第3話 先を越された俺たちは…

 このシリーズでおなじみの後輩女子の河合ちゃんが結婚することになりました。


 いい子です、素直でかわいい子です。

 純粋です、ちょっと…というかなんというか…面白いです。

 河合ちゃんを嫌いな人はいないでしょう。


「河合ちゃん、怒ったことある…? 」

 ヨットの上で訊いたことがありました。


「ありますよ~、えへへ」

 笑顔で僕の肩を叩きながら言いました。


 あるのかな…?


 そんな河合ちゃんは大学を卒業して数年後に結婚することになりました。

 相手は同じくヨット部の金子でした。

 あのスイカを僕に買わせた金子、ラーメンを食べに福島まで連れて行ってくれた金子でした。


 後輩の二人に先を越されました。


「結婚するんだ…おめでとう…」


 ええ、おめでたいです、いいことです。素晴らしいです。

 だけど僕だけかな…嫌、そのあと同期の数人と話したんだよな。


「俺たちは何をやっていたんだろうな…」

「河合ちゃんのすばらしさに気づいていながら…」

「デートに誘った同期もいなかったし…」

「逆に告白された同期もいなかったしな…」

「誘ったとしても俺たちじゃダメだったのかな…」

「金子はすごいな…やっぱりいいやつだな…河合ちゃんも惚れたし金子も彼女の魅力を最初からわかっていたんだな…」


 きっと彼は年齢、学年は別にして僕らより大人だったんでしょうね。


 勿論僕らは大祝福しました。

 我々まで披露宴に呼んでいただき、ちゃんと余興もやりました。

 盛り上げましたよ、精一杯にね。

 河合ちゃんはいつにも増して綺麗でした。


 二次会も頑張りました。

 かわいいかわいい後輩達が幸せになるんですから…


「堀先輩! 」

 新郎新婦は二次会のあと僕に言いました。


「先輩がご結婚されるときは…」

「うん…」


 いつになるかわからないけれどね。


「絶対に盛り上げますから! 」


 ありがとうね、確かにかなり後ですが、僕の結婚披露宴は盛り上がりました。

 いつもは僕がやる余興を金子が率先してやってくれました。


 ありがとうね、金子に河合ちゃん。

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