第8話 名を刻むため、道の先へ
「ふふ。」と笑う女 北長 麗美。今は全身赤ジャージに眼鏡をかけていた。
そこには数々のパソコンが並べられ、そして様々な計算方程式がメモ帳の切れ端にテープに貼ってある。
計算をした結果この三枚が当たりの可能性が高い。
私は宝くじ売り場でその番号を探し求め、そして手に入れた。
恐らくこの三枚のうち一枚は当たる。
私は確信した。そして兄様の理想のため。これが必要になる。
私はこの三枚のうち一番確率が低い物を兄様に渡す決断をした。
これが外れれば、兄様と心中でもしましょうか。
それもまた楽しいかもしれませんね。
この妹はブラコンだった。
しかも重度が付くほどのブラコンだった。
「果たしてどうなるかな。」と指を鳴らせばパソコンに兄様の数々の写真が映し出された。それはもう最近のまで・・・私の素晴らしいコレクションだった。
「むふふ。」と笑ったのは仕方ないことだった。思わずパソコンに抱きついてしまう。
「ああお兄様!ああお兄様!」と言っている。狂ったブラコンだった。
「果たしてお兄様の理想は叶うのでしょうか?ふふふ。」と笑ってあの計画を進めるために、私も動き出すのだった。
俺は宝くじの換金が終わった。
俺の貯金通帳の額が凄まじいことになっていた。
「嘘だろ!」と未だ信じる事が出来なかった。
俺はほくそ笑みながら、今日は友人の西島と焼肉だった。しかし貧乏時代の癖が抜けずに安い食べ放題に友人を誘った。乾杯と俺はオレンジジュースで西島もウーロン茶だった。
前の職場の時、西島と飲みに来ると安上がりなものを注文していた。だから一緒に飲む機会は多くなった。
「兄貴!」と言って慕ってくる。この弟分を可愛がるのは、兄として当然のようになっていた。
「ごくごく。」とオレンジジュースを飲む。
「ごくごく。」とウーロン茶を飲んでいた。
「兄貴が焼肉なんて珍しいですね!」
「俺だって食べたいときはあるよ。」
「そうなんですか?」
「ああ。」と頷く。肉を網に沢山乗せる。
もちろん野菜も少しは乗せる。
そして焼いていく。裏返して、食べて追加して食べ?
「お前なんでここにいるんだ?」と西島の横に妹が座っていた。
「あら奇遇ね。」
「奇遇じゃないないだろう。」と俺と妹が睨み合う。妹は見つめ合っているつもりだ。今日はゴスロリ衣装だった。
「兄貴この可愛い子は?」と聞いてくる。
「ああ、俺の厄介な妹だ。」と俺は焼いた肉にがぶりつく。
「ああ、そうなんすね。俺西島 拓真です。よろしくおねがいします。」おいなんだか西島の顔が赤いぞ、こいつお酒飲んだか?
「麗美よ。」と端的に言って焼いたジャガイモを口に運んでいた。
「ちょっとどこ行ってたのよ!」とそこに声をかけてくる女がいた。
「げぇぇ!」と俺は声を出す。迷わず持ってきたバックで自分の顔を隠したくらいだ。
「あれ、貴方、勇樹!」と叫ぶ。そうして隣に座られてバックを剥がされた。俺は頭を抱えることしかできなかった。こうして四人で焼肉を食べる。そして俺は逃げ道を塞がれた。
「ちゃんと今日は家賃を払ってね。」と怒りマークで笑顔だ。
「はーい。」と適当に答えておいた。拓真が麗美に話しかけている。それにそっけなく答える麗美。俺はそんな二人を見ながら無心に焼肉を焼き食べた。
「そう言えば何でここにいるんだ?」と聞いた。
「麗美ちゃんがご飯に行きたーいと言ったので一緒にきたのよ。珍しいと思ったら、そこに勇樹がいたから納得しちゃった。」
「ふん。」と俺はご機嫌斜めだった。
「兄貴そう言えば・・・」
「なんだ?」
「いやなんでもないっす。」そんな拓真を見る俺と麗美。
「そう気付いたのね。」と麗美が返答した。
「?」とわからない顔をする真理愛。
「まぁ、私から言いましょう。」
「ほーっ。」と溜息を吐く拓真。
「お兄様、これからのことを悩んでいるのですね?」その妹の顔は真剣だった。
「なんの事だ。」と惚ける。
「私にはお兄様のすべてがわかります。」と断言するドヤ顔。
「おいそれ恐いんだけど・・・」とちょっと引いた。
「俺も兄貴がなんかこう悩んでんじゃないかなと思っちゃって、聞こうかどうか迷ったんですけど・・・」
「えっ私だけ気付かなかったの?」とショックを受けている真理愛。
「貴女はお兄様への愛足りないからそんなことになるのよ!」
「はぁー!」とキレ散らかしそうになる。
「麗美ちゃん!あの俺もそういう趣味ないからね!」と誤解をさせたくないようで弁解している。
三人が俺を見てくる。俺は頭を掻いた。
「いやまぁ、やりたいことはある。だけどそれが本当にこの国のためになるかわからん。何度も考えて結局答えなんて出せなかったんだ。」三人は黙って聞いていた。
「それに力もなかった。知り合いに政治家もいなかったし、何より俺がやろうとすることはお金がかかる。」と金のマークを作る。
「そして時間もかかる。これがネックだ。遅すぎてもいけないし、早すぎてもいけない。適切な時期に公表する必要がある。」
「それは今の時だと思うよお兄様。たぶんデッドラインだよ。」と話してくる妹。
「計算したのか?」と妹の計算能力はすさまじいことを理解していた。
「はい、私の頭脳と、パソコンの演算で今が最後のチャンスで、最高のタイミングだと言っていましたわ。」と自信満々に言っている。
「まったく出来た妹だ。いやしかし、俺の計画はお前には教えていなかったぞ!」
「私はお兄様のすべてを知ってますと言ったはずですよ。」とニコニコ顔が恐い。こいつはヤバい奴だ。
「あーまぁいいか。」と考えることを辞めた。これ以上考えたらヤバい気がする。
「そして最後のピースだ。お前たちにも協力してもらうからな!」拓真と、真理愛。
「欲を言えば川山も欲しかった。」もういないはずの男を思い出す。
「あいつが俺の案をやると決めれば、この国に光くらいは射したかもしれない。」三人は黙って聞いていた。
「いない男の事を言ってもしょうがないな。」と俺は諦めた。ああ、なんだ俺は実はやりたかったんだな。この国の歴史に名前を残したかったんだ。
俺が生きた証を、川山が生きた証をその意思に変えて、俺が成し遂げる。
「ふっ。」と三人が笑った。俺のやる気に火が付いたことがうれしいのだろう。
「だから人を、俺に紹介してくれ。」と俺は三人にお願いした。机に額をこすりつけた。ちょっと髪が網で焼けたかもしれない。慌てながら拓真が消していた。
この日から四人のこの国を変える道が開けて行った。
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