第9話 語りかける

市内某所。


俺達は皆が集まれる場所、事務所を借りた。

そして人集めが始まる。



俺 西島 拓真は今の仕事の同僚に話し、人集めをしていた。

「何それ詐欺じゃないの?」とか言われて凹んだりしたが、粘り強く説得して来てもらえる事になった。


ちょっと少ない三人。これが俺の限界だった。ごめん兄貴!と謝った。

しかし、たまたまスーパーで買い物をしている時に川山さんの知り合いに会った。

急にこんな話しをするのは悪いかもと思ったが、俺は勇気を出して話しをして集まってくれる事になった。何人か誘ってくれるらしい。


これが俺のすべてだった。


私 岡 真理愛は困っていた。

政治の話しを出せば誰も敬遠して話したがらない。


それでもと何人かの友達に声をかけて二人は確保することが出来た。


「あら、何人くらい集まったのかしら?」と麗美が聞いてきている。

どこから現れたのだろうか?


二人と指で答えた。

「まぁ貴方にしては頑張ったのではなくって?私はすでに三人ほどですが・・・おほほ。」と挑発してくる。この差は大きいぞと言ってきているようなものだ。


「ぐぬぬ。」と私は悔しがった。見てなさいと決意し再び集め始める。


結果四対四の引き分けに終わった。二人とも納得は行かなかった。



俺はSNSで人を探したりしていた。

今呼びかけに答えてくれているのは五人ほどだった。

俺から言うのはなんだけど犯罪の可能性があるからよくよく考えてくるようにと言っておいたが皆来るみたいだ。まぁわざわざその可能性があるって暴露してるんだからそんなことはないか・・・


それから元の職場の同僚などに声をかけたがあまり芳しくなかった。

まぁ勤務態度わるかったからな。


一人来てくれるみたいだが・・・どうだろうか?



沢山の人に声をかけ二十人くらいの若い男女がここに集まっていた。


俺は奥の部屋で緊張していた。

こんな人前で話すことは苦手だ。

失敗しない様に何度も原稿を読み。


練習を重ねた。


もう暗記できたくらいに俺は原稿を呼んだだろうか。

そわそわし出す。落ち着いていられない。


今更これで良かったのかなんて誰にもわからない。

でも俺はここから歩き出し、この国の可能性を示さなければならない。


それが正しいことか、正しくないことか俺にはわからない。

ただ正しいと思って進むしか、道はなかった。


それが結果に結びつくのはたぶん十年後くらいになるんじゃないかと思う。


もう腹は決まっているのにこんなにも恐い、手が震えてその責任の重さが俺を殺しに来る。


置いてあるペットボトルのお茶を飲み。咳き込んだ。俺は椅子に腰掛ける。


今、逃げ出せば楽になれる。


またあの日常に帰れる。

そんな思いを首を振ってやり過ごした。

なんだか幻覚で川山が笑っているような気がしたが気のせいだろう。


コンコン。とノックの音がする。

入ってきたのは真理愛だった。


「緊張しているの?大丈夫?」と声をかけてきた。

「だ、大丈夫べ。」と途中噛んでしまった痛い。


そんな俺を後ろから抱き締めてくる。


「なんのつもりだ。」と俺は訝し気に聞いた。

「ただ、私が元気づけようと抱きついただけよ。」と返してくる。

「そうか。」と俺は返しておいた。今は甘えておこう。


「よし!」と俺は顔を両手で叩いて椅子から立ち上がった。


「気合が入った?」

「ああ、俺はやる!やってしまう!」とまだ若干震えている。


「こ、これは武者震いだからな!」と真理愛に言い訳をした。

「はいはい。」と返事をしている。


俺はそのドアを開けた。


部屋の中には二十人くらいの男女がいた。

立とうとするもの未だふざけて遊んでいるものがいる。


俺は立とうとするものを制した。



壇上のマイクを叩いて俺は話し始めた。


「皆さんこんにちは、すまないな長い面白くもない挨拶になるかもしれん。」と言ったら皆ポカンとした顔になる。


「長い長い話しと言うことだ。」


俺は持っていた紙を丸めた。

もはやこれは役に立たない。

大事な部分だけは覚えた言葉、それ意外はアドリブで変える。


「皆は政治はどう思っている。いや答えなくていい、大体わかる。よくニュースで汚職の話とか、選挙の話しばかりしている。なんだか暗いイメージだろう?」

頷いているもの退屈そうな顔をしているものがいる。


「だからその考えを一度捨てて欲しい。」

「はっ?」と皆の顔が驚いた顔になる。


さっきまで話しを聞いていなさそうな奴らが注目しているのがわかる。


「そして皆で一からこの政治を作っていく。」と俺は手を合わせてパチッと言う音を鳴らす。


「しかしそれは難しい。」一転して考えを変える。


「既存のシステムはすでに完成している。そしてそれを守るように政治家達がいるわけだ。」


「もちろん中には変革を志す者もいる。しかしそれは時と共に風化し、さらなる荒波によって飲み込まれる。」俺はこの演説に酔っているのかもしれない。


「だから俺はこの波を起こそうと決めた!」

力強く言う、これを言えばもう後戻りは出来なくなる。


「ふー。」と気合を入れるように息を吐いた。


「俺はこの県を府にする。だから皆に手伝ってほしい。俺に力を貸してくれ!」と皆の前で宣言した。


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