第5話 光と闇の戦い~ジャド師とウィルヘルム卿

 この世に光と闇があるように、古の教えにも光と闇の神がいて、それぞれの教えを信奉するふたつの文明があった。

 元々は魔術と呼ばれる精神世界と物質世界の融合を目指す、同じ教えが起源の文明だった。しかしひとつは白魔術へ、ひとつは黒魔術へと変貌を遂げ、宇宙の覇権を競う光と闇の戦いが始まったのだった。


 シャンバラは白魔術を代表する文明のひとつで、完成形にもっとも近い星ではあったが、好戦的な文明ではなく、その特別な超能力文明は長い間、戦いとは無縁の星だった。

 シャンバラ、最後の導師であるジャド師は、文明から遠く離れた辺境の星の生まれだった。ジャド師の父は古(いにしえ)の文明を研究する学者だったのだが、その危険性ゆえ、太古の昔に封印されたとされていた黒魔術を復活させようとしたとして、

その才能を妬む者から訴えられ、辺境の星へと追いやられた天才思想家でもあった。


 ジャド師は父親譲りの並外れた頭脳と才能を持ちあわせていたが、環境の厳しい

辺境の星で育ったことで、宇宙の支配層が持つ特別な選民思想とは無縁の助け合うことの尊さを知る若者に成長した。


 ウィルヘルムとジャド師が最初に出会ったのは、その星系の最高学府であった高等大学院だった。

 ウィルヘルムが唯一、黒魔術の勧誘に失敗した学生、それがジャドだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

想い遙かに~帝国軍総統ユリウスの肖像 来夢来人 @yumeoribitoginga

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ