第2話 ラーメンは好きだけど

「先輩、ラーメン食べに行きましょう! 」

 電話だったと思います。


OBになってからですね、二期後輩の金子と佐久間がある日僕をラーメンに誘ってくれました。

かわいい後輩達です。


「いいよ…」

「じゃあ日曜日、10時に先輩の家に行きますから…」


 夏と冬、賞与が出ると僕は後輩数人を食事に誘っていました。

 渋谷にしゃぶしゃぶの食べ放題の店があったので、だいたいいつもそこでした。

 食べ放題でないと怖いもんね。


 そんなこともあったのか、珍しく後輩から誘われました。

 でもなんで10時なんだ…


 日曜日の朝…

 かわいい後輩が車で埼玉の僕の家までやってきました。


「オッス(おはようございます)、先輩、行きましょう」

 金子が言いました。

「先輩には日本で一番うまいラーメンを食べて頂きたいっす!

 楽しみにしていてください!

 どこに行くかは内緒です!」

 佐久間も言いました。


「ありがとう…」

 かわいい後輩達です…


「高速乗ります! 」

「そうなの…高速代出すよ…」

「大丈夫っす…」


 お金出します…

「北に行きます…」

「そうなの…」


 東北道に乗りました。

 車はどんどん走っていって埼玉を出ました。


「佐野ラーメンか…」

 僕はつぶやきました。

 ナイスチョイスだね。


「もっと北に行きます! 」

「そうなの…」


 途中で休憩をとります。

 おなかがすいてきましたが何も食べません。

 食べられないよね…

 かわいい後輩が

 ラーメン食べさせてくれるのだから…


「どこにいくのかな…」

「大丈夫っす…」

 何が大丈夫なんだよ…


 さらに北に行きます。

 とうとう福島県に入りました。


 どこで高速道路降りたかな…

 当時はまだ磐越道が全線開通してなかったのです。


 湖が見えてきました。

 猪苗代湖です。


 日曜日の朝にさらわれて、とうとうここまで来ました…


「先輩! もうすぐっす! 」

「先輩! 喜多方ラーメンはご存じですよね」


 知ってます…

 知ってますよ…

 喜多方ラーメンは有名だもんね。


 知ってますがね…


「もうすぐっす! 」


 喜多方駅の駐車場に車を停め、金子の案内で市内を歩きました。


「坂内食堂」

 とのれんに書いてありました。


 かわいい後輩達はここが目的だったようです。


 注文をしてね、お肉いっぱいのラーメンを食べました。


 ええ…おいしかったです。

 すごくおいしかったですよ。


 ここに来る過程も彼らの気持ちも含めて本当においしかったです。


 でもね…

「ラーメンは好きだけどね」

「ラーメン食べるためだけに福島県の喜多方まで来るか…?」


 君たち学生だ…平日の仕事に疲れたサラリーマンはまずしない。


 すごいね。

 それに誘ってくれるなんて…

 かわいいかわいい後輩達がラーメンをごちそうしてくれたお話でした。


 

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