第12話 ジョブ案内所

 そして特に何も起こることもなく(そもそも干渉できないので起きるはずがないのだが)無事にジョブ案内所に辿り着く。


 ジョブ案内所はかなり綺麗な造りになっており、白い壁面がよく目立っていた。


 尤も、さっきの武器屋に比べればどんな建物も小綺麗に見えるのだが。


 中に入ると今度は武器屋のときとは違って普通に他のプレイヤーが存在しており、受付の順番待ちをしている。


 その並びからまるで役所か銀行みたいだなと思ってしまう。窓口が複数あるのもそれを連想させる一つになっていた。


「順番待ち……早く順番が回ってくるといいな」


 そんな僕の呟きが通じたのか、思っていたより早く僕の順番が回ってきた。


 そこで周りをよく見ると順番待ちで並んでいるのはプレイヤーであることは間違いないようだが、どうも特に手続きをしている様子が見えないので、そういう順番待ちがある演出として表示されているだけのようだ。つまり、そこにはプレイヤーそのものはいないということで……?


 うん、よく分からなくなったが、まぁそんなことはどうでもいいので、取り敢えずジョブを決めてしまうことにしよう。


「こんにちは。ジョブ案内所へようこそ。担当のナディアです! 初めての登録ですね!」


 窓口には僕よりは上くらいであろう、ブロンズヘアーのそばかすが似合う若い女性が立っており、そこまで派手ではないスーツの意匠が混ざったようなドレスという、何とも不思議な格好をしていた。


 この世界での受付嬢としてはおそらくは一般的な恰好なのだろう。他の窓口の女性も同じような服を着て業務をしていた。


「はい。お願いします」


 僕が返事をするとその受付の女性、ナディアはにこやかに笑い、「ステータスを確認させてもらいますね」と告げてから透明の板のような物を出現させる。


 おそらくはそこに僕のステータスが載っているのだろう。


 その内容を見てから、他の透明の板を出現させてそこで何やらボタンのようなものを弄っていた。


「お待ちの間、ジョブについてこちらの資料でご確認をお願いします!」


 作業の傍ら、彼女は僕に冊子のような物を手渡してくる。そこには『ジョブについて』という至極そのままなタイトルが記載されていた。


 まぁもうしばらくかかるだろうということから、僕はよく分かっていない様子であったルヴィアと一緒にその中身を一緒に見ていくことにした。


 その冊子の説明によると、ジョブとは自身が持っている技能や能力をより強力にするためのものという扱いであり、就くことで専用のジョブアビリティが追加され、またそのジョブだけが覚えることができる専用のスキルやアーツを取得することができるようだ。


 ただし、その取得した専用のスキルやアーツに関しては、そのジョブを辞めて別のジョブへと転職すると忘れてしまい、使用できなくなる。


 だが、ジョブレベルを上限まで上げて、そこから派生する同じ系統のクラスアップジョブに就いた場合、それらの取得済みのジョブスキルやジョブアーツはそのまま使える状態になる、ということだった。


 ジョブレベルは基本的にアビリティレベルと同じ仕組みで、そのジョブの特性に沿った行動を取ることで経験値が入るようになる。レベルが上がれば新しいアビリティやスキル・アーツが手に入る。


 レベル上限はクラス毎に異なり、僕が今就くことができる『クラス1』のジョブだとレベル20が最大になる。


 因みにジョブアビリティはそのジョブに固定となっている為、クラスアップした場合も全て書き換えとなるので注意が必要とのことだった。


 そのジョブの大まかな分類だが、技能としての分類として、戦闘技能用の『戦闘職』、生産技能用の『生産職』、そしてそれらとは別の系統の技能用の『特殊職』に分類される。


 また技能とは関係なく、戦闘時のポジションで『近接職』や『後衛職』、攻撃の種類から『物理職』や『魔法職』、そして戦闘以外の役割として『盾職』や『回復職』、『支援職』などに分類されるのだが、これはプレイヤーが指標として分けているものなので公式によるものではない。


 なお、プレイヤーが就くことができるジョブは、そのプレイヤーが装備している武器や、習得しているアビリティ、そしてステータス値などによって異なるらしい。


 中には特別な条件で就職可能なジョブもあるらしいが、ゲーム開始直後の現状でそれを達成しているプレイヤーはおそらくあまりいないだろう。


 さて、僕の場合は【魔術】のアビリティを習得して、なおかつMPの量がかなり高いから魔法職――いわゆる魔術スキルをメインに活動する戦闘職だ――に就くことはできるだろう。ただ、INTの数値が低いので魔導士みたいな戦闘系のジョブには就けないだろうが。


 また、【調合】【加工】【料理】の生産技能アビリティも習得しているから、その手の生産職にもつくことができると思う。


 まぁ、全ては目の前の彼女がどのような結果を出してくれるかにかかっているのだけど。


 しばらく経ってから彼女は、全ての板を消してこちらの方を向く。


「お待たせしました! 現在、リュート様に紹介できるジョブは次のとおりになります!」


 ナディアがそう言うと、僕の前に大きな透明の板が浮かび上がり、そこには幾つかのジョブが記載されていた。

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