七
「今度のやつは、ちょっといままでのと感じが違うね。エネルギーレベルだけでも数倍はあるんじゃないかな。しかも、まだ肥大してるし」
ホログラムは、再び古い木造アパートを浮かび上がらせる。志保は、専用のダウジングロッドを奇術師のようにくるくると回転させながら言った。ロッドは、志保の精神状態に応じて色を変える。いまは、溶鉱炉で溶かした鉄のように鈍く赤い光を帯びていた。志保の遠隔感応にストレートに反応しているのだった。
「気をつけた方がいいかもね。あんたなら、大丈夫かと思うけど」
志保の言葉に、ルナが軽く頷くと、誰か部屋に入ってくる者があった。ダイヤモンドのように硬質な、それでいて、澄んだ水のように柔らかく整ったオーラを持つ女性、飛鳥井楚羅李だった。
「また、一人で行くのですか? ルナさん」
ソラリ研究所所長の娘である、楚羅李の声は、そのオーラにもまして、涼しげで澄んだ声だった。しかし、どこかに憂いの気配も混じっていた。まだ、十六歳の若さだというのに、すでに王女の風格を持っている。肩先まで伸びるうっすらと紫がかった髪が、水流のようだ。
「あれ、が散らばってしまったのには、わたしたちにも責任があります。あなた一人が背負うものではないのですよ」
その言葉に、ルナは少し睨むかのように彼女をみやる。
「これは、俺の仕事です。もう、誰の手も借りないと決めたから。だから・・・・・・邪魔はしないでください。そうでなければ、俺は、ここをやめます」
楚羅李は、少し残念そうな表情をしたが、気を取り直したように、笑顔を見せ、ルナに向かって頷いてみせた。
「分かりました。では、どうか油断なさらないよう、気をつけて。わたしたちは、いつでも、あなたの味方ですから」
ルナは、志保にしたのと同じように、軽く頷いてから、無言のまま部屋をあとにした。
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