~4話~ 剣の行方
剣がない、なぜだ、どうして…
クソ、珍しいものを見つけて浮かれていた。ここはスラムだ
盗みなんて日常茶飯事。そして盗まれるやつが悪いのだ
にしてもなぜバレた?道中で見られていたのか?いったい誰が?
細心の注意を払ったはずなのに…
いや、今はよせ、後でじっくり考えよう
それより剣の行方だ。剣を盗んでどうするつもりだ?
いや、決まっている。金目当てだ
イレギュラーの可能性もあるが、どちらにしろはやく取り戻さねば
いや、待てよ…この跡はもしかしてトラッパーにかかったのか?
「ハ…ハハハっ!とんだ素人じゃねか!」
トラッパーとはその名の通り罠のことだ。地面に敷き、そこを通ったものに
特別な染料をつける。染料は肉眼では見えないがこの眼鏡をつけることで見える
ほら、この通りくっきり。本来トラッパーは狩りをするときに使われるが、
スラムでは空き巣対策としてよく使われる。
だが、よく使われるからこそ盗みのプロはこんなのに引っかかるなんてヘマはしない
つまり剣を盗んだやつはスラムのことを何も知らない、最近来た新入りか外の人間だ
よかった。これなら簡単に剣を取り戻せそうだ、とりあえず足跡を追ってみよう
万が一に備え小型のナイフを持ち、家を出た
足跡を5分ほど追った。道中野犬に襲われたり、自称占い師につかまったりしたが
なんとか見つけた。剣を盗んだのは貴族だった。アランの店にいたあの3人だ
3人の特徴はこんな感じだ
座っているのは短髪で清潔感のある好青年、隣に座っているのがポニーテールの女性
とてもかわいい。そしてその二人の前に立っているのは責任感のありそうな男性
2人より少し老けている30手前ぐらいだろう
しかしこれで辻褄があった。貴族はトラッパーのことなど知らない、
だから引っかかって当然だ。アランには剣についての情報を聞いていたのだろう
剣がスラムにあるのは分かっていたが詳しい場所は分かっていなかったのだ
しかし分からないこともある、わざわざスラムまで来て探すほど剣は貴重なのか
本では一般的だと書いてあったが…まあいつ書かれたものかもわからないし
全てを鵜吞みにするもよくない
そして一番謎なのはなぜ俺が剣を持っていることを知っていたのかだ
まあいい、疑問はすべて問いただすとしよう
「すみません。これ、落としましたよ」
適当に拾った布を渡す
「いえ、それは私たちの落とし物ではないですよ」
反応したのはかわいい女性、ラッキー。そしてやはり俺の素性はバレていない
「それは失礼。おや、なかなか美しい剣を持っていますね」
昔読んだ本の物語で見た言葉遣いを真似しているが、正しいかわからない
だが、動揺すると余計に怪しい。堂々としていればいいのだ
「お、分かるか!この剣は我が家の…」
「ちょっと待て、簡単に事情を話すな」
好青年が話そうとしたところで立っていた男性が止める
「すみません。調子に乗りました…」
ふむ、上下関係がしっかりしている
「なかなか上質な剣とお見受けしました。ですがなぜその様な物をスラムに?」
「…なにが言いたい」
男性がそう言った。空気が張り詰める
「いえ、気になっただけです。気に障ったのなら謝ります」
「そうですか、こちらも失礼をしました。それよりこの後時間はありますか?」
「はい、大丈夫ですが…どうされました?」
「外の世界に興味はありますか?」
当然の言葉に固まった、驚きのあまり声が出ない
「も、もちろんです!」
絞りだした声でそう返事をした
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