真幸福論

 もし、お金があったなら沢山欲しい物が買えただろう


 それは幸福か


 もし、サッカーの才能があればサッカー選手になっていただろう


 それは幸福か


 もし、家族がみんな元気なら普通の生活をしていただろう


 それは幸福か


 もし、友達が沢山いれば沢山遊ぶ事ができたろう


 それは幸福か


 もし、学歴があれば良い会社に入って良い給料で働く事ができたろう


 それは幸福か


 より多くの持っていれば人は幸福らしい


 中卒は不幸か


 低所得は不幸か


 才能がないのは不幸か


 家族が元気でないのは不幸か


 学歴が無いのは不幸か


 友達がいないのは不幸か


 才能がないのは不幸か


 あるなしの幸福論、平均化された幸福と不幸


 みんなの不幸は僕の不幸で


 みんなの幸福は僕の幸福だ


 みんなの幸福に付き合っていたら、いつの間にか何も感じなくなっていた


 食べても味がしない


 家族が死んでも何も感じない


 音楽を聴いてもモノクロな言葉だけが右から左に流れていく


 映画も動画もアニメも唯の絵の連続体だ


 幸福にしがみつけばしがみつく程、僕は泡になって消えていく


 僕の幸福は何処へ


 求めていた幸福は求めれば求める程遠ざかっていく


 なんで嫌いなことを嫌いと言うのはこんなに難しいのか


 好きなことを好きと言うのはこんなに難しいのか


 もう勘弁してくれ


 いい加減にしてくれ


 僕に幸せを押し付けるのは


 幸福に押しつぶされてしまう


 幸福な不幸者に僕はなってしまう


 空はこんなにも青くていつもそこにあるのに


 なぜ底に落ちてしまいそうな色をしているのだろう


 幸福も空に落ちて僕の手からするりとすり抜けてしまった


 幸福を探すことを止めたい


 なのに止められない


 幸福の奴隷


 幸福という言葉に取り憑かれてしまった


 幸福という釘に魂と体を釘付けにされてしまった


 僕は幸福依存症なんだ

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