第8話 領主邸に向けて・・・

時刻は夜、さっきまで夕方だったはずだから19時くらいか?

異世界の時間が元の世界通りなら、通りにはまばらに人がいる。

脱出まで時間はあまりかけて不審者と思われてはいけない。

まぁ隠密スキルで消えているから見つかることはないかな?


なんとか隣の住まいに飛び移って、そこからベランダに降りた。

ベランダの角から下に降りる。この一連の動作が速い。

隠密スキルの影響かな?


今の俺はメイド服の男、うんヤバい奴だ!

〝気にしたら負け、気にしたら負け!〟暗示をかけて領主邸に向けて進んでいく。

まぁちょっと素足なのがいただけないが仕方ないだろう。


誰にもとりあえず、ばれてはいないみたいだけど、ばれないか戦々恐々している。

ばれたら捕まるからね。そんなことを考えながら進んでいると。

男に囲まれている女の子がいる。

うん、ナンパされているみたいだ。見て見ぬふりは出来ぬ。



「へへへ、嬢ちゃん今帰りかい?」と頭の真ん中に髪が生えているトサカヘッド(赤髪)風の男が言う。

「ちょっと俺たちと遊ぼうぜ。」とその右隣のでっぷりとした男が言う。ナイフを持っているみたいだ。危ないな。

「俺たちに逆らったら、ダスト様がお前の家族をしょっ引くぞ。」とか左隣の猫背の男が言っている。


三人ともカラスの入れ墨みたいなのを入れているみたいだ。

真ん中の男が上半身のおへその部分。

右のでっぷりした男が右手の上腕部。

猫背の男が左の上腕部に入れ墨があった。


何かしらのチーム?傭兵団とかか?

テンプレだなーとか思いながら、近づいて行こうとする。


でっぷりとした男の一人が女の右手をつかんだ。

そこで女のフードが取れる。うん?そこには頭の上から耳が生えていた。けも耳?


「なんだ獣人の奴隷か?」とリーダーらしい男が言う。

「へへならいいじゃないか?このままやっちまいましょう。わかりやせんぜ。」とでっぷりした男が言う。


「そうですよ。こっちは女をしばらく抱いてないんでね。」この女で我慢しますさ。

「いや。いやーーー。」と叫ぶ獣人の女の子。

「ではいただきまーす。」と三人で囲む。その瞬間。


「ウォーターボール。」

その声が聞こえた三人は後ろを振り向いた。

その瞬間、頭にウォーターボールが固定された。


かなり恐かったぞ!!見過ごせないからね。

三人とも水を取ろうともがき苦しむ。

残念ながら水は取れないのだよ。

首回りである程度固定されている。

男三人はどたばたと倒れた。

この辺か?あまりやると死んでしまう。


「あのーありがとうございました。」

「ああー。まぁ無事で何より。ってしまった。」

魔法を使ってしまって、隠密スキルが解除され、見られてしまったようだ!!


「あ、そうだ君はメイド服の人は見なかった事にしてくれ!」

「えーと。」と戸惑うケモ耳少女。


「たのむ!これは一生のお願いだ。」メイド服の俺は頭を下げた。

「はいわかりました。」獣人の少女は納得したようだ。笑顔がまぶしい。

「では・・・。」と去ろうとして・・・


「あのお名前は?」と聞いてくる。

「吾輩は赤・・・いや名前はまだない。もう会うこともないだろう。」


「そんな・・・。」と悲しそうな顔をする少女。

「じゃあ君の名前は?」と代わりに聞く。

「あ、私の名前はシェリー。」と明るい顔になる。


「そうか、ではなシェリー、機会があればまた会おう。」と言って後ろを向く。

これがマントととかなびかせたらカッコが付くのに・・・

メイド服とは非常に残念である。

「はい、また会いましょう!!」と言って手を振ってくる。


私はその後姿を見送くる。

「あの人、男の人なのにどうしてメイド服着てるんだろう。」と首を傾けた。

獣人は鼻が鋭く男か女かは臭いでわかったりする。

そして倒れた男から有り金から、衣服まで文字通りすべてを剥ぎ取り、スラムに去って行く。

獣人はスラムに住む少女だった。



それからなぜか行く先々でカラスの入れ墨をした奴らがトラブルを起こしまくっていた。

運ばれていくずた袋から声を聞いた俺は、それを運んでいる男どもにウォーターボルを放ち、さっきと同じように倒していく。

殺してはいない。ずた袋から出てきたのは男だった。


「ありがとう。」と言って固まる。

そりゃそうかメイドだもんな。


「・・・君は好きな人とかいるのかい?」とか聞いてきやがった。

「いや、いないけど。」と返答する。

男は目を瞑って何か一大決心をしたように聞く。


「そうかそれはよかった。良かったら僕と付き合ってほしい。」と言ってメイドを見たがいなかった。

その後ろからスラムの人間が出てきた。

そのスラムの人たちは倒れた二人からすべて剝ぎ取って行った。



俺は先を急いでいた。

次はなんか喧嘩?している声が聞こえてきた。乱闘みたいだ。

普通に通り過ぎようとすると、男が目の前に転がってきた。

満身創痍のようだ。なかなか起き上がって来ない。


「はーまた問題ごとか?」と俺は頭を抱えたくなった。

テンプレ三連発とは今度はおっさんかー萌えない。

メイド服で何を言っているんだろうか?


酒場の中をよく見ると全員カラスの入れ墨がある。

あ、こいつら、俺を邪魔した奴等か、うーん良し、鎮めよう!


MPは回復してないようだけど・・・

なんとかぎりぎりまでふり絞って、ウォーターボール得大。

何とかなったかな?ちょっと大きいかな?

そこには宙に浮かぶ酒場よりも大きいウォーターボール、よし!いけー!

あたった瞬間に酒場が崩れていく。


「うん、やりすぎちゃったかな。よし知らねー。」

去って行こうとして、振り返ってあざだらけの男に向かって魔法を唱えた。


「ヒール。」男は息がするまで回復していた。

俺はそれを見届け、また再び領主邸を目指した。



紆余曲折はあったが・・・一時間くらいで領主邸に来た。

周りは塀と柵で囲まれていて、そう簡単に入らせてはくれない。


まぁそうだよね。

まだ20時くらいで門の開閉をやってるから、今しかないかもしれない。


馬車とかの後ろについて中に入った。

なんか趣味の悪い金ぴかの馬車だ。

領主邸の玄関前に馬車が到着して、誰か偉い人が馬車から降りてくる。


〝あ、こいつが犯人だ〟となぜか直感が言ってくる。


なんというか小悪党って顔がぶくぶく太った外見に、顔も太ってなんかこうエイリアンの悪い親玉っぽい。

指には趣味の悪いでっかい宝石が着いた指輪。

服もなんかこう豪華そうなマントを付けて、頭には王冠みたいな物を付けている。


〝派手だ。〟


たぶんこの国で一番豪華な男なんだろう。

王様でもここまではすまい。

年齢は40くらいかな?外見で判断してはいけないが、そう思えて仕方ない。

あ、鑑定があったな。なんか鑑定したくない。うん、鑑定しないでおこう。


なんか話している。ちょっと近づいてみるか・・・


「親父殿は寝込んでいるな。」

「はいダスト様。」執事は頭を下げて顔をダストと呼ばれる男に見せないようにしていた。

その下の顔は何か複雑そうな顔だ。


「確かお前は、リースを跡継ぎに押していたな。」

エイリアンが、違ったダストが醜く笑っている。こいつとは関わりたくないぞ。


「いえ、そんな事はありません。」何かを我慢するように顔を伏せっている。


「そうだ!お前が土下座をしてリースの命乞いをすればリースを助けてやってもいいぞ。」執事は顔をあげて目を丸くした。

「それは真でございますか。」

「ああ、二言はない。」


「・・・」執事は考える。私が誤ればリース様が許されるかもしれないと。

ゆっくり地べたに正座して頭を下げる。

「どうかリース様のお命をお救いください。」顔は地面に着くか着かない所。

見事な土下座である。不覚にも俺は感激してしまった。


「まさか本当にやるとは。」エイリアンがニヤッと笑った。

その後ろでニヤニヤ笑っている二人の執事が、土下座をしている執事の頭を踏みつける。

こいつらー俺の感動を返してほしい。


「もう少し誠意と言うものを見せてくれないとな。」そう言ってより踏みつける。

「そうだな誠意で地面に顔を擦り付けるくらいに、頭を下げないとな。」

もう一人の狡賢そうな執事が言う。

見ていて気分がいいもんじゃないな。思わず水球を飛ばしたくなった。


その時エイリアンが土下座している執事を蹴りだした。

「お前があることないこと、親父に言うから俺の評価が落とされているんだ。俺が知らないと思ったのか!このくそ執事!」


何回も蹴って気が済んだのか、兵士に命令する。

「はぁーはぁーこの者も領主殺害に加わっているに違いない、捕まえて厳しく取り締まれ!!」してやったりの顔をしている。


「はっ!」二、三人の兵士が返事をして執事を捕まえ連行していく。


「お前達にも言っておく!この私、領主ダスト様に逆らう奴は許さない!誰でもだ!ふふふはははは。」両手を腰に当て笑う。


〝うわー、でたらめだなこいつ!暴君とか、独裁者とかこんな感じなんだろうか?関わりたくないな。〟と、のそのそと歩くエイリアンに続いて屋敷の中に入っていく。


「お帰りなさいませご主人様。」玄関に入るとメイド達が一斉に頭を下げて出迎えた。


「ほほう。」とか言いながらメイドを物色しながら、中に入ってくいく。

心なしか何人か身体を震わせているメイドがいるようだ。


「お前と、お前と、お前。夜に私の部屋に来るように!」

エイリアンが指をさして震えているメイドを中心に指名した。

言われたメイドが青ざめている。


エイリアンは奥の部屋に行ったあと、あまりの出来事にメイド達は泣き崩れた。


〝典型的な屑貴族だな。容赦できない・・・〟


何とかこの状態を逆転できる方法があればいいんだけどな?

そう思ってとりあえず屋敷の中を歩いてみる。


わかってたけど広い屋敷だな。

所々にドアがあり、使用人の部屋とか応接室かな?そういう所を通り過ぎる。

奥には兵隊が二人いる地下のようだ。

リースの様子を見に行くか?

今行っても、捕まるだけだなもうちょっと経って行かないと。


?なんだこの気配?


地下室の近くの部屋から何かが漏れ出ているような?

直感がこの部屋を開けたら殺されると言ってくる。

うん、開けないよ絶対。


他の所も見ないと、何か助けられる事もあるはずだしね!

そう言ってさっきの場所じゃない所に入って、物色するとりあえず執事服があった。

うんあこれを着とこうかな。

靴も部屋の中にあるな。

うわ大きいな!何とか袖を折ったり、しながら、靴は無理かな。

靴下を拝借する。


あとMPを回復したいなーとか思ってたけど回復するものがない。

多少は回復しているような?いやそれよりあまり使っているような感じがしない?

まぁいいか。執事服に着替えたのでゆっくりドアを開け外に出る。

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