part10

 飼育小屋から校舎に続く舗装ほそうのど真ん中で、ヒュウガは呆然と立ち尽くし、飼育小屋に戻るミオたちを眺めていた。

「……終わっちゃったじゃん」

 間の抜けた声を漏らし、ガッカリした顔で手にしたピンを見る。

「せっかく強化アイテム用意してきてやったのに、何なんだ、あの野郎は」

 新たにこしらえたピンの力を測れなくなり、ヒュウガは頭を抱えた。

 飼育委員は、現状ヒュウガが準備できる最高戦力の当て馬だった。風紀委員ピンの力を持つジュンセを程よく追い詰め、そこへ新戦力を投入してそのデータを得るのがヒュウガの目的で、ジュンセの奮起はハッキリ言ってついで、やる気が出ればいいだろう、くらいのテンションであり、飼育委員の揉め事も知った事ではないつもりだった。

「どうしたもんかな」

 言葉の割には、機嫌の良さそうな表情をして、ヒュウガは周囲を見渡した。

 すると、少し離れた場所に設置されている自販機の陰に、赤い制服の女子生徒を見つけた。

 昼休み、ジュンセと共にいた女子だとヒュウガは気付く。

 女子生徒、リアは、飼育委員が戻るのを見届けると、ジュンセを追い掛けるべく動き出した。

 勢いのある躍動やくどう感に、ヒュウガは物珍しさを覚え、口角を吊り上げる。

 それはまるで、新しい遊びを閃いたような、活気に満ち溢れた表情であった。

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