第3話 一度目の人生 ~災害発生~
自分はつい先程まで、想像に絶する生活だったのだ。
魔術で災害を頻発させ国家転覆をはかった重犯罪人として3年もの間冤罪で牢屋に入れられ、もうすぐ公開処刑の予定だった。
今おもえばそれほどの重罪人をなぜすぐ処刑しなかったのだろうか、3年もの間、生かしておく理由は何だったのか。
そもそもきちんとした調査は行われたのか。なぜ自分は冤罪をかけられたのか。何もわからなかった。
この世界には7つの大陸があり、その大陸独自に進化していた。ユーラン大陸には人族がすみ、いくつかの国に分かれていた。
我が国ルーナは一部の人間が魔法を使うことができる。遺伝なのか何なのか、貴族や王族にその能力を持つものが多い。貴重な力を持つものは高位のものに婚姻を結ぶ相手として望まれ、それを何世代も繰り返している王族は魔力を持つものが必然的に多くなっていく。
隣国のナーガも人族が治めているが、こちらの国は魔法を使えるものはほとんどおらず技術の発達による文化が発展している。
海を挟んだ国には神や龍、妖精がいると書物に記されているが実際はどうなのかわからない。
ルーナ国では、魔法の潜在的な力を調べるため、6歳で魔力の有無の判定が行われる。一般市民は6歳の学園入学時に、貴族は王宮の一角にある魔術宮に出向き判定を受けることになっている。貴族は爵位により学ぶことが異なるため学園ではなく、一定年齢になるまで家庭教師について学ぶのが普通だからだ。
アリスは6歳で魔力があると判定され、専門的に魔法・魔術を学べる王立学院に通っていた。王立学院は魔術科だけではなく、医療を専門に学ぶ医術科、農業や畜産、酪農など生産科などいくつかに分かれていた。
貴族は家庭教師に学び、一般教養や領地運営、貴族の社交におけるマナーなど獲得したものから王立学院への入学が許された。
ただ、魔術科のみ特殊であり、6歳時の判定テストで魔力を確認されたものは身分やその他の能力問わず即時学院への入学が義務付けられていた。
アリスは家庭教師から教養を学びながら、並行して学院で魔法・魔術を学ぶという忙しい生活を幼少期から送っていたのである。
はじめは手のひらをこすり合わせて摩擦熱を感じ、そこに少し炎を発生させる程度の魔法しか使えなかったのが、学院の担当魔術師イリークの誘導によりぐんぐん能力が伸び、身体を包括する魔力も莫大なものとなり魔術宮にも出入りするようになっていた。もともと魔術宮に籍を置くイリークがそのまま師となった。
アリスが13歳になり、魔法の修練に明け暮れているころ王国の辺境の地で災害が頻発するようになった。大雨による土砂崩れや川の氾濫、かと思えばほかの地では雨降らず作物が不作になったり虫の大量発生による食害が発生した。また大地震に見舞われ、家をなくした人々に追い打ちをかけるように、季節外れの寒波が襲い多くの人の命を奪った。
近代一優秀と言われている国王アルフレッドの指揮の下、迅速で的確な対応により当初は被害を最小限にとどめ、支援も行き届き復旧も速やかに行われた。アリスが所属する魔術宮の魔法士・魔術師たちも復旧のため各地を飛び回っていた。
しかし災害の発生は辺境のみならず徐々に中央にも起こりはじめ、王宮がそびえ立つ中央都市も大雨や疫病がはやり始めた。あまりにもの災害の多発により、人的にも経済的にも余裕がなくなり被害は拡大していく一方だった。
そこに一筋の救いの光が差し伸べられた。
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