第11話 落第勇者、元勇者と遊ぶ
俺は駐車場から急いでゲーセンに戻るが、そこには既に宮園の姿は見当たらなかった。
もしかしたらゲーセンの中かもと思い探してみるも中々見つからない。
「やっぱり待たせすぎたか……?」
「―――何が?」
「うおっ!?」
俺が【感知】を使って探そうとした瞬間に後ろから声をかけられる。
また自慢の裏拳が出そうになるも、今回はギリギリの所で行動に移す前に止めることが出来た。
俺は無駄に冷や汗をかきながらも振り返って話しかける。
「ど、何処に居たんだよ……」
「貴方が遅いから私もお手洗いに行っていたの」
そう言って「貴方のせいだからね」と付け足す宮園。
明らかに怒ってそうな雰囲気だ。
その証拠に少し眉間に皺が寄っている。
まぁそりゃあ怒って当然か……長い間待たせたのは俺なんだし。
「ご、ごめん……」
「……別にいいわよ。さっさと材料と道具を買ってから帰りましょ」
そう言う宮園だが、顔に『不服です』と書いてあるかの様にむくれていた。
そのため禄に話も続かないまま時間が過ぎる。
結局買い出しが終わるまでずっと機嫌が悪そうだった。
何とかこの顔を元に戻せないだろうか……ずっとこのままとか気まず過ぎるだが。
でもコイツがどんな事が好きかなんて分からないんだよなぁ……取り敢えずもう一回ゲーセン行くか。
「な、なぁ宮園」
「……何?」
取り敢えず俺の言葉に反応して此方を向いてくれるが、やっぱり睨まれた。
宮園は元々目つきが鋭いので余計怖く見える。
「……今からもう一回ゲーセン行かないか?」
俺がそう言うと、宮園は少し驚いた様に目をパチクリと瞬かせた。
「はや―――藍坂君は直ぐに帰りたかったんじゃなかったの? 一体どう言う風の吹き回し?」
「まぁ何と言うか……さっきは楽しそうだった所に水を差して悪かったなぁと」
「別にそんなことなら気にしなくてもいいのよ?」
なら何でさっきまであんなに機嫌悪そうな顔してたんだよ。
女の――特に年頃の女子は扱いが面倒と聞いたことがあるけど、本当に面倒くさいな。
勿論そんな事は思っても絶対に口にも顔にも出さないが。
「……俺が行きたくなったんだよ。それにお前とプリクラを撮る約束をしたからな」
「藍坂君がそこまで言うなら行きましょうか。私、猫のぬいぐるみが取ってみたかったの。別にプリクラが撮りたい訳じゃないから」
「なら撮らなくてもいいのか?」
俺的には撮らない方が、自分の身の事も考えたらメリットが多いんだが。
だってあんなのバレたら家でも学校でも質問攻めに遭うに決まってる。
後普通に恥ずかしいので出来れば撮りたくないのだが……
「いやちゃんと撮るわよ。だって約束だもの」
そう言って宮園が楽しそうにゲーセンのある方に歩き出したので、まぁ機嫌が治ったから良いか、と自分を無理やり納得させて後を追った。
「(やったわ……隼人君とプリクラ……)」
俺は宮園の後ろに居たため、小さくガッツポーズをしていた宮園に気付くことはなかった。
再びゲームセンターに戻ってきた俺達は、まず猫のぬいぐるみが取れるクレーンゲームをすることになったのだが……
「……俺達下手くそ過ぎだろ……」
「これは予想外だったわ……」
俺達は何方もめちゃくちゃクレーンゲームが下手くそだったのだ。
初めは宮園が挑戦し、3回やっても全く取れなかった事により俺が代わりにやることになったのだが、俺も初挑戦の宮園に負けず劣らずの下手くそ具合で全く取れる気配がしなかった。
「……俺達にはまだ早かったのかもしれん」
「そうね……今度はしっかり練習してからやることにするわ」
と言う事でクレーンゲームを諦めた俺達は、代わりにゾンビを殺すシューティングゲームをする事に。
このゲームは3Dのメガネを掛けてするゲームで、ゾンビの結構グロかった。
だが俺は異世界で何回もゾンビのような
しかし宮園は違うらしく……
「はわっ!? ちょ、ちょっとそれはずるいんじゃ―――きゃあああああ!!」
いきなり出てくるゾンビに驚き、銃を乱射していた。
まぁでも才能があるらしくただ迫ってくるゾンビには動じず速射してたが。
「いやー結構楽しかったな。俺達店内順位1位だったぞ」
「そ、そうね……結構楽しかったわ」
「てか全然怖くなかったな」
「……ええ」
肯定する宮園だが、思いっ切り目を逸らしていた。
此処でからかってやろうかと思ったが、機嫌を悪くされては困るのでやめることにしよう。
「…………それじゃあ帰るか」
「まだよプリクラ撮ってないわ」
チッ……やっぱり忘れてなかったか。
忘れてたらそのまま帰ろうと思ったのに。
「……分かった。その代わりこの事は誰にも言うなよ?」
「良いけど何故?」
それは貴方が学校でも有数の美少女だからですが?
そのせいで殺されるのは俺なんですよ。
「……主に俺が安全安心な学校生活を送るため」
「?? それと言わないのに何か関係があるの?」
「あるに決まってるだろ。お前は学年一の美少女の片割れだぞ? お前みたいな美少女とプリクラを撮ったと言ったら男子が何をしでかすか……」
俺は質問攻めに遭った後に折檻されるのを想像して身震いする。
ウチの学校って癖が強い奴が多いからマジでヤられかねないんだよな。
しかしそんな俺の状態が面白かったのか、宮園が口元を抑えて笑いだした。
「ふふっ。そうね、それは言わないほうが良いかもしれないわ。――じゃあ行きましょうか」
そう言って楽しそうに俺の手を引きながらプリクラに向かう宮園には、流石の俺も何も言うことが出来なかった。
——————————————————————————
フォローと☆☆☆よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます