叫び

口から出る言葉はいつも不完全燃焼で終わってしまう


 僕の胸の中でとぐろを巻いて静かに潜んでいるだけの赤子だ


 誰にも知られることなくその言葉は死に絶える


 生まれては死に

 生まれては死に

 生まれては死に

 生まれては死に

 生まれては死に


 その果てには唯暗雲とした前言語の塵だけが降り積もるばかり


 知られることの無い言葉の羅列だけが体の中に身を潜めるばかり


 僕は理解されること無く唯、沈黙だけを繰り返す


 その口は封印したかのように、堅く、堅く閉ざされる


 僕はまるで生きた宝箱で秘境だ


 信じたい


 信じられない


 生きたい


 死にたい


 言葉も人も自分自身すらも


 怖い


 恐ろしい


 何も見えない


 苦しい


 助けて欲しい


 哀しい


 出ていけ


 近づくな


 一緒にいたい


 もっと、もっと・・・・・・


 僕を殺すのは僕の言葉だ


 僕は僕の言葉を狩り続けた


 僕の言葉が誰かに届き、誰かに消され潰される


 そんな恐怖があって、僕は僕の言葉を殺し続けた


 僕は僕を殺し続ける


 僕の言葉は僕のもので


 僕の言葉は


 僕の声は


 僕の紡ぐ言葉の羅列は、音は、調律は、


 全部僕のものだ


 僕は僕の物語を紡ぐ為に言葉を結び合わせよう


 僕の物語の鐘が鳴る


 僕の物語が動き出す


 例え世界が希望に満ちていても、絶望のどん底にあったとしても語り部は止まらない


 絶望も希望も喜びも殺意も歓喜も嫌悪も憤怒も


 言葉は僕の感情を、思考を、感覚を語り続けるだろう


 言葉が吐き出される限り僕は生き続ける


 僕は僕を生きる為に僕の為の語り部となろう


 僕の言葉は希望を保つためにある

 僕の言葉は絶望に打ちひしがれるためにある

 僕の言葉は喜びを愛する人たちに分かち合うためにある

 僕の言葉は殺意を哀しみの海に身を浸すためにある

 僕の言葉は歓喜を天に届けるためにある

 僕の言葉は嫌悪を孤独の暗闇と向き合うためにある

 僕の言葉は憤怒に安らぎを与えるためにある

 僕の言葉は自分自身を、人を赦すためにある


 だから


 だから、きっとこれは僕が僕を生きるための物語だ

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