第16話 冒険者ギルド
冒険者ギルドの中は、さっきまでいたジョブ案内所とはうって変わって中世風になっており、ファンタジー作品のギルドといえばまさにこれだろうという感じの造りになっている。
入り口からから真っ直ぐ奥に向かった場所にカウンターがあり、受付の女性が3人ほどいる。その格好はジョブ案内所の受付よりも多少はラフなものになっている。
そして入り口から見て右の方には武器や防具などの装備やアイテムを売っている商店があり、左の方には食事などを楽しめる食事処があった。
そこには複数の机と椅子が置いてあり、注文したメニューをそこで食べるイートインスペースのような形になっている。その入り口側の壁には様々な色の紙が貼り付けてある掲示板のようなものがある。どうやらあれが依頼掲示板のようだ。
色々気になる場所はあるが、まだチュートリアル中なので機能制限があるのか、近づくことも出来ないので大人しく受付の方に進んでいく。
「あら、いらっしゃい。依頼なら向こうの掲示板から剥がしてきてちょうだいね?」
そこにいた大人な雰囲気の女性が、僕に向けて依頼掲示板の方向を指差す。どうやら普通に冒険者と間違われたらしい。ルヴィアが居たからかな?
「いや、ギルドに登録に来たんですけど」
「あら、そうだったの? ごめんなさいね、てっきり2人パーティーで来たのかと……」
まぁ、来訪者はチュートリアル完了まではソロプレイなので二人で登録に来ることはまずないし、現地の冒険者がわざわざプレイヤーがいるようなところで冒険者ギルドの登録をするわけがないので、二人以上なら依頼受付だろうとなるのは仕方のないことなのだろう。
その後、登録の為にクラスカードを提出して欲しいと言われたのでクラスカードを実体化させて手渡す。こういうとき、必要なアイテムなどはわざわざメニューを開かなくても、イメージすると実体化する仕様のようだ。
「成る程。リュートくんね。改めて……私は冒険者ギルド職員のイーリアよ。今回、ギルドに登録するという事で、私が君の担当になるわね」
「えっ、受付の人が担当になるんですか?」
てっきり奥で待機している力自慢の職員が出てきて「俺にその力を見せてみろ!」とか言って戦闘開始になるものだと思っていた。
イーリアが言うには冒険者ギルドの職員は最低限の戦闘能力を持っていることが条件であるため、か弱そうに見えてもそれなりに戦えるのだという。
確かにルヴィアとかも見た感じはそこまで強そうに見えないけど、今のところ最高ランクのドラゴンだからかなり強いんだよなぁ……。
「まぁ、今回は最低限戦えるかどうかの確認をさせてもらうから、私自身は戦わないのだけどね」
そして僕らはイーリアの案内の元、冒険者ギルドの奥から入ることができる訓練施設へと向かう。
そこには大小様々な訓練用のカカシが設置されていたりする場所の他に、学校の体育館程度の広さの戦闘用の広場みたいな場所があり、ギルドに登録すると無償で使用することができるらしい。
戦闘技能アビリティはこの訓練施設で訓練することでアビリティレベルの経験値を得ることができるらしい。
他にも模擬戦などで対人戦の特訓なども行えるらしい。
僕らはその広場の中にイーリアと一緒に入ると、彼女はどこからかリモコンのような物を取り出し、そのリモコンを操作すると広場の中心に穴が開き、狼に似た石の像がその中からせり上がってきた。
この世界、ドラゴンがメインではあるものの普通にモンスターも存在する。というよりも、序盤はスライムやゴブリンなどのモンスター討伐がメインとなる。
ベータテストでもある程度進めないと野生のドラゴンは出現しなかったらしい。序盤に出るとしたらゲームイベントや運営イベントくらいになるのだろう。
「これはグレーウルフというモンスターを模して作られたゴーレムよ。君はこのゴーレムをあらゆる手を使って討伐、もしくは相手が逃げ出すレベルまでダメージを削れば、ギルド登録試験としては合格になるわ。一応避けたりはするけど、攻撃はしてこないように設定しているから安心して頂戴」
どうやらモンスターを模したゴーレムを倒すか、ある程度ダメージを与えると良いらしい。
取り敢えず、準備が出来たら開始するとイーリアが言ったので僕はルヴィアと相談する。
「さて、どうしようか。ルヴィアのステータス的に僕が魔力供与しないと、どのスキルも使えないだろう?」
「うむ。ドラゴンブレスを使うにもMPが30必要だからな!」
最初にルヴィアのステータスを確認した際に気付いたのが、他のステータスは著しく高いのに何故かMPだけはかなり低いということだった。
先程ルヴィアが言ったように、『ドラゴンブレス』ですらMPを30消費するため現状では使うこともできない。まぁ、今の所はそれしか攻撃スキルはないんだが。
まぁ、彼女の場合は素のATKの値も高いので通常攻撃だけでも倒せる気はするが、それでは時間がかなりかかるだろう。爪も痛そうだし。
一応、時間制限などはないようなので、ちまちま攻撃するのも当然アリではある。むしろ、実際の戦闘でもスキルやアーツを温存して、少しずつ削っていく冒険者は多いらしい。
それでもあまり長々とやってしまうと、このログイン中に探索できる時間が少なくなってしまう。
幸いにも『魔力供与』はジョブアビリティの【ドラゴシンクロ】の効果で減衰率が無効化され、ドラゴンに限っては消費したMPの全てを与えることが可能になっている。
それがなければ、僕がMPを100消費して、やっとルヴィアのMPが10増える程度だったのだから、やはりブラッドサポーターを選択したのは間違いではなかったと思う。
取り敢えず、あのゴーレムが耐久性能がどれだけのものかは分からないので、念の為に2、3回はドラゴンブレスを撃てるようにしたほうが良さそうだ。
だったらMPは100程渡せば問題ないだろう。
それ以外のスキルはドラゴンブレスの威力を見てから使うことにしよう。
とはいえ、まずはルヴィア自身の身体能力がどの程度のものなのかを把握しておかないといけないな。
ルヴィアと相談して、取り敢えずどう立ち回るのかは決まった。一先ず、これで行こう。
「よし、準備出来ました」
「あら。それじゃあ始めましょうか。――ゴーレム・グレーウルフ、【
イーリアがそう告げると、それまで身動き一つしなかったゴーレムの瞳に光が宿る。そして僕らの前に立ちはだかると威嚇をし始める。
同時に戦闘用のメニューが常時表示されるようになり、現時点で戦闘が開始したことを表していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます