第4話 妹アンジェリーナと親友テセウス


「なぜなのか、教えて下さい。

 あの理想の世界を実現するためならば、その命を投げ出しても、かまわない・・・、とおっしゃっていたユリウスさまが、何故に、あれほど愛していたアンジェリーナさまと、あれほど信頼されていた親友テセウスさまを、罪人として処刑されたのか、

教えてください」

 その美しい大きな瞳に、大粒の涙をためてエリザベートはユリウスに問うた。

 エリザベートの問いに、ユリウスは答えられなかった。

 ユリウスは自分でもなぜあのような惨劇を引き起こしたのか、分からなかった。


 前王が妻を失ったとき、妹アンジェリーナがその花嫁候補になったことが、悲劇の始まりだった。

 アンジェリーナは体が弱く、子を成すことは、その命を捧げることと等しかったのだが、王と親族はそれを望んだ。

 ユリウスは愛する妹を救いたかった。そして心から信頼していた親友テセウスに相談した。


 テセウスとアンジェリーナはそのようにして出会った。

 そしてアンジェリーナとテセウスは出会ってすぐに、たった一目で恋に落ちた。

 しかしテセウスには、ふたりに隠さねばならない秘密があった。

 本当の名前は玄武で、シャンバラから派遣された秘密捜査官だったのだ。そしてシャンバラは、女人禁制の聖地ゆへ、恋は御法度だったのである。

 テセウスは、シャンバラへ去ろうとしたが、アンジェリーナはテセウスと決して別れようとはしなかった。

 捨て身のアンジェリーナはテセウスにしがみつき、置いて行くならば、死ぬとまで

言ったのだった。

 その言葉にテセウスは、シャンバラを去り、アンジェリーナと共に自身が子供時代を過ごしたアトランティスへ逃れる決意をした。

 そして共に秘密の任務のため、シャンバラから派遣されていた宇宙大学校の教官、導師ジャドにだけはそのことを打ち明けた。


「申し訳ございません。私はこれ以上、任務を遂行できません。

 導師さま、遠い星へ去ることをお許しください。

 アンジェリーナは私の子供を身籠もっているのです」​​​​





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る