第3話 野盗!

「あうあー。」たまには喋っておかないとな不振がるだろう。

そう言ってリッテにあやされている俺。


目的地に向けて進んでいるわけなのだが、立派な街から本当に辺境の地までやってきた。

最初は街とかで宿を取っていたが、次第に野宿が増えてきたような気がする。


過ぎていくのは大きな街ではなく、寒村と言っていいかもしれない。

なぜ村に立ち寄って休まないのか?と思ったけど、色々と理由があるのかもしれない。


村の人が野盗だったり、夜になるとゾンビ化したりするのかもしれない。

恐い異世界!!

手を交差して身体が震えるのに耐えた。

そう思っていると目の前に5人くらいの集団が現れた。


「おいおい、ここを通りたかったら金目の物を置いていくんだな。」とバンダナを付けたちょい悪親父が言う。後ろの奴らがナイフを握っている。


「野盗ですか?」そう言ったリッテを庇う様にリースが前に出る。

「リッテは下がっていてください。」剣を構えるリース。


「おうおう、かっこいいな坊ちゃん。」バンダナがまた言う。

「だが、ここまでのようだぞ!」そう言って、野盗が持っていた剣をリースに向かって振り抜く。キーンと言う音がしてリースと野盗の剣が合わさった。

「おうおうどうした坊ちゃん、その程度か?」このおっさん強いのか?

ちなみに俺はリッテに抱っこされている。


〝鑑定!〟


ハース 年齢35 野盗

Lv22

HP125/125

MP  0/0

攻撃力 45

守備力 38

素早さ 40

知力  15


普通に強くない?ヤバいぞリース!と言ってあうあーとか言うが。

「大丈夫ですよ。伊達に騎士をやっているわけじゃありません。」とリッテは心配させまいと俺をあやしながら言ってくる。?えっ、それって?


何回かの打ち合いの後、リースは膝を着く。

「おうおうどうした?もう降参か?」余裕ぶっている野盗。


しかし次の瞬間リースから何かを感じる。

「あまり使いたくなかったが・・・〝身体強化〟」その瞬間爆発的な加速で、野盗に切りかかった。


キーンと言う音がして相手の剣がへし折れる。

「バカな!!」驚く野盗。

「これで終わりだ!スラッシュ!」剣が光ったと思ったらそのまま野盗を切り裂いた。


「ぐふっ!」そう言って崩れ落ちる野盗。

リースが他の野盗を睨みつけると残りの奴等は逃げていった。

しかし、後ろからリッテが何かを投げた。そうすると三人とも倒れる。

三人の背中にはクナイが突き刺さっていた。

何それリッテ恐い。涙目でリッテを見てしまった。


「あうあうあーーー。」泣いてしまう情けない俺。

「はーい、恐かったですね。」とリッテがあやしてくる。

リッテだけは怒らせないようにしないと、殺される!!と赤ちゃんながら思った。


「ふぅ。」吐息を吐く。

「見事でしたよリース様。」と言って駆け寄るリッテ。


「まだまだだよ。できれば身体強化を使わず倒したかったんだけどね。疲労が半端ないよ。」

「あらあらお疲れ様です。」そう言ってリッテは労う。


「リッテもさすがだね。三人を倒してしまうとは・・・B級冒険者だけの事はある。」とリッテを褒める。

「もうちょっとか弱い感じをアピールしたかったのですが・・・そうだ。」リースには聞こえてなかっただろうが俺にははっきりと聞こえた。

「恐かったです。リース様。」と頭からリースに突っ込んでいったぞ!!


〝あーイチャイチャしてんなー〟

赤ちゃんながらジト目で見ていた。羨ましい奴め!!


え、どうしたらいいのか、抱きついてなだめたほうがいいのか、躊躇っているリース。

なんか視線を感じ取ったのか、リースがこほんと咳払いして休憩を申し出た。


「まぁ仕方ないですね。スキルを使ったあとですから・・・」そう言って少し考えた後。

「今どのあたりですかね?」とリッテは聞く。

「もうすぐで辺境伯領都ですね。ちょうど王都と目的地の中間くらいかな?」と説明する。

〝なるほど”もう少しかかるのか。と俺は思ったね。


「しかし、領都の近くに野盗がでてくるとは?」とリースが首を傾げる。

「辺境伯は善政を引いていると聞いたことがありますが、あと好色家で何人も子供がいるとも。」とリッテはリースに聞いてみる。


リースは頭を抱えながら。

「正直、手の指で数え切れない程子供がいるらしい。実の父である人が把握してないくらいだ。」

「リース様も大変ですね!」

「ああ、そうなんだ。はっきり言って親父が死んだら内乱が起きるぞ!マジでヤバいからな!兄弟仲はわりと最悪なんだぞ!俺は王都でずっと暮らす。泥沼のような骨肉の争いなんてごめんだ。今から行くところは割と仲がいい弟だから、多分大丈夫だろうとは思う。辺境伯領のさらに先にある男爵領なんだからな。」うんうんと頷いている。


「男爵領で兵士ですか?」疑問に思ったのだろう。

「ああ、その近くにある魔の森の近くの街でな。野盗やモンスターなんかの討伐をするとか言ってたな。うん?あれは?」道の向こうに何かが大量に溢れている。


「珍しいですね。スライムの巣わけですか?」スライムの大群が街道を埋め尽くしている。色とりどりのグミの大きいバージョンがぷよぷよしながら移動している。


「あうあーあー。」〝すごいすごいファンタジー〟

「天敵でも現れたのかな?こうなったら今日はここで野宿しないといけないな。」

「そうですね。」リッテは嬉しそうに頷いた。


「あうあうあー。」すごいすごい。金ぴかスライム!!ファンタジーと興奮する俺。

おれはリースに背負われてしまった。

スライムの大群が見えないと、あうあうあーと駄々をこね。リースを困らせる。


「子供心に好奇心が旺盛なのかもしれませんね!」とリッテが理解してくれた。

思わず親指を立ててしまったではないか・・・

「まぁ可愛い。」と赤ちゃんに感動するリッテ。

いやリッテさん、スライム見えないよ!


リッテとリースが簡単なテントを張っていく。リースよりリッテの方が作るのがうまい!

リースも旅の間はぎこちなかったが段々うまくなっている。

完成したら俺はテントの中に寝かされてしまった。

スライムまだ見ていたかった!!


「ふぉーーー!」「おおうおお!」とか声を出して抵抗したが、赤ちゃんの身体ではどうすることもできない。リッテ強し!!


寝かされてリッテが出ていったことを確認した。

俺の目はまた再び野望で輝きだす。


ここで選択しが出てくるのだ。

スライムを見に行く。下手したら襲われやられてしまう。

恐らくリッテに元の場所に戻されるだろう。


次の選択肢、スライムを見に行けないのは残念だが魔法と言う魅力には抗えない。

やっと魔法の検証だ。ばれたらまずいからな。


まずは火魔法はだめだね。テントが燃えたら今夜は夜空テントで過ごさないといけない。うん、それはまずい、まず、赤ちゃんが魔法を使うのがまずいのだ。


となると水かな?テントの中で寝かされている俺はあうあうあーとか言いながら。魔法の練習を開始した。しかし発動しない。


うん?なぜだ?

そう言えばリースが剣技っぽいものを使う時オーラみたいな物が視えた気がした。

あれが魔法?MPを使った感覚なのかな?

それを意識して。イメージしたものを出す感じかな?


「あうーあうあーーあー」ウォーターボール。

おおーなんか丸い大きな水球が出ている。これが魔法。

おおー感動!!あれれなんだか体が重く・・・そうして俺は気絶した。

魔力切れってやつだ。締まらぬ!


「ご飯ですよ。」と言って入ってくるリッテ。

「あらら寝ちゃいましたか?仕方ないですね。あれなんで水が?おねしょでもしたのかしら?」テキパキとかふき取る。多少はしみ込んでいるのは仕方ないですね。

「赤ちゃんは寝ている。これはリース様を口説くチャンスなのでは!」とか言ってるんるんとしてテントを出ていった。


ご飯が終わり片付けが終わった。

「美味しかったよリッテ!今日は先に俺が休もう。」と言ってテントに向かう。

「あ、お待ちください。」とリッテが止めてくる。


「どうしたんだ?何かあったか?」と聞き返す。

「実はそうなのです。赤ちゃんがおねしょをしたみたいで、テントが少し水浸しに・・・」

「・・・どうしようか。」と困った顔をする。


「そんな人のためにこれを用意しました。じゃじゃーん。」と広げて見せる。

長く一人は寝られる。簡易的な布団だ。


「さあ、ここに寝てください。」と膝枕をアピールしてくるリッテ。

「いや、ちょっとまて・・・そ、それは恥ずかしい。」と後ずさる。


「遠慮しないでください。断られた方が恥ずかしいんですよ!」と笑顔で言う。

「・・・ちょっと待て。それをテントの上で引いて寝たらいいんじゃないのか。うんそのほうがいい。」とリースが提案する。


「残念ながらこの布団は水を吸収しやすいのです。」と悲しい顔で言う。

「え、そうなのか。」

「は、はい。それに何より膝枕を断られたと、あとで城のメイドたちに言わないといけませんね。」と涙ながらに言う。


「ちょ、ちょっと待とうか。それは洒落になってない!」と抗議するリース。

城のメイドに話されたら最後、どんな噂話になるかわかったものじゃない。


この前それで同僚が男達に追いかけられていたっけ、助けてくれーとか言ってたが・・・その後その人がどうなったかわからないらしい。


「わかった。お願いしよう。」俺は観念した。

太ももに顔を乗せた。

「ふふ、リース様。」と声をかけるリッテ。


「・・・zzz。」


「リース様は一瞬で寝れる特技の持ち主でしたね。なら、何があっても起きませんね!」と、目がキラーんと光っていたのは気のせいじゃないかもしれない。

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