第14話 再びの別離

「お前なんなんだよ!お前なんか家族と認めない!お前のせいでうちの家族はめちゃくちゃだ、お前なんか消えてしまえ!お前なんか・・お前なんか死んでしまえ!」

 怒鳴り声に忘れかけていたトラウマがよみがえり、アリスの体はこわばり震えた。


「ルイス!あなたなんてことを!」

 マルティーヌは悲鳴のように叫びアリスをさらに強く抱きしめ、エルネストはルイスに走りよると両肩をつかんだ。

「お前は何を言ってる!どうしたんだ?!」

「皆おかしいよ!こいつ父上のことも母上のことも嫌ってるじゃないか!僕たちのこと家族なんて思ってない!なのに・・なのにどうしてこんなにちやほやしなきゃならないんだよ!」

 ルイスは唇をかみしめてアリスをにらむのを止めない。


「やめなさい!アリスは・・・アリスはつらい目に合ってるの。」

「何時もアリスアリスアリス!辛いのはこっちだよ!!僕がどんなに頑張ったって、アリスのことばっかり!僕を見てくれたことなんかないじゃないか!僕の方がいらないなら僕を捨てればいいじゃないか!!こんなやつ・・・こんなやつなんか!」

 ルイスの魂の叫びに公爵夫妻ははっとした。

 アリスを思う気持ちが強すぎたことは否めない。だからと言ってルイスをないがしろにしたことなどなかった。

 それでも休みのたびにグランジェ家を訪問し、自宅でもアリスにどうしてやればいいのかと悩み、涙する両親に寂しい思いをずっとしていたのだ。

 それなのに、アリスはそれを受け入れることがなく、両親を傷つける態度ばかりで許せなかった。


「・・・そうね。そうよ、私は家族ではありません。前も・・・今回も。だから安心してください、シルヴェストル公爵令息。もう二度とお邪魔しないと約束いたしますわ。」

 アリスは母から離れるとイリークのそばに立ち

「シルヴェストル家の皆様、これまで私に心を砕いていただきありがとうございました。私のことはもうお忘れになってください。申し訳ありませんでした」

 と頭を下げた。

「そんなこと言わないで!アリスは私の娘よ!私たちが悪いの。ルイスのことは許してあげて!お願いアリス。行かないで」

「お母様・・・いえ、公爵夫人。ご令息は悪くありません。もう、グランジェ家への訪問を取りやめていただきますようお願いいたします。師匠、おいとましましょう。」

「アリス・・・」


 公爵夫妻は顔色を変えて娘にすがろうとする。やっとここまで関係を築くことができたというのにそれは砂城のようにあっけなく壊れてしまった。

「・・・そうだね。一度お互い離れたほうが良いでしょう。公爵夫妻、今日はこれで失礼いたします。お招きありがとうございました」

 夫妻は懇願したが、二人を引き留める事は出来なかった。

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