第111話 護る力(※ランス視点)
――ランスSIDE――
ルヴィアさんの放ったドラゴンブレスでも、あの邪竜のドラゴンブレスを打ち消すことはできなかった。
その後、他のプレイヤーの攻撃や、スズさんのパートナードラゴンであるアーサーさんが『ドラグブレイズ』という剣戟を放ったのだけども、それでも打ち消すことはできなかった。
まさに万事休すといったところだったのだが、急に頭の中にメタルオーの声が聞こえたような気がする。まさか、俺に召喚しろって言ってるのか?
何ができるのか分からないが、とにかく出せって言うなら出してやるさ! メタルオー!
「メタルオー、『召喚』!」
「キュイイイイイン!!」
そして僕はメタルオーを召喚する。その場に鏡のように眩く輝くボディを持ったドラゴンが現れたことで周囲の視線を集めてしまう。でも今更だ。
「今度こそいいとこ見せよう! メタルオー!」
「キュォォォォン!!」
そう咆哮すると、一直線にドラゴンブレスへと向かっていくメタルオー。
――って、それじゃモロに光線を食らっちゃうじゃないか! 何を考えてるんだメタルオー!?
俺のそんな思いを知らずか、メタルオーはドラゴンブレスの真ん前に立つと何かのスキルを発動したようだ。メニューに記載されているが……どうやら『ミラーシールド』というスキルを使ったようだ。
このスキルは確かリュートさんから貰った経験の竜玉でレベルアップして、レベル8に到達したときに獲得したスキルだ。
その効果は物理以外の攻撃を一定量反射して跳ね返すことができるという効果だったはずだ。それによってある程度攻撃を受けて、跳ね返すつもりのようだ。
「負けるな、メタルオー!」
その時、メタルオーに対してなにかのスキルが発動した光が走る。おそらくはリュートさんの『ドラゴンエンハンス』の何かが発動したんだろう。
押され気味だったメタルオーだったが、何とか持ちこたえてドラゴンブレスを邪竜に向けて反射する。しかし、それ以前にドラゴンブレスが止みそうにない。
やがて『ミラーシールド』の効果が切れて、メタルオーは墜落する。慌てて俺はメタルオーを送還する。よく頑張ったな……!
ドラゴンブレスはいつの間にか光線状態から炎攻撃へと変化しており、だいぶ勢いは削がれたものの、それでもその炎は周囲のプレイヤーたちに向かって降り注いでいく。
俺はアイギスさんに守られたのでなんともなかったが、盾を構えていなかったプレイヤーたちはその炎に飲まれ、あっという間にHPが削られてしまい、次々と死に戻ってしまう。
ユートピアさんも例の狙われていたプレイヤーと一緒に死に戻ってしまった。
更にその炎は、後ろに下がっていたミリィやリュートさんたちの方にも迫っていた。
「あぁ! このままじゃミリィが!」
「――出てきなさい、アテナ! 『イージスオーラ』よ!!」
『あいよー』
すると、アイギスさんがなにか叫んだかと思うとミリィたちがいる場所に突如として小さなドラゴンが現れ、何やら不思議なオーラを展開する。
そのドラゴンは人間よりもかなり小型の妖精のような姿をしたドラゴンであったが、そのサイズには見合わない覇気のようなもの――それこそウルカさんのセンディアに負けない程のオーラを纏っていた。
対して『イージスオーラ』はどうやら特定の威力の攻撃を一度だけ無効化する能力があるらしい。ミリィたちに向かっていたドラゴンブレスは、そのオーラに触れた瞬間に消滅していた。流石に後出ししてきたということはあのドラゴンブレスそのものは防げそうに無かったのだろう。
『……やれやれ。ようやく出番かと思えば、中々扱いが雑じゃないか、我が君?』
「あら、ごめんなさいねアテナ。どうしても間に合わせたかったからね」
アテナと呼んだドラゴンと会話するアイギスさん。そういえばアイギスさんのドラゴンについては何も教えてもらってなかったような……。
「えっ、アイギスさんのドラゴンって喋れたんですか!? っていうか、何ですかそのドラゴン!」
「えぇっとね……リュートくんの経験の竜玉を与えてレベルアップさせたら喋れるようになったのよ。因みにこの子は『ピクシィドラゴン』のアテナよ」
『よろしく〜』
そう苦笑いで答えるアイギスさん。
どうやらこのドラゴン、ピクシィドラゴンと言ってウルカさんのセンディアと同じSSランクのドラゴンだったらしい。
しかも常時召喚タイプらしく、いつもは常時召喚系のアビリティである【
ただし、一度実体化するとアイギスさんの経験値の貢献度は、リュートさんとルヴィアさんの関係と同じように、アテナの方へと大きく偏ってしまうため、あまり呼び出したくはなかったようだ。
まぁ、偏ると言っても
「流石に、状況的に経験値云々を悩んでる場合じゃ無かったからね。ホントはもう少し早く出したかったのだけど、『実体化』の発動までタイムラグがあったから……」
『でもまぁ、よくぞ使ったことのない僕のスキルをああもタイミングギリギリで使えたものだよ、我が君』
「あなた、防御系のスキルしか覚えてないでしょ。私と役割丸かぶりなのよ。まぁ、今後はもう少し使ってみることにするわ」
『それはそれ。いやね? 僕も働かないに越したことはないと思ってるんだよ? だから程々に頼むよ?』
「はぁ……。全く、なんで私の契約ドラゴンはベータも本サービスも怠け癖なのかしら……?」
その後、アイギスさんとアテナとの奇妙な会話が続く。
しかし、ルヴィアさんやアーサーさん以外にも喋れるドラゴンなんて居たんだな……。もしかしたら僕のメタルオーも喋れるようになるのかもしれない。
「……さて、ランスくん。良くやったわ。何とか相手のドラゴンブレスで全体が壊滅するのを防ぐことができたわね」
「でも、俺たちじゃ全部防げなかったし……ユートピアさんたちも……」
「そこはいいの。気負わなくて。君は君がやれることを精一杯頑張ったんだから。それに、メタルオーのお陰で相手も結構な痛手を負ったんだから、それは誇りに思いなさい!」
そう言って俺の背中をバンバン叩くアイギスさん。そういえばメタルオーが跳ね返したブレスはそのまま邪竜に当てていたんだっけ。
確かに、ドラゴンブレスが放たれる前と比べるとだいぶHPのゲージが削れているような気がする。
「さぁ、まだ戦いは続いてるわ。行くわよ、ランスくん!」
「…………はい!」
そして僕らは再び邪竜に向かって走り出す。既に多くのプレイヤーが再び邪竜に向けて駆け出しているところだった。
そんな邪竜はブレスを使ったことで疲弊しているようで、また先程メタルオーがドラゴンブレスを跳ね返したことでゲージが削れているが、それにより体中が傷だらけになっていて、鱗の切れ間が露出するようになっていた。
よし、反撃開始だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます