああ、俺の予想ならギリギリだ。イレギュラーがなければな。」
「爆弾のタイムリミットまで把握済みか。」と面白そうに笑う。
周りの人間はなんの話をしているかわからないだろう。
「その方法を取れば戦争にならずに済むんですか?」とおずおずと手を上げる挙動不審な女の子。目元まで髪で隠れている。
「ほう、その真意にも気付くか。」
「ええ。」と俺とその女の目はしっかりと見つめ合う。
「おい、それはまさか!いやないだろう!」と声を荒げる金髪君。
「俺もないと思いたいが、歴史がそれを物語っている。経済が衰退していく国は結局は戦争に行きついちまう。破綻したら特にだ。軍部とかの暴走を俺達民衆が止められる可能性は限りなく低い。」
「おいおい。そこまで飛躍すんのか?」
「歴史は繰り返すという奴だ。ないとは言えないところが辛い。したがる国もあるからな。それをして不利益が出ていることを学ばないと先には進めないのさ。」やれやれとする。
「ならその方法はどうすればいいんですか?」
「知らん!」と真顔で答える。
「そこで切るなよな!」
「ああ、結局のところ皆が皆それぞれで平和の事を考えて、答えに辿りつかないといけないということさ。」
「国々の思惑や考え方の違いもありますからね。」と女の子が言う。
「難しい。」と頭がオーバーヒートしたのだろう項垂れているツインテールの女の子がいる。
「こら!私の友人なら、しっかりしなさい。お兄様の言葉こそ正義なのです!間違っていませんわ!」
「おいおい。」と妹を注意した。
よく見れば西島が連れてきた友人たちは放心状態だった。
「おい、結局お前は俺達を集めて何がしたいんだ!偉そうな話なら政治家にでもなれよ。まぁお前みたいなのはたぶん通らないだろうけどな。」と言ってくる。
「政治家とか、あっそれ無理。俺、議員とか嫌いだから!」
「はぁー。今の今までの話しでそう言うレベルの話しじゃないのか?」と呆れる。
「違う、違う。だから俺達でその考え方をぶっ壊そうって話だよ!」
皆が皆唖然としている。妹は隣のツインテールの女の子を構っているが・・・
「だから何の話だよ!」ここまで話しても気付かないものなのか?
「あのたぶんですけど。」と目が前髪で隠れている女の子が話す。
「どうぞ!」と両手を彼女に向け俺は促した。
「たぶん、議員さん達やこの国の人々を説得する感じなのでしょうか?」
「正解です。」と両手の親指を立てた。なんか変な目で俺を見られているな。
「おほん。」と咳ばらいをした。
「というわけで俺達はこの事を広めて、この日本の再生を始めるのだった。」
パチパチと手を叩くのは妹のみだった。
うん、まだ先は遠そうだ。
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