墓守りの腕時計

夕日ゆうや

死者の思い。

 サムライ墓地と呼ばれる共同墓地がある。そこにはサムライの亡霊が現れるという。

 とある少年二人が肝試しに訪れていた。ギガーとカナルの二人だ。

 外国人である二人は本物のサムライを見たいという願望もある。

「ギガー。ここにはいないんじゃないか?」

「ちょっと待てよ。怖くなったのか? カナル」

「いや、気配は感じないぞ」

 腕時計のアラームが鳴り響く。

 墓守りの腕時計。

「おうだ。みんな、おだの土地でなにしているだ?」

 恰幅の良いおじいさんが話しかけてくる。手にはくわを持っている。

「ええと。肝試しに来ていて」

「ほう。おだの許可が必要だべ。おだは許さないだ」

「あー。分かったよ」

 舌打ちをしながらギガーはその場を後にする。

「おうだ。おだだ。おめーたちはまだ現れるんじゃないだ」

 墓守りのおじいさんは後ろに控えるサムライを押しとどめる。

 サムライが前に出ると、ギガーとカナルに斬りかかる。

「ひ、ひぇ……」

「に、逃げるぞ!」

 ギガーとカナルは一目散に逃げ出す。

「おだの言うとおりだ」

 そのおじいさんには足がない。

 幽霊なのだ。

 それを知らずに立ち去っていくギガーとカナル。

「おだたちの世界はおだたちが守る。墓守の仕事だ」

「おれたちはサムライ、主を守る」

 墓守りの腕時計のアラームが鳴る。

 今日も、一日が過ぎていく。

 空が白んできて、おだたちの身体も消えていく。

 明日も同じように墓を守る。

 おめーたちはまだ、こっちに来てはいけない。

 どんなに辛いことがあっても……。

 こちらの世界は冷たいのだ。

 人の温もりを忘れて久しい。

 血肉を持った者同士でなければ、その心を通わせることはできないだろう。

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墓守りの腕時計 夕日ゆうや @PT03wing

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