第5話 疫病神!?

翌日、朝ご飯を食べた後、俺は宿屋の女将さんに預けられた。

「ちょっと買い物に言ってくるので、すみませんがお願いします。」

「お願いしますね。女将さん。」リースとリッテが言う。

「はいはい。」と頷く女将さん。


「いい子ですねー。」と世話を焼く。

「あうあうああー。」行ってらっしゃい。

二人は少し名残惜しそうに宿を出ていった。


「さてどうなるかな。」と女将さんは呟く。

どうなるんでしょう?

「あうあうあー。」大丈夫!たぶんきっと。

「あんたも大丈夫と思うかい。」と言ってあやしてくる。


「リッテはあたしの娘みたいなもんだからね。うまくやると思うけど、尾行でもするかな?あーリッテには気付かれるかー残念だね。面白そうなのに。あんたもそう思うかい。」

「あうあうああー。」うん、思う。

「なんか不思議にあんたと話せてるみたいなんだよね。気のせいかな?」

「あうあうあー。」気のせい気のせい。


「?」じーっと見てくる女将さん。

「?」やべっ気付かれたか?汗をかく。

「まさかね。」

「あうあうあーー。」とりあえず誤魔化す。

身体をなんか動かしながらね。


「はいはい。」背に俺を背負いながら、宿の仕事をこなしてく女将さん。手際がいいね。

一仕事終わった後。寝かかった俺。

だって暇だもん。なんかこの女将さんにボロ出したら殺されそうなんだよね。


ふっふっふっ。とか言って拳銃とサングラスした女マフィアに見えてくる。

まぁとんでもなく恐いプレッシャーを感じているのだ。

普通に赤ん坊しないと!えっ普通の赤ん坊ってなんだろうね!ニコッとする自分。



 あたしが殺気を放ってるのにこの赤ん坊は泣かない異常だね。

リッテが言ってた意味が少しわかった。

しかも涼しそうに寝ようとするとか、将来大物になりそうだね。


しかもさっきなんてニコって笑いやがったよ。

やはり早い内に殺しておくべきじゃないかね?

万が一素性がわかったりしたら、王国が混乱しかねない。

リッテには悪いがここで・・・


私はそう思って机の上に赤ん坊を置く、見えないように懐から長い針を取り出した。

要人とかを暗殺する暗器だ。

その暗器を子供に向ける。

もう少しで首を貫く所まで持っていくと。


一瞬のようで長い時間が経ったような錯覚。

ふっと気付けば赤ん坊の寝息が聞こえ出した。

ふーーと息を吹き出し、なんだか緊張しているのが馬鹿らしくなったね。


相手はまだ赤ん坊なのだ。

これから見定めていけばいい。そう切り替えた。

赤ん坊を手にかけるとかあたしはそこまで落ちちゃいないさ。と依頼だってやりたくない依頼はやらないのがあたし等の流儀だからね。


あと何年か見定めてやるかね。

なんならあたしが稽古をつけてもいいかもしれない。

人材不足だからね、

双子なら影武者にもできるだろうし・・・生かす必要もあるか。

王家に対して弱みを握ったと思えばいいか?ふふふ気に入ったよ坊や。



「ううう。」なんだか寝苦しいような気がする?

これは前世の記憶か?

俺は仕事の辞表を出して家に帰った後、玄関先で倒れたのか?


仕事無理してたから、仕方ないのかな。

今世ではせめて長生きしたいな。


あと幸せにならないとな。

前世では幸せを感じられなかったしな周りも幸せにしながら、生きていきたいぜ。

よーしそれが俺の決意だ。


がんば!程よく頑張るかな?

よしっと気合を入れて、目を開いた。

なぜか俺は机の上にいる。

恐!!俺はこの体で初めて泣いたかもしれない。


情けないと思うなら笑うがいい、前世からの高所恐怖症はなかなか治らないのだ。

「えーん、えーん。」わざとらしかったか?

赤っちゃんの泣き方なんて知らないぞ!!!

「どうしたんですか。知らない場所が恐かったんですか?」

ああ、恐いとも高いところも、あとおばちゃんの顔も恐いとも!!



急に赤ん坊が泣き出したね。やっぱり年相応なのかね?

あたしが子供を抱き上げてあやしだす。

なんだか泣き声がまた一段とひどくなったような。

あたしも赤ん坊の世話なんて久しぶりだからね。


恐がらせちまったか?


「いいこいいこ。」今のこの姿を同僚に見られたくないね。とか思ってたら、気配がする。


「タイミング悪いね。定時連絡かい?」そこには女忍者がいた。

「はい先代、辺境伯様が倒れられたそうです。」


「はっ?・・・嘘だろう。」と驚く。頭を抱えた。


「いえ、残念ながら本当です。」

「最悪のタイミングだね。絶対厄介ごとに巻き込まれるよ。」天を仰ぐ。


「どうしましょうか?」

「うーん・・・逃げるか?」

「御冗談を・・・。」わりと真面目に言ったんだけどな。


「そうだよね。とりあえず今代に連絡して支持を仰ぎな。時間がないよ。下手したらあの二人が罪に問われるからね。後でどういう状況か聞くからね。ほらっさっさと行きな。」しっしと手でジェスチャーした。


「はっ!」と消える女忍者。


「ヤバいね。どうしたもんかね。あんたどう思う?」

「あうあうあー。」子供に聞かれてもね!喋れないし。


「あーあ、さっきあやしたところ部下に見られたから威厳なくなっちまう。踏んだり蹴ったりだよ。やっぱりあんた殺っとくべきだったかね。あんたが疫病神に見えてきちまったよ。はー。」ため息を付く女将。


「あうあうあー。」風雲急を告げるって奴か!

「ああうー。」まぁ元気だしな!おばっちゃんを慰める俺。


「とりあえずあの二人がここに戻って来てくれるか。それとも戻って来ないか。これによっちゃあんたの運命も変わっちまうよ。平穏に暮らしたいならあの二人が帰って来ることを祈っときな。まあ、赤ん坊に言ってもしかないか。」



うーん、なんかヤバい事が起こったらしい、リース、リッテ無事でいてね。と祈りだす。

「あうあー。」とか言って赤ん坊を演出しとかなくっちゃ!


しかしさっき女の人がいるの全然気付かなかったよ。

忍者?っぽかったけど、マフィアのおばちゃんの部下なのかな?




一方その頃、リースとリッテは腕を組みながら朝市に向かっていた。


「リース様あれ美味しそうですよ。」

「そうだな・・・」リースの顔は赤かったりする。


「あっちの屋台の飲み物も買って飲みましょう。」

「あのリッテさん。」戸惑いながら聞く。


「なんでしょう?あと私の事はリッテとお呼びください。私たちは夫婦なんですから・・・」

「さすがにくっ付き過ぎなのでは・・・」二人は腕を組んでいた。

たまにリースの腕がリッテのやわらかい部分に当たって、気が気じゃない。


「夫婦なんだからこのくらいの距離は当たり前なんですよ。リース様も、もっと堂々しましょう。」

「そりゃそうなんだが・・・」リースから見てリッテは美人だった。

周囲の男からも羨ましい視線を向けられている。

目立っているのだ。


これは世に言う既成事実なのではないかと。

リッテの深謀遠慮で周りが固められている?

周囲が公認してしまっているのか、リッテ恐ろしい!!


「はーい、あーんしてください。」とリッテがたこさんウィンナーを食べさせようとしてくる。え、そんなものまで屋台で売っているのか?


よく見れば、屋台のおじさんがグッっと親指を立てている。

俺の知り合いじゃないか!!!


さすがに衆人環視のあーんとは、まだ付き合ったことがない男としてはレベルが高くないか?


周りの視線が二人に集中している。

これは何かの拷問なのか。

なんか汗かいてきた。


「お嫌ですか?」と潤んだ瞳で見てくる。

「それはそうですよね。私よりもっといい人がいるんですね。」と悲しい顔をする。


リースは慌てて。

「そんな事はありません。リッテは魅力的ですよ。美人で、優しくて、可愛いです。」

イケメン補正ありでリッテには映った。


「それではあーん。」少し赤みがかったリッテの顔。

たこさんウィンナーにパクッとかぶりついた。


「おおー。」と周りは喚声をあげた。


「こういうのって意外に恥ずかしいですね。」とリッテは顔を伏せながら言ってくる。

「ああ。」っとリースは頷いて顔を伏せる。

周りの視線がニヤニヤ顔で、恥ずかしいぞ!

周りの皆が親指をグッて立てている。と、いきなりリッテは顔をあげる。



リッテの視線の先には右手を左手の甲に何度も当てている女が映った。

〝緊急の連絡あり〟のサインだ。

指で2本を立てて。二人で来るようにと連絡してくる。


「リース様、少し移動しましょう。」

「あ、うん。」リースを引っ張って行こうとしたが、どうやら遅かったようだ。

朝市の広場に衛兵が入ってくる。

あっちゃーとリッテが右手を頭に当ててやっちゃったポーズをした。

そして衛兵は羊皮紙を広げ、要件を読み上げる。


「リース・フォン・ラーズ、貴殿にラーズ辺境伯様。暗殺の疑いが賭けられている。ご同行願いたい!」


リースはびっくりした。

リースの両脇を二人の兵士ががっちりつかみ、これで身動き出来なくなった。



あーこれヤバい。


「ごめん、リッテ後任せた。」そうリースはリッテを心配させまいと言った。

「リース様、後は任せてください。」とリッテは笑顔で言った。


その心の内は・・・荒れ狂っていた。

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