第9話 エイリアンと妹とメイドのユリ
うん、一番いいのは次の領主を殺すことなんだけど・・・
あのエイリアン殺っていいよね!いいとも!
一人で言ってて虚しくなる。
殺害とかやったことないし失敗するの目に見えてるよね。
兵士の人たちも多いしね。なんか他に方法ないかな?
歩いていると、俯いた女性が歩いている。
後ろにメイドが控えている。
付いて行くかな?
なんか手詰まりだし!
決して美人だからとか思って付いて行くわけじゃないからね!
歩いた先にドアがあり,大きな食卓が用意されていた。
一番奥の席にエイリアンが手に持った肉にガブリついていた。
こいつ本当に貴族かってくらいに、下品である。
手を付けられてない。なんか美味しそうなものを少し隠れて咀嚼する。
うん、ばれてない。よし!またぱくぱく。
エイリアンに近づいて行くお嬢様。
「お兄様失礼します。」と言ってエイリアンの右の席について、ご飯を食べ始める。
「おおう、妹よ!」エイリアンが歓喜して歓待する。
「お前がバリアント公爵に嫁ぐのはいつだったかな。」
エイリアンは次の肉にかぶりついていた。
「あと一週間後です。」と言って俯く。
「こんなことになってしまったが、同じ母を持つものとしてお前が嫁ぐ事は大きい。私の野望にお前は欠かせないからな。ぐふぇへへ。」そう言って気味の悪い声で笑いだす。
妹は青ざめている。〝えー同じ母から生まれたの・・・ないわー。〟
「はい、お兄様。」
浮かない顔で妹は頷かされている。
おそらく兄に逆らえないんだろう。
可愛そうに、俺が兄になりたい。
あ、今なら弟になるのか?
ワインの瓶を持ってラッパ飲みをしだす。
「これは実にいいワインだ。妹よお前もしっかり食べるのだ。我が野望のためにな・・・ぐふふふ。」
もはやエイリアンを見続ける事は俺にはできないみたいだ。
妹の方を見て、癒されよう。
「お兄様あまりご無理をされるのはよろしくないのではございませんか?」
静かに妹が兄に言う。
エイリアンはワインを再びラッパ飲みしだす。
ぶちっ!ん?ぶちっ?
エイリアンが立ち上がり、妹の髪をつかんで引っ張って近づける。
「お前は私の玩具であればいいんだ。ひっく。」
そう言われた妹は顔が白くなっていただろう。
くっ魔法を使うか?
「いずれこの王国は帝国に負ける。その時わしは公爵の首をお土産に成り上がる。そしたらひっく、王国は俺の物だ。お前はそのための駒だ!しっかり働いてもらわないとな!ひっく!」と言って妹を投げ飛ばす。クッソ許すまじエイリアン!!!
「痛かっただろう。これは躾だ。お前が公爵に嫁ぐまで、しっかり教育してやらねばな。ひっく。」
瓶を片手に持って、妹に近づいていく。
それを妹は恐がって後ずさるが、壁際で逃げ場がない。
「お嬢様!」
そこにメイドが立ちはだかった。
通さないと言って手を広げる。
エイリアンが瓶を振りかざす。
瓶はメイドの頭に振り降ろされる所で、エイリアンが不自然にこけた。
足かけてやったぜ。
ばれてないよな?てへぺろ。
「?」
エイリアンは起き上がろうとするがうまく起き上がれない。
何が起きているかわからないようだ。
飲みすぎた太った身体のせいだ。
「お嬢様こちらに。部屋に戻りましょう。」妹の肩に手を回し促す。
「お前たち!早くわしを起き上がらせろ!」とエイリアンがわめいている。
急いで何人かの使用人が寄ってくる。
「明日からメイド共々躾てやるからな!」妹は震えている。
メイドも震えていた。食堂から出ていく。
俺は二人の後を負った。
ばれないようにするなら何もしない方が良かったが、さすがに何かしないとメイドさんは死んでいたかもしれない。
さすがに死人を出すのは忍びなかった。
さて、どうしたもんかね?
「ユリ貴方は逃げていいんですよ。」メイドは首を振る。
「私はお嬢様を死んでも守ります。必ず公爵領に行かれるまでは守って見せます。」と悲壮な思いでメイドは決意する
「ユリ。」と言って廊下で抱き合う二人。
妹とユリと呼ばれたメイドは泣いていた。
とりあえず、見ないようにしておこう。気まずい。
しばらくした後に。
「そうだ!お父様のお見舞いに行きましょう。」と妹さんが言い出す。
「はい、お嬢様。」どうやら二人とも元気を取り戻したようだ。
「確か離れの方でしたよね!」と聞き返す。
「はい、そうです。本来なら領主の部屋で看病するはずなんですけど・・・」と苦い顔をするメイドさん。
「お兄様が押しやったんですね。」悲しそうな顔でいう我が妹!違ったお嬢様。
「確かまだ、面会謝絶のはず。」首を傾げる。
「さすがに娘が来たら通してくれますよ。お兄様の実の妹ですし・・・」
はーとため息を付く。
「どうしてお兄様がリース様のような人じゃなかったんでしょうか?」
まったくその通りである。うんうんと俺も頷いている。
「・・・」メイドは答えられない。
「わかっています。嘆いても仕方ないって、でも言わずにはいられません。あれを兄とは言いたくないと。」〝ホントにそうですね!〟
「お嬢様どこで誰が聞いているわかりません。お言葉は慎まれますように・・・」
悔しそうにするメイド。
「わかっています!」
悔しい顔をする妹。庭を通り過ぎ離れに近づいていく。
そこには兵士がいた。大きなガタイだ。
この人と戦ったら負けるな。うん。
「これはミーナ様、何か用事でしょうか?」父親の護衛隊長だ。
いつも優しい人。団の人も優しく信用できる。
この王国の西方領で5指に入る実力の人だ。
その強さは一騎当千。
さすが西方領を取りまとめる領主の護衛隊長だけはある。
「父のお見舞いに来ました。」笑顔で頼み込む。
「・・・一応ダスト様のご命令で誰もここから通すなと言われております。」
困った顔をする護衛隊長。
「そうですか。」残念そうな顔を下に向けるお嬢様。
「しかしまぁいいでしょう。ただしミーナ様のみ、ここからお進みください。」と促してくる。
「それは!」メイドが何か言おうとするのを私は遮る。
「良いのですユリ。私一人で行きます。」首を振ってユリにお願いする。
「すみませんこれも仕事です。」と頭を下げ謝ってくる。
「いえ、貴方が厳しい立場なのもわかっているつもりです。」
そう、ダストが解雇と言えば解雇されてしまう。
今辺境伯領を牛耳っているのはダスト兄上なのだ。
「ありがとうございます。」と言って私も頭を下げた。
普通はそんなことをしない。
ダスト兄上に迷惑をかけられているのを誤った。
「なんのこれが仕事ですので、頭を下げられても困ります。」と言われたので頭を上げて、頷いた。
「それで・・・お父様のご容態はどのような状態でしょうか?」と真剣な様子のお嬢様。
「・・・主治医が言うには睡魔の毒です。決して覚めることのない毒を盛られたようです。」
「そんな・・・解毒薬はないのですか?」必死になって聞く。護衛長に詰め寄った。
「伝説の秘薬エリクサーくらいだと言われました。」天を仰ぐミーナ。
「・・・そうですか。」沈痛な表情。
「それよりお見舞いの方をお願いします。領主様は奥の部屋です。」男はドアを開ける。
「はい、ありがとうございます。」そう言ってドアの奥に進んでいく。
ユリも一緒に行こうとして首根っこを捉まれた。
「お前はだめだ!」軽々と持っている。
「そんなー。」とがっくりするメイド。
「お前まで入れたら、さすがにこれだ。」首を切られるポーズをする。
「いいじゃないですか!私のために命を張りなさいよ!」むくれるメイドのユリ。
「俺も入れてやりたいが、お前まで入れたらさすがにトラブルが起きる。必ず。」
真顔で言う。
「失礼な!確信しないでくださいよー。」メイドは頬は膨れていた。
だんだんとメイドと兵士の痴話喧嘩の声が遠ざかっていく。
「ふふっ」と思わず笑ってしまった。
いつの間にか私の顔は明るくなっていたようだ。
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