「見たか?」

 良治の声は、緊張と興奮で微かに震えていた。満にしても、それは同じで、体が緊張で強張っていた。

 今のは、何だ?

 目を疑う光景だった。満たちは、神社の外側から、隠れるようにして境内で起きた光景を眺めていた。どちらも高校生くらいに見える男と女。その二人が、霊木らしき樹木の前で立っている。頭上を見上げている女の背後に男が近づくと、女が悲鳴を上げた。

 その瞬間、男の腕が伸びた。というより、満には伸びたように思えた。それから黒い靄のようなものが、とぐろを巻くように樹木に巻き付いたかと思うと、稲光が樹木に落ちた。

 男が、境内から出てきたので、満たちは慌てて、路地の奥に身を隠した。

 「後をつけよう」

 満は、直感的な確信でそう言っていた。

 「は? なに言ってんだ満、あいつ間違いなくやばい奴だぞ」

 「でも、女を助けたんじゃないか?」

 満が言うと、それまで黙っていた信二が深く頷いた。

 「会話からして、どうやら満の言ったとおりだと思う。あの人は、女を助けたんだと思うよ」

 「会話だって? おまえ、この距離から二人の会話が聞こえたのか?」

 満も少し怪訝な表情をして信二を見返した。確かに何かぼそぼそと話しているようだったが、とても内容までは聞き取れなかった。

 信二自身も、指摘されて初めてその事実に困惑しているようだった。

 「とにかく追おうぜ、見失わないうちに」

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