第9話 SSSSランク

「おぉ……! この輝きはSSランク以上のドラゴンか! やはり、君は強運の持ち主だったようだな!」


 ダブリスはかなりテンションが高まったのだろう、声の高さが1段階高くなっているような気がする。


 流石にあの運の数値で低ランクだと困るのでありがたい話ではあったのだが、それにしてもまさかSSランク以上のドラゴンが出てくるなんて流石に想定していなかった。出てもSランクくらいだろうと思っていたからだ。


 更に光の柱の様子は奇妙なことになる。虹色の輝きに飽き足らず、白と黒の雷鳴が迸るようになってきた。


 ……おかしい。こんな演出、ベータテストで見たという話は聞いていない。


 気になってダブリスの方を見ると、彼も見たことのない物を目の当たりにしたという様子で呆然としている。


 これは、何となくだがと推測できた。


「――フハハハハハハ!」


 やがてその光の柱の中に薄らぼんやりと影が浮かび上がっていく。その大きさはこの演出の割にはかなり小さい。普通に人間サイズ――というよりも完全に人間と同じ姿をしているように見える。


 そのシルエットの主は光の柱の中で何やら偉そうな高笑いを上げている。その声そのものは若い女性のような声だった。


「喋った……?」


 潤花の話では喋るドラゴンは見たことがないらしく、ベータテストで確認された最大ランクのSSランクドラゴンも喋ったという話は聞いたことがなかったらしい。


 まぁ、このドラゴンはSSランクよりも上のような演出だったので喋ってもおかしくないのだが、ダブリスの様子がどんどんおかしな状態になっていくので、おそらくはかなり異常な光景なんだろう。


 やがて光の奔流が収まっていくと、儀式が始まる前に召喚石が置いてあった場所には1人の少女が立っていた。


 その少女は背の高さ的には僕とあまり変わらず、絢爛豪華な白と黒と赤の色を用いたドレスアーマーに身を包み、その両手は真っ赤な鱗に包まれ、鋭い爪が伸びている。


 顔はかなり可愛らしい容貌をしており、銀色に光り輝く眼がじっと僕の姿を見つめている。


 燃え上がるように光り輝く紅い髪はかなりの毛量で、腰まで伸びている程であった。


「ふむ。中々面白い匂いがすると思って呼び出されたが、これは想定以上だの」


 その少女は僕の姿を品定めするかのように見つめた後に、ニンマリと笑みを浮かべてそう言い放つ。


「えっと、君は――」


「うむ、良くぞ聞いてくれた! 妾の名は【龍閃姫りゅうせんき】ルヴィア! 偉大なるブラッド・ドラグーンが一体にしてSSSSクアッドエスランクの誉れ高き龍姫である!」


 ドドンという擬音が後ろから聞こえそうな勢いで自己紹介を繰り広げた少女、もとい龍閃姫ルヴィア。


 しかし、聞き間違いでなければおかしなことを言っていたような気がするのだが。クアッドエス? えっと、クアッドって確か4つって意味だったよな? つまりSが4つだから……。


「な、なんと……まさか私が生きているうちにSSSSランクのドラゴンを目の当たりにすることができるとは……」


 ふと横を見るとダブリスが神々しい物を見つめるような勢いでルヴィアに対して拝み倒していた。


「えーっと、もしかして凄い感じです?」


「凄いも何も! 少なくともこの召喚の儀式でSSSSランクのドラゴンを呼び出したのは前代未聞だ!」


 えぇ……。マジかぁ……。


 ダブリスの説明によれば、それまでSSSSランクのドラゴンは歴史書の中でも極稀にしかその姿を見せないと記されているらしい。一応、確認だけはちゃんとされているみたいだ。


 取り敢えず彼女のステータスを確認させてもらうことにした。


 ――――――――――――――――――


 【龍閃姫】ルヴィア レベル:1


 種族:ブラッド・ドラグーン

 ランク:SSSS

 属性:火・光


 HP:280/280

 MP:20/20

 SP:120/120


 STR:120

 ATK:120

 VIT:120

 INT:120

 MIN:120

 RES:120

 AGI:120

 DEX:120

 LUK:120


 ALL STATUS:1500


〈アビリティ〉

【血統因子】【龍姫】【威圧】【魔力鎧装】【魔力阻害】【常在戦場】


〈スキル〉

『ドラゴンブレス』


〈アーツ〉

『闘気外殻』『俊足』『ブラッドクロー』


〈装備〉

・スロット1:なし

・スロット2:なし

・スロット3:なし


〈龍覚醒〉

【???】:未解禁


 ――――――――――――――――――


 MP以外、かなり高めのステータスだ。総合値が僕らプレイヤーを越している。


 アビリティもベータテストで判明していたSSランクドラゴンでもデメリット合わせて4つしか覚えてなかったのに、6つも覚えているのだからその性能の高さを物語っている。


 しかも、ベータテストの段階で一部のドラゴンにしか確認されていなかった『龍覚醒』まで持っている。まぁ、当時からまだ使えないもののようだったので、どのようなものかは分からないのだが。


「……えっと、これ大丈夫なんです? 強すぎてなんか偉い人に色々言わたりしれません?」


「ハハハ……。さっきも説明したが、どれだけ強力なドラゴンと契約しようとも、我が国の国王にも他の有権者にも、君ら来訪者を束縛する事は出来んよ。それが龍神様との盟約だからな」


 心配になってダブリスに聞いてみたが、ひとまず問題はなさそうである。


 龍神――いわゆるこの世界の管理者から、この世界の人々は来訪者には余計な手出しは無用という風に言われているらしい。


 かつてそれを守らなかった国が来訪者を束縛し、自分たちの都合のいいように扱おうとした結果、天罰を下されて国そのものが滅びたと言い伝えられている程だという。


 過去の話なので、おそらくは僕らプレイヤーの事ではなくゲーム内での設定なのだろう。


 取り敢えず、そこまで心配しなくて良さそうだと分かって一安心する。

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