月夜

 光は希望ではない。

 絶望だ。


 闇は絶望ではない。

 希望だ。


 光の中に絶望があり、闇の中に希望がある。


 その光景は月夜に照らされる海のようなもの。


 光と闇が混在している中、正義と悪、絶望と希望、男と女、純潔と穢れ、全ての二項対立が混沌の中に投げ入れられる。


 月が僕らを見ている。


 紅葉も散った冬の森。

 ゆらりゆらりと頭の上を雪が降る。

 肌に当たる雪は人の手のようだった。

 頭の上に降る雪は幼子の私を抱きしめる母のようだった。

 紅葉の上に降る雪は思い出の欠片のようだった。


 きっと、僕たちの頭は海の底よりも深く、空よりも広い。


 溶けていく。

 雪のように溶けていく。

 溶けて、とけて、とけて、とけていく。

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