第14話 落第勇者、剣を手に入れる
「……結局それ以上の収穫は無しか……」
俺はパソコンを閉じて背もたれにもたれ掛かる。
あの異世界帰還者の孫のサイトは、結局あれ以上に目を引く物は無かった。
後はグダグダとよく訳の分からない事を延々と話していただけ。
強いて言えば、この世界には異能者がある程度の数いると言うことくらいか。
まぁ1人いたら何人かはそりゃあ居るだろうよ。
俺的にはもっと祖母の話をして欲しかったのだが、もう既に他界しているらしく、詳しい事はもう分からないのだとか。
なら書くなよと思わない事もないが、自分以外にも確かに異世界転移経験者がいる事が分かっただけでも十分だろう。
そして異能者ね……。
「なら俺もスキルの使用は控えないとな……」
特に感知はスキルを感知できる奴からしたら1番簡単に分かってしまう。
結構な範囲で発動させるから、身体強化よりもバレる確率が高い。
「でも使わないと行けない時は使わないといけないんだけどなぁ。――ッ!?」
俺がうんうんと唸っていると、ふとピリッと殺気を感じた。
少し眠たくなっていた意識が一気に覚醒する。
くそ……使うのを遠慮しようとした瞬間に何で殺気なんて物騒な物が飛んでくるかな……。
もしかしたら普通の殺人犯かもしれないし……ああもう、【感知】使うしかないじゃないか。
俺は部屋からこっそり出て玄関の靴を持ち、再び部屋に戻ると、窓から外に飛び出す。
そして感知を発動。
何と自分の家の半径200m内に殺気ではないものの、不思議な気配を感知した。
それには魔力が宿っており、何かヤバそうだ。
俺はその場へと直行。
もし異能者が居るのなら待ってみようかと思ったが、もし来なかった時に家族に危険が出ない様に、俺自ら対処する事に決めた。
その場へと着いた時には、そこにはまさしくファンタジーな光景が広がっていた。
公園の真ん中の空間に亀裂が入っている。
その亀裂に警戒しながら近づいて中を覗いてみると、そこは漆黒に染め上げられていて何も見えなかった。
「何なんだこれ……いきなり現れたと思ったら何も起きないし……」
なんてフラグ的な事を言ったのが行けなかったのだろうか。
亀裂からゴブリンの気配を感じたと思ったら、いきなり俺の前に出現した。
隠れようにも既にバッチリ目があったので不可能。
何なら今向かい合ってるし。
そのゴブリンは先程のゴブリンと比べて体長は小さくなって俺と同じくらいだが、その威圧感は先程よりも強く手に大剣を持っている。
そのゴブリンは俺のよく知る種類で、名はゴブリンキング。
ゴブリン種の中では最高峰の実力を持っている大将的存在だ。
ついさっき会いたくないと言ったんだがな……!
「【身体強化:Ⅲ】」
強さの指標はB級最下位だが、普通にトラックくらいなら吹き飛ばすので、あの強さはこの世界の人間では絶対に太刀打ちできない。
なのでここは俺が何とかしないといけないということだろう。
どうせ見つかっているし。
俺はゴブリンキングの振るう大剣を周りに被害が出ないように白刃取りで受け止める。
相変わらず凄まじい力だ。
お陰で地面が陥没しそうになったじゃないか。
全身を使って何とか道路が陥没するのは防げたが、少しアスファルトにヒビが入ってしまった。
「でもそんな相手は剣持ってるのに俺は素手って……ハンデありすぎだよな。俺も剣があれば良いんだけど」
俺は異世界で使っていた愛剣――破壊剣を思い出す。
破壊剣は魔剣の一種で、等級的には聖剣にも劣らない名剣だった。
しかし破壊剣には扱う者への試練があり、俺は精神を破壊されそうになったが、何とかクリアして晴れて俺の所有物となった。
その際に契約をしたのだが、俺は別世界に帰還したのでもう契約も切れているかもしれない。
「一応呼ぶだけ呼んでみるか? まぁ来なかったら来なかったで残念だったと思うことにしよう」
俺は力ずくで大剣の軌道をずらし、その内に一旦距離を取る。
「《我が手に絶対なる破壊を。来い――》【破壊剣】」
俺は手を前に
しかし何秒か経っても何も起きない。
その間にもゴブリンキングは俺に向かって駆け出しており、防御態勢を取るしかなかった。
「やっぱりだめか……」
そう思った瞬間――
『我が所有者の所在を確認。異世界転移を開始する。待っていろ、我が主』
「――ははっ、相変わらず偉そうな相棒様だ」
俺はその言葉が頭に響くと同時に、剣を持っているように振りかぶり、渾身の力で振り下ろす。
そして――
「さぁお出ましだ。来い―――破壊剣!!」
『待たせたな主よ――』
俺の手にいつの間にか黒い剣が収まっていた。
その黒い剣で俺はゴブリンキングを真っ二つにし、跡形もなく消滅させる。
「はぁ……終わったぁ……」
俺はもう一度【感知】を使って他に居ないか確認した後、身体強化を解除する。
既に亀裂は跡形もなく綺麗サッパリ無くなっており、結局モンスターがそこから現れるということしか分からなかった。
そして自分の右手に握られている剣を見て呟く。
「―――これどうしよう……」
この国で剣なんて持ってたら銃刀法違反だし、見つかれば絶対取り上げられる。
そうなった場合が1番面倒くさい。
破壊剣は自身が認めた者以外に触られることを極度に嫌い、触れば精神攻撃をするため、この世界の一般ピーポーだったら確実に廃人になってしまう。
それだけじゃなくて直ぐに自らの命を断とうとするかもしれない。
そうなったら俺は犯罪者だ。
俺は平穏に人生を過ごしたいだけなんだけどなぁ……。
もう既にそれが叶わない所まで来ていることをまだ隼人は知らない。
そしてそんな隼人に接近して来ている何者かがいることも。
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