業務改善には終わりがない
第十八話 現地の文化は奥が深い
今日は、和田さんの下で働いてくれる事務方探しのために、朽木の爺さんと会談の予定。
和田さんは、父である先代将軍
ただ困った事に、忍びは武士の埒外に置かれているため、この時代の風潮で下に見られてしまっている。
身分制度を重視するような良い家柄の人たちを和田さんの下につけても、碌なことにならない。
和田さんの下でも、真面目にお仕事に取り組んでくれる事務方が必要だ。
そんでもって計算も出来たら文句ない。
幕府にはいない人材だから、現地採用をしようと考えたので、この地の領主の祖父であり、橋渡し役でもある朽木の爺さんにお願いする事にしたのだ。
爺さんには、あらかじめ話を通してもらって都合をつけてもらっている。
話を聞きたいのは俺の方だから、朽木の爺さんの屋敷に行こうかと思ったんだけど、藤孝くんにそれだけはやめてくれと、結構マジな顔で止められたので、断念した。
今は屋敷で時間を潰している。
朽木の爺さんこと、朽木
俺が第十三代だから、かれこれ四代の将軍のために働いてきたということになる。
その歳で良く働くな、爺さん。年齢不詳だけど。
現代なら定年退職する年齢は過ぎてるはずなのに、まだ元気に槍を振ってらっしゃる。
あの体付きも納得である。俺も槍でも振るかな。
俺も、というか義藤はこの時代に珍しく背が高い。
鍛えれば良い体付きになりそうな骨太な感じだけど、食うものは野菜が基本で、たまに干魚が付けば良い方。
これじゃあタンパク質が足らなくて肉が付きにくい。
むしろ服部くんとか朽木の爺さんはどうやってあの肉体を作り上げたのだろうか。
聞いてみたいが、残されているであろう選択肢のタンパク源には地雷が含まれていそうで踏み込めない。
ここは大人しく畜産事業を稼働させて肉食を推奨しよう。
文化がないところに文化を根付かせるのが商社の仕事だ。肉食文化も頭を捻れば浸透させられるだろう。
そういえば、畜産で思い出した。
現代では牛、豚、鶏と一般的な構成だが、この時代では全く違った。
まず学校でも習うが、牛や豚は食べない。
そして鶏なら大丈夫だろうと頭の中で計画を進めていたのだが、大問題が発生。
牛ならまだしも鶏を食うのは、あり得ないらしい。
鶏は神聖視されていて、検討にも値しないとのこと。
卵も生命の源ということもあり、これもダメ。
現代で安い肉と言えば、鶏肉という印象だったから、これには困った。
肉も卵も貴重な栄養源だが、畜産事業の初手には持ってこれない。
鳥自体はよく食べるらしいのだが、鶴や雉、
兎も一羽二羽と数えるように、鳥という扱いにして食べているようだ。
他に獣肉では、狸、鹿など。
そもそも基本的な風潮として、肉食文化は発展していない。
むしろ公家連中なんかは殺生を嫌って肉自体食わないようだ。ギリで鳥まで。
でも魚はオッケーなんだと。足が無いのは良いんだとか何とか。牛や豚は四つ脚だからダメ、鳥は二本脚だからギリ。
現代人の俺からすると良くわからん。そういう物だと思うしかないだろう。
分かる分からないは置いといて、現地の風習として受け入れれば良いわけだし、無理に公家連中に肉を食わせる必要もないから、そこは放置の予定。
庶民やそこらの大名までくらいなら肉は食う事に、さほど忌避感が無く、どちらかというと薬喰いとして滋養強壮になるのを体験的に察しているようだ。だから身内の兵や武将たちで美味しくいただけるようになれば良いと思う。
さて、畜産業で進めていく動物はどうしよう。やっぱり兎か猪が無難かな。
どっちも山で獲れる動物だから、手軽に始めやすい。
やるだけやってみるというのも可能だが、そこでの懸念は飼料。
戦続きの戦国時代では、食料は貴重だ。
ましてや、今の幕府は朽木谷の人々のご厚意によって食料を分けてもらっているのだから。この間、六角からの支援金でお金は払ったけど、山間の村に食料の余裕はない。
食わせる物も考えて、育てる動物の選定をしないとな。
まずは
それならそこまで負担にならないだろうし、仔を産んでくれれば御の字だ。
忍び火薬の製法があるから、あれから効率的に製造できそうだしな。
和田兄妹には感謝だ。今度何かプレゼントでもあげよう。
朽木谷は山間の村だから、猟師の人も多いはず。罠で捕まえてもらうのもそんなに無茶ではないと思う。
兎ならまだしも、生きたままの猪を運ぶのは危なそうだけど、服部くんや猿飛弥助がいれば、きっと大丈夫な気がする。忍者の安心感すごい。
せっかくだからこの後の事務方の募集の話とともに、爺さんに聞いてみるとしよう。
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