第122話 役割の確認
「さて、ランダムパーティーバトルではさっきまでのフェーズ以上に連携が必要となる訳だが……この交流に参加する気のない彼らは置いておいて、一先ず俺達が何を出来るのかを意見交換し合おう」
この中では責任感の強そうな印象を持つセインが前に出て、僕らに何が出来るのかを聞いて回る。やっているのはウルカに近い。
そして、唐突に聞かれても困るだろうとまずは自分達について説明し始めた。
まず、セインはアイギスと同じ『騎士』のジョブについていた。見た感じは革鎧のせいなのか、どちらかというと戦士系に近い印象だ。
因みに騎士のジョブになると鎧系の防具しか装備できないらしいが、革鎧も当然ながら鎧の扱いとなるので問題はないらしい。取り敢えず、魔術士のローブなどの洋服系の装備以外ならだいたい装備可能のようだ。
ただ、同じ騎士ではあるものの、その役割はアイギスとは全く違うという。
「そうだね、俺は彼女と違って、『完全攻撃特化型』の騎士になるよ。VITにあまりステータスを割り振らなかったから、自ずと守れるのは自分だけになるな。その分、AGIにステータスを振ってるから、陽動としての前衛は任せて欲しい」
そう言って自身の手を明かすセイン。2度目のドラゴンブレスに狙われた際に他のプレイヤーに巻き込まれない場所まで引き付けたのはAGIが高いお陰だったようだ。
盾も速度を殺さない為に小型の物を使っており、いわゆる回避盾という役割を担っているようだ。
また、VITは低いもののジョブとしての騎士の特性やジョブスキルやジョブアーツなどのお陰で普通の戦士よりは打たれ強くはあるらしく、そう簡単には落ちることは無いという話だった。そういうジョブの選び方もあるんだな。
「……そういえば、私は特に何も考えずに『剣士』を選んだけど、『騎士』とか『戦士』とか剣が使えるジョブでよく似てるけど、違いってなんだったんだ?」
「フフ、そこは私に任せて頂戴!」
スズ先輩がふと、戦士然とした騎士のセインを見て、近接系の基本的なジョブであり、多くのプレイヤーがまずつくことになる筈の『戦士』と『騎士』と『剣士』のジョブの違いについて疑問を抱く。
それに対して出しゃばってきたアイギスの説明によれば、扱いとしては以下の違いがあるらしい。
まず、防具の点では騎士は先述のように鎧系のみ装備可能で、戦士と剣士にはその指定が特にない。また、騎士は大型の盾が使え、戦士は小型の盾を使えるが、剣士は盾が装備できないという違いがある。
武器も騎士は盾・剣・槍を装備でき、戦士はほぼ全ての武器を装備できるが、剣士は剣のみが装備可能となり、斧や槍などの剣としても分類されている武器は装備することができないという仕様になっている。
他にもジョブスキルやジョブアーツ、ジョブアビリティの傾向も、騎士は防御系、剣士は攻撃系、戦士は補助系、といった形で覚えるという違いがある。
因みに、槍使いや弓使い、盾使いといった○○使いというジョブは全て戦士系に該当し、特定の武器種しか使えないが、その武器に特化したアビリティ等を覚えるのだという。
次にエクセルは見たまんまの『戦士』のジョブだ。身の丈程の斧を持っており、かなりSTRとATKを伸ばしているとのこと。ただし、AGIはかなり低いため、執拗に狙われると避けられないという弱点を持つようだ。
「まぁ、VITは人並みにはあるからある程度なら耐えられるし、いざという時はセインがカバーしてくれるからな」
「まぁ、俺もそこまで庇えるわけじゃないけどね」
ガハハと笑うエクセルに対し、苦笑いを浮かべるセイン。そんな2人を見てクスクスと笑うリリッカ。
「まぁ、この2人が一応私達のパーティーのメイン火力ってところね」
リリッカはミリィと同じく魔術士のジョブについているが、彼女の場合は習得している魔術の傾向アビリティが【白魔術】であるため、役割は大きく異なる。
【白魔術】はミリィの習得している【黒魔術】と違って、回復系の魔術スキルを覚えるようになるが、その代わりに攻撃系の魔術スキルはあまり覚えないらしい。
火力としてはあまりあてには出来ないものの、【白魔術】を覚えた魔術士は、回復特化の神官系のジョブに匹敵するレベルの回復役となる。
それこそ掲示板において、パーティーを組む際は1人は回復術士か、回復特化の神官系か、白魔術持ちの魔術士が必須と書かれる程には、基盤となる役割なのだとか。
しかし、魔術士はこのように習得している傾向アビリティによって役割が大きく変わるので、分類は色々面倒くさいらしい。ここではミリィは遠距離攻撃役、リリッカは回復役という形になる。
残るクリスとリッキーはそれぞれ『弓使い』と『斥候』であり、リッキーがAGI重点型の前衛でクリスがDEX重点型の後衛となる。それぞれのジョブにおける基本的なスタイルを取っている為、特筆すべき事はあまり無いらしい。
オマケに2人ともあまり集団プレイには慣れていないのか、緊張してクリスはよく噛むし、リッキーはさっきからほとんど言葉を話さない様子だった。
あまりに緊張している様子だったので、『リリーブテンション』でも使ってやろうかと思ったが、流石にMPが勿体ないと全力で断られた。そうでもないんだけどなぁ……。
「さて、次はオジサンたちのパーティーかな? まぁ、オジサンも実は仲間のことあんまり知らないんだよねぇ」
「まぁ、僕たちは掲示板で知り合ってますから仕方ないですね」
次にフレイたちのパーティーが紹介を始める。
まず、この中でリーダー格らしい最年長のフレイだが、ジョブはエクストラジョブだからあまり話したくないということで秘密にされた。
「ぶっちゃけ、オジサンとしては今後のことも考えると、あまり自分の手の内を晒したくないんだよね。申し訳ないけど」
「いやまぁ、それは仕方ねぇよ。しかし、ファーストプレイヤーなのに、エクストラジョブの条件を満たすなんて運がいいんだなオッサン」
申し訳無さそうに返すフレイを軽快に笑い飛ばすエクセル。まぁ、本人が話したくないというのならエクセルの言う通り、仕方ないだろう。
僕も一応、ファーストプレイヤーでエクストラジョブなので、もし聞かれたらフレイと同じ感じに濁すことにしよう。
一応、フレイが使用する武器は教えてもらったが、なんと鞭を使用するらしい。ゴーダンの店の初期武器にあったかどうかは定かではないが、この場にいるプレイヤーたちの反応を見る限り、使っているのはかなり珍しいのだろう。
第2フェーズにおいてフレイがバインドウィップというアイテムを使って、うまい具合にイヴェルスーンの動きを止めていたとエクセルが言っていたが、もしかすると普段から鞭を使っていたからこそ出来た芸当だったのかもしれない。
そんなフレイと普段から共にプレイしているというカイトは、その見た目通り『神官』のジョブについていた。
先程、回復役として話に出ていた神官系のジョブだが、このゲームで最初に立ち入ることになる聖竜神殿で龍神への祈りを捧げることがその系統のジョブにつくための最初の条件ということらしい。
基本となる『神官』はステータスの条件もそこまでなく、比較的誰でもつきやすいオススメのジョブの1つとして挙げられている。
その際たる特徴は回復系のスキルをジョブスキルとして会得するという点だが、実は光属性の効果を持つスキルやアーツを覚えるジョブでもあるらしく、普通に攻撃系のスキルやアーツも覚えるようだ。
「俺の場合、まだ神官の攻撃手段は覚えたばかりだから、今のところはこのメイスを使った攻撃がメインになる。まぁ、基本的に回復役で後衛だから、あまり火力は期待しないでくれ」
「オジサンもあまり前には出ない感じかなぁ?」
フレイもカイトも攻撃としてはあまり前に出るタイプではないらしい。
その分、今回のパーティーでは『盾使い』のゼーレンと『剣士』のユキチが前衛として戦い、また後衛としても『召喚士』のセーメーが存在している。
前衛2つの役割としては基本的なものであり、『盾使い』は前衛で味方を守る盾役となり、『剣士』は高火力で真正面から敵に攻撃する近接アタッカーだ。そこは知り合いにも同じようなスタイルのプレイヤーが居たから分かり易い。
しかし、後衛の『召喚士』はいささか特殊なジョブであった。
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