六
青年が立ち去ってから、しばらく茫然とそこに立ち尽くしていた照須は、がくがくと自分の足が震えていることに気づいた。そのことに気づいた途端、全身から力がすうっと抜けていって、その場にへたりこんでしまった。
自分はいま、とんでもない事態に巻き込まれているのではないかという思いがひしひしと感じられる。
ああ・・・・・・ゆうと仕事をともにしていれば、きっといつかは、こんな経験をするのではないかと思っていたが、今回が、どうもそれのようだった。
もし、あのままあの木の下で、あの青年の助けがなかったら、今頃自分はどうなっていただろう? 青年が言った、増幅された怨念のようなものにまた憑依されてしまっていただろうか。それとも、もしかして、ショックで精神に障害を負ってしまっていた可能性も考えられる。
そもそも、霊感音痴の自分が、霊的存在を視覚に捕らえられたことが、いまだに信じられない。ここら辺一帯が、強い霊域になりつつあるのではないか。その本体こそ、星川第二小学校なのだ。その廃校は、人が消えていなくなって以後、どんな怨念を刻んできたのだろうか。廃校にも、ここのねむの木に取りついた少女の霊のように、男の怨念が刻まれ続けているのだろうか?
首を吊って自殺してしまった、用務員の怨念が——。
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