第123話 召喚士と問題のパーティー
「へぇ。召喚士のプレイヤーとは久々に会うわね」
「確かに。中々珍しいな」
セーメーがついているジョブの召喚士とは特殊職の1つになる。習得条件はDEXが100以上、INTが80以上となっているらしい。
このジョブは、ドラゴンの召喚に関する制約が幾つか緩和される。例えば、ドラゴンの召喚に必要な召喚コストがジョブ特性によって減少し、召喚可能時間もジョブアビリティのレベルに応じて長くなるという感じだ。
中でもこの召喚士だけが持つ特徴としては『ドラゴンの複数召喚』という点がある。
通常、戦闘中にドラゴンは1人につき1体までしか召喚することが出来ない。別のドラゴンを召喚しようと思うとシステムから『送還』をしないと召喚できない旨が伝えられ、『送還』してからようやく召喚可能となる。
例外としては、常時召喚系のアビリティ持ちのドラゴンを戦闘前から召喚していた場合のみ、その戦闘中に新たにドラゴンを召喚することが出来るらしいが、それでも追加で呼び出せるのは1体だけとなる。
それに対して、召喚士というジョブの場合は召喚できる数の制限がなく、契約して共に冒険しているドラゴン全てを召喚することが可能となる。
「まぁ、それでも最大で6体までしか召喚できないけどね」
「え? 何でですか? 契約出来るドラゴンに限りがあるんですか?」
ふとアイギスの説明に疑問を抱いたランスが手を上げて質問する。それに対し、「いい質問ね!」と親指を立てたサムズアップポーズを決めるアイギス。
「契約数には限りはないわ。でも、召喚できるのはその中で6体までとなっていて、残りの契約ドラゴンは女神の元に預けられるって設定らしいわね」
ベータテストの時点から、プレイヤーが戦闘中に召喚できるドラゴンの数は6体までとなっているらしく、それ以上の契約ドラゴンについては女神の元に預けられる仕様になっているらしい。神殿で女神像に触れることで、その召喚可能なドラゴンを入れ替える事が可能となっているらしい。
何故6体までなのかは流石に知らないが、以前ドワーフを図鑑で調べた際に出てきた『六龍王』なんかが関わってるとかだと、面白そうだ。
……決して、世界的に有名なあのモンスター育成ゲームの手持ち数をパクったりしたわけではないと思いたい。
「でも、6体までだとしても単純にかなり強くないですか? 召喚コストも低くなるし、召喚時間も長くなるんですよね?」
「確かにそれはそうね。……でも、その召喚するためのドラゴンは、今はどこで手に入れられるのかしら?」
「――あっ!」
それだけ聞けばランスのように多くのプレイヤーが興味を惹きそうなジョブに思えるが、実際はそこまで強いジョブというわけではない。まぁ、それも現時点での話ではあるが。
まずもってドラゴンを複数体召喚可能という特性ではあるが、その肝心のドラゴンについては、ゲーム開始時のチュートリアル中に契約できるドラゴン以外だと現時点では、セカンダの街に行く街道の途中にある平原辺りで極稀に出現するベビードランと契約するか、ギルドでギルドポイントを集めた後にポイント交換メニューから各種召喚石を引き換えて召喚するしか方法はない。
ベビードランに関しては街道沿いの平原が街道が封鎖されている影響で入ることが出来ずに入手不可、更にギルドポイントの方はかなりの量の依頼をこなす必要があるので、余程の廃人プレイをしなければ現状で入手するというのは中々難しいだろう。
それでも、セーメーのようにこのジョブにつくプレイヤーは一定数存在する。
その理由としてはこの召喚士から派生するジョブの中には、ドラゴン以外のモンスターと契約し、召喚することが出来るジョブが確認されているからである。
例えば、クラス2にあった『調教師』というジョブはドラゴン以外の獣型モンスターと契約可能になるというジョブになる。召喚士の恩恵もあるので、召喚コストさえ考慮すればかなりの戦力強化になるジョブとなる。
なお、モンスターの場合もドラゴンと同じ枠を使うのでドラゴンとモンスター合わせて6体までが使役可能となるようだ。
そして、おそらく彼女の場合は見た目的にそれではない別のジョブにつくことを考えているのだろう、と切り出したのはセインであった。
「セーメー、君は『
「お、知ってるのか!? 流石はベータテスターだな! そうだぜ、アタシはクラス3にあるって言ってた『陰陽師』になるために召喚士を選んだんだ!」
セインの指摘にパァッと明るくなって答えるセーメー。どうやら彼女は中々に男勝りな性格の持ち主らしい。なんでも、同じパーティーのメンバーも掲示板で話している時は女性プレイヤーだと思っていなかったようだ。
何となくスズ先輩を連想するが、流石にあの人ほど粗暴では無さそう――とか考えてたらスズ先輩から何故か睨まれたので、コレ以上考えるのはやめておこう。何で分かったんだ、あの人……。
なお、陰陽師というジョブについてはスミレが目指している忍者と同じで、クラス3に派生ジョブとして、存在だけが判明しているジョブとなる。クラス2を経てようやくつくことができるジョブなので、まだまだ先の話となる。
しかし、クラス3まで見越してジョブ選択できるのは、結構現実的で面白いのかもしれないな。僕の場合、クラス2ですら未知の領分なので何とも言えない。
因みに現時点でセーメーが契約しているドラゴンは、未知の召喚石で出た低ランクドラゴンらしく、現状では複数召喚以外の召喚に関わる補正効果も完全に宝の持ち腐れ状態になっている。
それもあって、彼女は今回のレイドイベントで是が非でも高ランクの召喚石を手に入れたいと思っているようだ。
しかし、スミレの目指す忍者といい、結構和風なジョブの種類も存在しているようだ。
確か、ベータテストの時だと剣士のクラス2派生ジョブに
そのジョブになるには刀の入手が必要らしく、刀に関しては現時点では制作方法含め入手する方法はない。
それこそ先の街で現物やレシピを探す他には、リアル刀鍛冶な生産プレイヤーに完全マニュアル生産で作ってもらう必要があるようだ。つまり無理ゲーということになる。
まぁ、掲示板によればクラス2になろうというプレイヤーはまだまだ存在していないらしいので、あまり急ぐ話ではないだろう。
「ま、正直召喚士としてはあまり役に立たないけど、その代わり【魔術】とかは使えるからそっちを頼りに来てくれると助かる。まぁ、本職には敵わないけどな!」
どうやらセーメーは戦闘手段として【魔術】を習得しており、一応は魔法職としての役割も果たせるようだ。ミリィと同じ【黒魔術】を傾向としているので、攻撃役としては十分だろう。
「俺たちについては簡単に説明する。……ちゃんと構成とかしてなかったから、恥ずかしいな」
「フッ。そういうのは、これから学んでいけばいいさ。それに、今後のアドバイスも出来るしね」
ゼット達のパーティーは自信がないという割にはそれなりに特徴がある構成となっていた。それこそ、やり方さえちゃんとやれれば上手く立ち回れそうなポテンシャルはある……というのはセインとアイギスの談だ。
まずゼットは、スズ先輩と同じ大剣を使う剣士だった。とはいえ、ユニーク武器でSTRの数値がダメージが乗るスズ先輩と違って、火力はそれなりといったところだ。それでもATKを重点的に伸ばしているため、『ダインスラッシュ』などの大技を決める隙があれば、十分活躍はできるだろう。
ザガンは【盾術】で覚えるエリア系の防御スキルはまだ覚えていないらしく、他のプレイヤーごと防御するというのは難しいらしい。その代わり、動いていない時に敵からのヘイトを稼ぎ、意識を集中させることが出来る【注目】という効果アビリティを覚えていたので、いざという時はデコイとして活躍できる筈だ。自分の身はしっかり守れるらしいので、問題はないだろう。
リィルは例の【灰魔術】の傾向アビリティを習得しているらしく、攻撃と回復のどちらも卒なくこなせるか、火力としては【黒魔術】持ちには敵わず、回復量も【白魔術】に遥かに劣るという形になっている。とはいえ、そのどちらもそれなりに使える存在がこういう手数が限られるような場では重宝されるかもしれない。
フィオは彼女の身長に近いサイズの大弓を扱っているため、撃つまでの時間がかなり長い。メイヴィやこの場にいるクリスが用いている普通サイズの弓と比べると取り回しに難があるものの、火力はかなり高い。命中さえすれば、かなりのダメージソースにはなりそうだ。
自称問題のあるパーティーということで身構えてはいたが、4人とも自信がないだけでそれなりにうまくやれそうな感じだ。これなら、過度な心配は不要だろう。
彼らもセインたちから問題ない点を挙げてもらったことで少しだけ気が楽になったようだ。
「さて、次はリュークたちの番だが……残念。もう時間が無さそうだな」
次は僕らの番だったが、その時点でセインがカウントダウンの残り時間から打ち切りを宣言する。これ、間に合わなかったのは途中でジョブについてアイギスに聞いたりしてたせいだろう。うん。
とはいえ、僕らの役割はセイン達やフレイ達には既に理解されているらしい。ゼット達も僕の支援スキルの効果については死に戻り後に見た映像や砦に籠もっていたときに見ているらしく、何となくだが凄いんだろうというのは分かっていたらしい。
「まぁ、そもそもSSSSランクドラゴンが2体も居る時点でこのグループは負けないとオジサンは思うけどねぇ」
「……フン。あまり慢心していると、足元を掬われるぞニンゲン」
楽天的に捉えるフレイに対して、目を細めながら釘を刺すアーサー。確かに常時召喚のSSSSランクドラゴンが2体も居れば他のグループよりは戦力的に優位かもしれないが、それで勝てるほどレイドボスというのは甘くはない筈だ。
「まぁ、それは当然だな。……しかし、今回もリュート君の支援スキルには期待しているよ」
「そうそう。オジサンはあまり恩恵にあずかれなかったから楽しみにしてるよぉ〜」
「まぁ、あんまり気負いすぎずに頼むぜ?」
セイン、フレイ、カイトの3名から支援スキルについて期待やら何やらを色々投げかけられつつ、僕らは戦闘準備を進めていく。
「さて、そろそろ陣形を組んでおきましょうか」
そう言って最前に立つアイギス。他にはゼーレン、セイン、リッキー、ザガンが立つ。回避盾を含めた盾役のメンバーとなる。
その少し後ろに近接アタッカーのランス、スズ先輩、エクセル、ユキチ、フレイ、ゼットが立ち並び、少し離れてからミリィ、リリッカ、カイト、セーメー、クリス、リィル、フィオの遠距離アタッカーや回復役が並び、そして最後列に僕が立つという形だ。
そして陣形を組み終わった時には、カウントダウンは残り1分を切っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます