第13話 落第勇者、この世界の異変に気付く②
俺はご飯を食べて早めに部屋に戻るとパソコンを立ち上げる。
理由は先程も言ったように日本でなにか不可解なことが起きていないか調べるためだ。
あんなショッピングモールなんて言う大勢が集まる場所に出現するぐらいだし、何かしらの目撃情報や科学では説明できない事件が起こっていてもおかしくない。
それが分かれば目撃情報とかが一番多い所に行けば何かしらの手がかりが掴めるかもしれないからな。
もし遠かったら……学校は休むか。
これは家族のためなので学業くらいは後で取り戻せばいい。
と言うか、今行った所で全く授業について行けてないので意味が無いとも言えるが。
「さて……どんな事が起こってるかな……」
怪奇現象や摩訶不思議な未解決事件などを調べていく。
勿論俺の家の近くの目撃情報なんかも隈なく調べてみるが――
「……全然ない……。幾ら何でもこんなに少ないのってあり得なくないか?」
だってあんな目立つモンスターが道路とか通ってたら普通に通報もんだぞ。
俺がただの一般人なら直ぐに警察とかに連絡するし、写真も撮る。
それにもし見つかったらほぼ間違いなくこの世界の人間なら殺されるからな。
ゴブリンでさえ、この世界の格闘技の世界チャンピオンとまでは行かなくてもプロくらいの強さはある。
「なのに何も無いと言う事は……いや殺されているから目撃者がいないのか?」
確かに僅かなら可能性もあるかもしれないが、スマホを復元したら1つくらいは余裕で見つかりそうな気がするんだが。
それでも全く目撃情報がないということは現実的な可能性として、俺だけしか見えないか、俺以外に討伐する者がいて、敢えて情報を規制しているかの何方かだな。
まぁ可能性としては若干前者の方が高そうだ。
だって俺、多分世界唯一の異世界転移経験者で記憶やスキルまで持っているし。
明らかに普通の人間じゃないもん。
だが後者も無きにしもあらずって感じだな。
政府とかが関係しているかもしれないし、もしかしたら俺の他にも異世界転移経験者がいるかもしれないし、その人の子孫は代々スキルを継承するとかももしかしたらあるかもしれない。
もしそうなら俺はスキル使わないほうが良いまでもある。
スキルにはスキルの発動を感知するスキルもある。
俺の感知もその1つだ。
まぁその代わり此方も発動中じゃないと気付けないって言う欠点もあるが。
俺は更にインターネットの記事や新聞を調べて行く。
すると俺の目に1つの記事が写った。
「『出現する異能者』……?」
基本インターネットの情報はこういう時は殆どがデマだが、俺は無性にそのタイトルが気になってしまった。
今まで全くそう言った類の情報がなかったのに、いきなり出てきたからだ。
諦め半分で試しにクリックしてみる。
「えっと……何々?」
『このページは全て本当のことです』
「早速嘘くさいな……やっぱりデマだったか?」
俺はそんな気持ちになるが、まだ序盤も序盤なのでもう少しだけ読み進めてみようと思う。
『最近何か貴方の周りでおかしな事がありませんでしたか? 又は自分が実際に不思議な出来事にあったなど。
このサイトはそんな貴方の悩みを解決するためのものです』
「…………読むの辞めるか?」
あまりにも嘘臭くなって来たためスワイプの手を止めてしまうが、まだ我慢我慢。
しかしその次の文章に俺は目を瞠ることになってしまう。
『胡散臭いとお思いになるでしょうが、取り敢えず私の話を聞いてください。
最初に言っておきますと、私は――異世界転移経験者の孫であり、現異能者の1人です。
異世界転移には私の祖母が遭っており、祖母が言うには「私は高校2年の夏にクラスの生徒と転移させられ、魔王を倒す勇者となりました。
そして魔王を倒し帰ってくると、現実では1年が経っており、私だけ記憶を引き継いでいましたが、スキルはありませんでした」と言っていました。
そして祖母が祖父と結婚して出来た子供に、何と祖母が持っていたスキルの下位互換にあたる異能が発現したそうで、孫である私にも親と同じ異能、【探索】が受け継がれています。
これである一定の人は信用出来たと思います』
「――――――は?」
自分の口から思わず呆けた声が出てしまう。
まさか先程自分の予想していたことがドンピシャで当たってしまった事と、その異能の名前を聞いたことがあった事で、少しの間スワイプすることも忘れて放心してしまった。
しかし直ぐに意識を取り戻して、パソコンの画面を食い入る様に見つめる。
いや確かに俺の他に異世界転移者居るかもなぁとか思ってたけどさ、幾ら何でもこんなに類似してることなんてあるのか?
だが俺は実際に召喚された目的は一緒なわけで……。
「……何でこの記事此処で終わりなんだよ……」
先が見たいのに何故か記事はそこで終わっていた。
最後に編集されたのは今から3年前。
記事の文面からしてまだ続きが遭ったはずだ。
それなのに3年間も更新がないとしたら、もしかしたらこの記事の人に何かあったのかもしれない。
「クソッ……他を当たるしか無いか……」
俺は尾を引かれながらも泣く泣くその記事を閉じた。
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