第3話  想い遙かに~宵の明星が見る夢

 帝国軍総統であるマルデクの王は、ときどき儚い夢を見た。

 それは生まれた直後、ほんの一時だけその腕に抱いたことのある妹アンジェリーナの産んだ赤子の夢だった。


 あの惨劇の中で行方不明となった赤子が成長し、ユリウスを訪ねてくる夢だった。

 しかしいつもその顔は涙でぼやけ、見えないのだった。

 乳母が男の子だと言った、その赤子は、母親がその命と引き換えにあの世へ旅立ったことを知ってか知らずか、大きな声で泣いていた。


 総統が、若く野心家の美しい男たちを愛でたのは、結局のところ、生きているのか

死んでいるのかさへ分からない、甥の存在があった。

 最初はみな、理想の甥を演じるのだが、いつしかその心に傲慢を宿し始め、結局は総統を裏切る存在になり果てるのだった。

 そしていつしか、妹の忘れ形見である甥を探す旅は、闇の勢力からの誘惑のもと、若き日の理想から大きく逸脱した、黒魔術による宇宙制覇の夢へと大きく変容していった。





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