第103話 スライムポーション
その後もモンスター素材などを使って色々組み合わせながら調合をしていくが、次々と産業廃棄物が積み上がっていくばかりだ。
因みに今回、産業廃棄物は部屋を貸してくれたオキナが代わりに処理してくれるということになっているので、心置きなく作ることができる。
何故代わりに処理してくれるのかは、気にしないでおこう。処分してくれるだけありがたいので、藪蛇を突くつもりはない。
「そういや、生産者ギルドの依頼で薬屋のばあさんとこに行ったときに聞いたんやけどな? 結晶石と活力草が中和剤や触媒としての役割を持つっちゅうのは聞いたことあるかもしれへんけど、スライムの粘液もなんか性質が近いらしいんやて」
「へぇ。それは初めて知ったな。ちょっと、試してみよう」
オキナがそう示唆したので、結晶石と活力草とスライムの粘液の組み合わせにプラスで何かを加える形でオート生産を行なったが、何回か試した結果、追加で竜泉の水を加えた際に調合が成功した。
そして出来上がったのは『スライムポーション』という青色の泡が出ている粘性のあるポーションのような液体だった。
スライムポーションは分類自体は素材ではない扱いだったが、特に効果のないアイテムとなっている。
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スライムポーション(良品) ☆2
分類:素材アイテム
効果:効果なし
品質:良
製作者:リュート
スライムの力が込められた増幅剤。単体では効果を持たないが、特定の薬剤と混ぜることでその効果を強化し引き上げる効果を持つ。シュワシュワしているが基本的に無害。
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ふむ、やはり増幅剤という扱いか。どうやら特定の薬剤と混ぜると効果を強化してくれるらしい。
その特定の薬剤というのが分からないものの、取り敢えず何かしらの薬の効果が引き上がるのは間違いなさそうだ。
「おー、なんかいけそうちゃうんか?」
「そうだね。取り敢えず、試してみよう」
そう言って、今出来たスライムポーションを使って手持ちの初級ライフポーションと混ぜてみることにした。これで効果の上がったポーションが出来れば万々歳だ。
混ぜながらシュワシュワと炭酸のようなものが抜けていくが、それにつれて緑色だったライフポーションが少しずつ水色に変色していく。この反応は少なくとも調合失敗ということは無さそうだ。
そしてMPが失われた瞬間に、また別の容器のポーションが生成される。消費量はさっきまでとあまり変わらない感じだな。
「おっ、何ができた感じかー?」
「今確かめるところだよ」
「うむ。早くみせてみよ!」
暇を持て余して素材の変換を行っていたオキナと見知らぬ服を見ていたルヴィアが、何らかのアイテムが出来上がったことでこちらの方に近付いてくる。
僕はそんなオキナとルヴィアの2人の視線を無視して、その出来上がった水色のポーションを鑑定する。
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ライトブルーライフポーション(良品) ☆2
分類:回復アイテム
効果:HPを100回復(レベル制限なし)
品質:やや良
製作者:リュート
良い出来の強化ライフポーション。元となったライフポーションの性質を引き継ぎ、より効果が高くなっている。味はサイダー。
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「で、出来たー! HP100回復する回復アイテムだ!」
出来上がった喜びでそのスライム混合ポーションを2人に見せる。オキナが鑑定するが、その効果を見てうーんと唸る。
「ほー。レベル制限はない感じか。しかし、良品で100回復やと、それこそ中級ポーションの劣化版ってところやな。店売りのやつは品質悪くてあの性能って話やし」
「けど、中級ポーションが作れない現状だと、これが量産できる最高レベルの回復アイテムになるんじゃないか? そもそも元は初級ポーションだし」
「ま、それは確かにやな」
その後、店売りの初級ポーションや僕がオート生産で作った他の初級ポーション類を組み合わせて作ってみたところ、前者の場合は調合に失敗し、後者はさっきの良品と同じ効果となった。
また、オキナがこれも試してくれと彼が趣味で取り寄せていた中級ポーションを持ってきたので、混ぜてみたが結果は失敗に終わった。せっかくの中級ポーションが無駄になってしまったが、これは僕のせいではないはずだ。
その後も精巧品や粗悪品のポーションと組み合わせてみるなど色々試した結果、何となくだが調合成功の法則とその性質について分かってきた。
まず、調合の成功についてだが、まずもってスライムポーションも初級ポーションも同じ製作者が作ったもの同士でないと失敗するようで、逆に同じ人物同士なら例え粗悪品同士だったとしても失敗しない事がわかった。
中級ポーションとの組み合わせが失敗したのは、まずもって製作者が同じでないことが要因ではあるのだろうが、そもそもスライムポーションに対応しているのかどうかも分からない。その点は中級ポーションが作れるようにならないと分からないだろう。
現状の作り方や僕のDEX、アビリティレベルだとスライムポーションの品質はセルフ生産でも『良品』が限界だったようで、それに伴って生産できた強化初級ポーションに関しても良品が現時点での最高品質となり、効果値の方も100回復が現時点での最大効果となった。
これの場合、中級ポーションの効果が落ちるレベル30を越えたとしても一律で100回復してくれ仕様となっている。まぁ、その時には既に上位のポーションは出ていそうな気はするが。
その品質が粗悪品になると、効果が大きく減る他に、スライムポーションの性質からか毒性を持つようで、使った場合は解毒ポーションが必要になる。ポーションは敵に使うことは出来ないので、完全に使い物にならないアイテムとなるようだ。
また、戦闘中に作ることを想定して戦闘向けのアビリティ編成にした上で『クイックメイク』を用いて作ってみたが、一応100回復の『良品』として生産することが出来た為、これも問題ないようだ。
因みに初級マナポーションの場合は『ライトイエローマナポーション』という名前になり、良品でMPが100回復する効果となった。味はレモネードらしい。
また、初級スタミナポーションは『ライトグリーンスタミナポーション』という名前になり、効果も良品SPが100回復と強壮(小)の効果を与えてくれるものとなった。こちらの味はメロンソーダのようだ。
因みに出来上がった強化初級ポーションはオキナによって『スライム混合ポーション』と名付けられた。普通に強化初級ポーションで良かったと思うし、その名前を知ったら多分使いたくなくなるプレイヤーが出てきそうな気がする。
それらのポーションは、それぞれ元になったポーションとは全く違う色になっており、味は炭酸飲料系のものとなっている。確かに元のスライムポーションからシュワシュワしていた感じはあったが……。
「成る程なぁ。良品ならどのスライム混合ポーションも一律で100回復するんか。まぁ、粗悪品やと効果激減に毒発生やけど、さっきの『クイックメイク』を見た限りやと、リュートはんならオート生産でも良品になって問題なさそうやな。しかし、これら全部を手間かけずに全部オート生産でいけるなら、これは結構ええかもしれんな。初級ポーション含めて材料費もそこまでかからへんし」
この調合で追加でかかるのはスライムポーションの素材となるが、この中だとスライムの粘液がモンスターのドロップ次第になるとはいえ、ファスタの草原で比較的大量に出てくるので獲得はしやすいだろう。
また、活力草や結晶石もそれぞれ【採取】と【採掘】があれば比較的近場で大量に入手することのできるアイテムとなる。
竜泉の水も例のセーフティエリアで手に入るし、聖竜神殿の前の泉も確か似た性質の水だったはずだ。まぁ、あそこで水を汲むのは少し恥ずかしいか。
元の初級ポーション自体は最早スキルで作ってもそれなりの品質で生産可能だ。
「ま、これか実際に売れるかどうかはまた別問題やけどな。それこそリュートはんが店を構える頃には中級ポーションのレシピが見つかって、出回っとるかもしれへんし」
「まぁ、商品として見ればそこまでかもしれないけど、実際に今からの緊急依頼で知り合いに使ってもらう分にはかなり力強いさ」
そう言って僕は各種ポーションとスライムポーションを合成していく。幾つかは混ぜ合わせずにそれぞれのポーションのままアイテムボックスに入れておく。
品質で効果が変わらないなら『クイックメイク』で作っても問題ないから、元となるポーション各種を多めに持ち込んでおいてその場で作っていくスタイルでも良さそうだ。
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