六
まるで、野生の獣にでもなったような、爽快な気分だった。彼は、少女の匂いの痕跡を求めて、道路を疾走した。
崇高なる存在へ、捧げものを。血を、少女の血を——。生贄を。若きあの頃に戻ったように、彼の内で血潮が騒ぎ、抑えきれない興奮が、彼を突き動かす。
力が欲しい。もっと、もっと、もっと。――でなければ、この弱き存在は、この世から滅ぼされてしまうのだから。
怒りと悲しみに満ちた声が、内から発せられる。興奮は、恐怖と狂気をないまぜにし、とめどなく膨れ上がっていく。凶暴な刃が風を切るように、彼は疾走する。もはや自分が何者かもわからずに、暴走に満ちた狂気とともに、匂いに引き寄せられ、かつて獲物を求めた校舎の残骸へと猛進していく。
その背後から、彼を追う者の姿があった。その気配を察知しながら、彼は不敵な笑みを浮かべていた。
奴を知っているぞ、とディプロが心の内で囁いた。すでに、彼の心の大部分を占拠しているディプロは、憤怒の感情を爆発させ、さらなる身体の変革を促した。彼の心も、肉体も、この時点でディプロによって完全に支配されたかのようだった。残されたのは、暗闇に漂う累積した負の感情の残骸。すなわち、ディプロの餌のみ。悲しみの絶叫とともに、ばらばらに砕け散った自我の欠片。
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