第6話 妹と幼馴染

「君もエグいことを考えるね。」

「それが政治と言うものでしょう。」

「ふむ。」と考える。

その頭の中で色々考えを巡らせている。


そして目を見開いた。

「よし、その話し乗ろう。」と太ももを叩いた。


「ありがとうございます。」

「いや、いい私も候補を得ることが出来てうれしい。」

「はい。」


その本当の意味を響野は知ることはないだろう。


「それでは先生また会えれば嬉しいです。」


「そうだ君と一回将棋でも打ちたいよ。」

「私は弱いので。」

「私もだよ。」と返してくれる。


二人の視線はお互いの腹を探ろうとしていた。


俺は頭を下げてその場を後にした。


「川山君、君のおきみあげは受け取ったよ。」とそんな言葉を言って冥福を祈った。



あの後、近松先生は響野を擁立することを決めたらしい。

俺はそれを今電話で、響野から聞いていた。


「どういうつもり!」と怒鳴り散らしている。

俺が響野を近松先生にお願いした件で怒っているのだろう。


女のヒステリックは参る。

一瞬ブチっと通話を切ろうと思ったが、黙って聞いていた。


「あ、俺も手伝ってやるよ。」

「そんなものいらないわよ!」と言って通話を切られた。


あいつは本当の所を知らなくていい。

まぁ時間が経てば真意に気付くかもしれないが・・・



「近松が候補を擁立したか・・・亡き彼氏の意志を次いで政治家になる。厄介だなサクセスストーリーが出来上がっているじゃないか。」

そう発言したのはお腹が多少出て、顔が歪んでいる男だった。


「はい。密かに擁立した者が当落線上にあります。」と答える美人な秘書。


「せっかく始末したのにな・・・同じ手を使うわけにはいかない今回は諦めるか。」と言った。


「それが賢明な判断かと。」と秘書は虚ろな目をしていた。


「国会議員の私からしたら小さなことだ。優秀な者は芽のうちから摘んでおかないとな。」と言って盆栽に鋏を入れる。パチッ!


「切りすぎた。これ取り替え、経費で落ちるかな?」と盆栽に向けて話しかける。


「落ちません。最近は厳しいんですよ。」と窘める。

「それは残念だ。」と言って盆栽の盆を投げ捨てる。


割れて粉々になった。


「片づけておけ。」

その一言を後にこの部屋を出て行った。


「男の嫉妬は見苦しい。」と女の秘書は呟いた。


男は顔を整えて今日もゴルフに、料亭に向かうのだった。



近松の支援を受けた響野は無事に当選した。


「どうやらちょっかいは掛けられなかったようですね。」俺は電話越しに近松に語りかける。

「ああ、君のおかげで無事に響野さんは議員になったよ。ありがとう。」電話越しの声。


「どうだろうか?君が望むなら私の紹介で党の・・・」

俺はそれを言わせる前に口を挟む。


「政治には興味ないんで、過労死してしまいますよ。」と俺は断った。


「そうか、残念だ。」

「しかし、これからが大変ですね。」と俺は先の事を心配した。


「ああ、政治は勉強と行動が大事だ。彼女はその意味で素人だろう。何かと私が気をかけておくよ。」と俺達の会話はそこで終わった。


その電話が終わって、俺は部屋の天井を見上げた。


ドンドンとアパートのドアを叩く音がする。


「なんだ。」とここを出ると、アパートの大家さんだった。

割と美人なんだが、こう恐い女なんだ。

俺はそのドアを秒で閉めた。


「家賃、家賃!」と言っているが払えないならバックレるしかない。


どうして俺の周りは気が強くて変な女しかいないんだろうか?



俺はイヤホンをつけてドアを叩く音が聞こえないくらいに爆音で聞いていた。


「てめぇに借りた恩は返せたか?」


俺は友人の写真を見ながら今日は嫌いなお酒を飲んでやることに決めたのだった。


「川山の冥福を祈って!」杯を掲げた。


俺はその杯に口をつけて一口でダウンした。


これで家賃を払わない理由ができたとおぼろげながら思ったのだった。



「まったくあの人は!」と悪態を吐く幼馴染の大家 岡 真理愛。

「それがお兄様の魅力なんですよ。」とそこにゴスロリ衣装を来て、傘を回して歩いてくる女。 


「なんでここにいるの?実家は離れているでしょう。」苦々しい顔をする。


「お兄様を心配して来てあげてるのよ。貴方と違って私はお兄様ラブなのよ!」と傘を折り畳みその先を真理愛に向けてきた。



「だからこれを受け取って。」と札束を渡してこようとしてくる。

「私は家賃はその人からしか受け取らないのよ!」と二人の視線がぶつかる。


「別れた女が何を言っているのよ!」

「貴方に嵌められたからでしょう!」と抗議する。


なんだなんだと周りの住人がこちらを見て、ああいつものことかと納得して普通の生活に戻って行った。


「嵌められたからってお兄様を振る女なんていりません!」

「貴方が女友達をお金で買収して抱きつかせたからでしょう!誰だって浮気だって思うじゃない!」


「ふふーん。」と機嫌が良さそうな妹。

「知らないって顔しないでよね!」と睨みつける。


「あんたが妹じゃなければ!私は一発殴ってやるのに!」と悔しがる。


「ふふ、殴っていいのよ。どこかで映像が撮られているかもしれないけど、それをお兄様に見せれば貴女は終わりよ!」と再びゴスロリの傘の先端を向けてきたのだった。


「そうね、そうかもしれないわね。でも、貴方のお兄さんはどうしてまだここに住み続けているのかな?」


「・・・」と驚いた顔をする妹。


「そうよ。きっとまだ私のことを思ってくれているからなのよ。」とドヤ顔をした。


妹は歯ぎしりをしてお兄様のドアのポストに紙切れを一枚入れて去って行く。


止まって一言。

「精々吠えてればいいわ!負け犬のようにね!」



「きー。」っと言う声が聞こえたが、妹はそれに勝ち誇った顔をして去って行くのだった。


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