第5話 ステータス値決め
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「う、うーん……」
これはまたかなり偏ったステータス値だ。MPとLUKが著しく高く、他はDEXが高めといったところか。
その他のステータスは20から40とかなり低めになっている。
だいたい均衡に割り振ればどのステータスも80くらいになるので、この低さはある意味では異常だろう。
深層心理を参考にしたので、それが本人が本来願っているステータス値であることには違いないのだが、当然ながらそれが納得できるものになるかといえばそうとは限らない。
そういった場合はプリセットで用意されているステータス値を使用することで対策可能だ。精神データのステータス値を選んだからといって、プリセットのものに変更できないわけではないので、それぞれのステータス値をしっかり見比べてから選択した方がいいだろう。
因みにプリセットから再度精神データのステータス値を選んだとしても、その数値に変動はない。
しかし、せっかくならこの数値を活用してプレイしたいというプレイヤーも少なからず存在するだろう。他のプレイヤーと元が違うというのはそれだけで十分な差別化ができるからだ。
そういったプレイヤーに対して、求めるジョブにつくための救済要素がないわけではない。……まぁこれを救済というのかどうかはその人の感性によるのかもしれないが。
『追加でステータス値を200まで割り振ることが可能です。本決定するまで何度でも振り直し可能です。決定すると、基本ステータス値も変更不可になります』
あくまで算出されたステータス値は変更できないが、そこにステータス値を追加することである程度は自分の望み通りのステータス値を組み上げることができるようだ。
この機能はベータテストの時には無かったようで、その時には最初から1100ポイント分のステータスポイントが割り振られて変更できなかったらしい。1100ポイントだったのは、ベータテストの時はLUKがなかったので11項目での割り振りだったからである。
潤花は割と希望通りのステータス値だったら良かったらしいが、ゲーム中に知り合ったプレイヤーの中には全然やりたくない魔法職をステータス値的にやらざるを得ない人も居たらしい。
まぁ、本サービスからはやりたいジョブに合わせてプリセットのステータス値を選んでおけばそういう問題もなくなるが、やはり差別化はしたいというプレイヤーも多いだろう。
まぁ、そういう人にとっては確かにこの追加割り振りは救済措置ということになるのだろう。
また、精神データのステータス値で納得していても、そのステータス値の長所を伸ばしたり、短所を補ったりすることで、更に個性的なステータス値にすることが可能となる。
この200のステータス値を目当ての箇所に全て振るような『極振り』にでもすれば、それだけでも他のプレイヤーと比べて、その項目の数値がかなり高いことになるだろう。まぁ、この仕様の時点で本当の意味での極振りになるプレイヤーは居ないだろうが。
僕としても、全く戦闘能力が無い――というのはまぁなんとかなるとして、防御性能が全く無かったりするというのは困るので、その辺りにステータス値を割り振ることにする。
そもそも、均等に割り振ったところで一つあたり20程度しか上げられないので、そうなると満遍なく上げたところで上昇値はたかが知れているだろう。
なので、ここは目指しているプレイスタイルも考慮して攻撃面のステータスは切り捨て、VITとMIN、そしてAGIをそれぞれ50ずつ上げることにした。防御面もだが、移動速度もある程度は必要だろう。
残りの50は長所を伸ばすということでDEXに割り振ることにした。MPは割り振る必要もないくらいに高いので、わざわざ追加する必要もないだろう。それなら次に高いDEXを上げても問題はない筈だ。
因みにLUKだけは何故か追加でステータス値を割り振ることが出来なかった。確率に関わってくるので下手に弄れないのだろうか。それならばベータのときと同じように無くてもいいと思うのだが……。
そして、最終的に僕の初期ステータス値は次のようになった。
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『ステータス値の割り振りを確認しました。では、次にあなたのアビリティを選択してください。分からない事があれば気軽にご相談ください。貴方に最適なものをご提示させていただきます』
女神がそう告げると、今度は僕の目の前に一冊の本が出現する。どうやらこの中にアビリティが記載されているらしい。その中から選べという事なのだろう。
アビリティとは、プレイヤーがゲーム中に習得する事ができる技能や効果の事で、アビリティがあることで特定の動作が行いやすくなったり、その効果に補正を与えてくれたりする。
習得自体は幾つでも出来るが、実際に効果を発動するのは編成メニューでセットしたものになり、全部で10個のアビリティをセットすることができる。
ここではその必要な10個のアビリティ全てを選ぶことができるようだ。
その種類としては大まかに次のとおりになる。例によって女神の説明付きだが、簡略する。
ステータス値そのものを向上させる『ステータスアップ系』。
戦闘技能や生産技能、その他の特殊技能に対して補正を与える『技能系』。
アイテム入手数や、受けたり与えたりするダメージ量に関する効果を与える『効果系』。
そして、特別な効果を追加する『特殊効果系』。
だいたいこれらのカテゴリーに別れている。他にも種類はあるようだが、残念ながらそこまでは記憶していない。
「えっと、確か技能系は戦闘用のを必ず1つは選択しなきゃいけなくて、ステータスアップ系は最大4つまで選べるのか。それで、同じアビリティは選択不可、と……」
僕は始める前に潤花とどのようなアビリティにするかをあらかじめ相談していたのだが、それはあくまでベータテストの段階のものだったので、こうして実際選べるアビリティを見る限りだと、全く同じような構成にすることはできなさそうだった。
理由としては現時点のステータスがそのアビリティの習得条件を満たしていない場合があるからだ。例えば習得しようと思っていた【鷹の目】は、DEXとAGIの両方が100以上が条件なので習得できなかった。結構、このアビリティって必要なステータス値が高いんだな。
そもそも、僕はあまりこの手のゲームには慣れていないし、体を動かすのも正直苦手な方だ。取り敢えず近接戦闘の技能アビリティを習得しても、モンスターと戦うのもおそらくはかなり苦戦することだろう。
なので潤花と話し合った結果、僕は自身の契約ドラゴンやパーティーメンバーをサポートする支援系の構成でアビリティを選択するということにしていたのだ。
従来のMMORPGならソロプレイになるとほぼ必ず自分自身が戦わなければならないため、ある程度戦える構成にする必要があるのだが、このゲームに限っては『必ずパートナーとなるドラゴンが存在している』ため、最悪そのドラゴンに戦闘を任せてしまっても問題ないのだ。
因みにドラゴンは、召喚するのにコストとしてそれなりのMPを消費するので、常に召喚しっぱなしが理想ではあるのだが、基本的にはドラゴンに常時召喚系のアビリティが無いと召喚し続けることは出来ず、戦闘中なら戦闘終了後、通常時やイベント戦闘時だと一定時間経過後に自動的に送還されてしまう。
常時召喚系のアビリティには、体格を小さくすることで消耗するエネルギーを減らして顕現し続けるという設定の【セーブモード】やそのものズバリな【常時召喚】などがベータテストの時には存在していた。
いずれもプレイヤーではなくドラゴンが覚えている必要があるので、同じ名前のアビリティが例えここにあったとしても、それは全く違う効果となっている。残念だ。
因みにそれらのアビリティをドラゴンが覚えていたとしても、市街地エリアなどNPCが暮らすエリアなどでは自動的に送還されてしまう仕様になっている。その対象外はドラゴンが人間大かそれ以下のサイズであるか、さっきも触れた【セーブモード】を習得しているかのどちらかとなる。
まぁ、ドラゴンのアビリティはドラゴンの召喚の際にまた触れるとして、今は自分のアビリティ選択を早くしないといけない。
その後、女神に質問を投げかけたりしながらしばらく考えた結果、なんとか僕は自身のアビリティを選択する事ができた。
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