第14話 エクストラジョブ

「最後のエクストラって何ですか?」


「えーっと……正直私にもよく分かりません。特定の条件を満たした場合に発生するジョブだということは分かっているんですが」


 エクストラジョブに関してはジョブ案内所の方には情報があまり無く、ナディアもその中身についてはよく分かっては居なかった。


 特定条件下で出現する特別なジョブであることは確からしいのだが。まさか滅多なことでは出ないと思ってたジョブが自分で出てくるとはな……。


 一応、プレイヤーはそれらのジョブを選択することでどのような系統のジョブか、どのようなアビリティやスキル・アーツを覚えるかを確認することができるので、そっちで確認することにしよう。


 初めからそうすれば良かったのではないかと思ったが、受付の女性が楽しそうに話し始めたので「いや、結構です」と断るのは流石に忍びなかった。


 ――――――――――――――――――


『従龍士』

 龍の名を持つドラゴンと契約したコントラクターが就く事ができる特別なジョブ。

 戦闘中、パートナーに設定しているドラゴンのランクに応じて自身のステータスを大きく上昇することができ、そのドラゴンが持つスキルやアーツを使用可能になる。

 ただし、このジョブに就いている間、ドラゴンの召喚が一切行えなくなる。


『ブラッドサポーター』

 種族『ブラッド・ドラグーン』と契約したコントラクターが就く事ができる特別なジョブ。

 ブラッド・ドラグーンの力をより発揮させる事ができ、ドラゴンに対する支援・回復・補助系スキルの減衰率やデメリット効果を無効化し、その効果を強化する。また、特殊な支援スキルを取得する。

 ただし、このジョブに就いている間、通常攻撃で与えられるダメージが0になる。


 ――――――――――――――――――


 成る程。どちらも僕がルヴィアを召喚して契約することで就く事ができるようになったジョブのようだ。


 基本的にこの世界のドラゴンは漢字で書くと『竜』となるらしく、ゲームのジャンルも『従竜育成MMORPG』となっている。


 ただし、その中で『龍』と呼ばれている存在もいるようで、その多くが伝説のドラゴンと呼ばれている強力な存在となっている。ルヴィアが言うには、ランク的にはSSランクの一部、そしてその上のランクのドラゴンは『龍』と呼ばれるらしい。


 ルヴィアの場合は【龍閃姫】という名前から、龍の名を持つと判断されたらしい。


 後者の方はルヴィアの種族によるものだ。しかしブラッド・ドラグーンなんてドラゴン、ルヴィア以外に存在しているのかどうかは怪しい。本人曰く、他にも幾つかはいるらしいが。


「片方は自己強化の戦闘職、片方はドラゴン特化の支援職ってところか」


 肝心のジョブの内容だが、従龍士に関してはドラゴンの力をプレイヤー自身の肉体に宿すという扱いだ。


 元々のステータスに契約したパートナーのランクに応じた数値が追加される他、そのドラゴンが持つスキルやアーツも使うことができる。


 ただし、このジョブに就くとドラゴンの召喚が行えなくなるので、基本的には自分自身で戦うだけの戦闘能力を持たないと意味がない。


 その点では僕の場合は選択肢から外れてしまうな。いくらルヴィアのスキルやアーツが使えるとはいえ、それ以外が魔術スキルしかないからあまり戦力としては期待できない。


 それに元のステータス値が低すぎるから、SSSSランクドラゴンの補正だとしても、おそらくはそこまで強くはならないと思う。


「となると、残った『ブラッドサポーター』がこの中では一番マシな感じかぁ……」


「何やら不満そうだな?」


「いや、効果的にはルヴィアのサポートが出来るから全く問題ないんだけどね。ただ、通常攻撃のダメージが0になるってのが思いの外ショックでね……」


「いや、元から主殿のステータスでは最弱のモンスター相手でもそこまでダメージは与えられんだろう?」


「うぐっ……!」


 ルヴィアが痛いところを確実に突いてくる。


 確かに僕の場合は元のATKの数値がかなり低く、なおかつ杖を使った物理攻撃を補正する【杖術】を覚えていないため、仮に与えられても雀の涙ほどの弱ダメージしか与えられないし、大抵は相手のVITによって無効化されるだろう。


 幸いにもスキルやアーツのダメージは0にならないのでまだマシではあるが、それでも咄嗟に与える通常攻撃が無意味になってしまうのはやはり悲しいものではある。


「そもそも、何があっても妾がついておるから心配する必要は無いであろう? ……お主は妾を支えてくれればいいのだからな」


 ふと、ルヴィアが僕の顔を掴んで自分の顔の前に向けると、ニヤリと笑みを浮かべながらそう言い放つ。その眩い銀色の瞳に吸い込まれそうになる。


 というよりも、その顔立ちはかなり矯正で綺麗なのであまりの近さに、思わず恥ずかしくなってしまう。


 慌てて振り解いて周りを見ると、ナディアもまた恥ずかしそうに顔を赤くしてこちらを見ていた。多分、僕も同じ感じに顔が赤いんだろうなぁ……。


「……取り敢えず、僕はこの『ブラッドサポーター』にします」


 コホンと咳をついて場の空気を変えると、僕は自分が就くジョブを選択する。ナディアも同じように咳をしていた。


「えっと、一度ジョブを選択すると他のジョブに転職する際に料金がかかりますが、本当にこのジョブで宜しいですか?」


「はい。大丈夫です」


「分かりました。……………………はい、これでジョブ登録が完了しました。こちらがクラスカードになります。このカードを所持している間、該当ジョブの能力を使用可能になります。無いとは思いますが、紛失した場合は再発行に料金がかかるのでご注意ください」


 そう言ってナディアは一枚の金色のカードを僕に手渡す。僕がそのカードを受け取った際に、再びインフォメーションが送られた事を示すアラートが鳴り響いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る