第7話 3歳での日常③

…により、この戦いは収められまいた。後日、これをたたえて、国側は彼に報酬として…


ぐうぅ。お腹がなる。

今読んでいた本をバタンと閉じる。


「昼飯の時間だ。」


それと同時に、扉がノックされる。


「入れ。」


使用人が「失礼いたします」中に入ってくる。


「アルナリアお嬢様、アストルムお坊っちゃま、昼食の準備が整いました。」


「ええ。今行くわ。」


アルナがそういうと、使用人は「失礼いたしました」と部屋を出て行った。


「アストの腹時計って下手したら時計より正確だよね。」


「そうか?」


「そうだよ。それを自覚してないっていうのもすごい気もするけど。」


「いやーでもこれを習得すると、時計がなくても、外の様子がわからなくても大体の時間はわかるようになるし。いわゆる『体内時計』ってやつが正確になるんだけどな。」


「なるほど、確かにそれはいいかも…今度習得方法教えてくれない?」


「まぁ、アルナが習得できるようになるかはわからないけど、わかった。」


などと会話をしながら部屋を出て食堂に向かう。

食堂に着くと、もう母さんと姉さんの姿があった。姉さんは基本的昼食にいるが、母さんは暇なときや仕事が休みの日、あと単純に俺らの顔を見たい時に来るらしい。それで仕事は大丈夫なのだろうか。


「「母さん、ベル姉さん、おはようございます。」」

実は一緒に毎日過ごすうちのよく同じことを同じタイミングで言うようになった。別にやろうと思ってやってるわけじゃないんだけどな。


「あらあら、二人とも相変わらず息ピッタリね。おはよう。」


「おはよう。…あーやだうちの妹弟すごく可愛いんですけれども。本当いつか尊死してもでもおかしくないですわこの可愛いさ。」


母さんはのんびりやだ。いつもふわふわしていて、我が母ながらなかなかの美人だ。こののんびりした母さんが王国のすごい研究者だと想像がつかない。


そして姉さんだが…ご覧の通りだろう。最初会った時は貴族自慢ずきの自分のこと大好き人間だと思っていたが、実際はずっと弟か妹が欲しかったらしくて、バカ親の父さんと母さんと下手したら同じくらい俺たちのことを好いてくれている。人間、何も第一印象だけじゃないんだな。いつも照れ隠しで高貴に振舞っているっぽい。

ちなみに姉さんは10歳で、いまこの場にいない兄さんは13歳だ。


「さぁ二人とも、お料理が冷めてしまう前に早く食べましょう。」


そう母さんに促され、椅子に座って昼食を食べ始める。


「そういえば二人は、なんでお母様とお父様のことを母さんと父さん、私とお兄様のことを姉さん、兄さんと呼ぶのですか?貴族の間でなかなか家族をそう呼ぶ人はいませんが…」


そう聞かれて思わずアルナと顔を見合わせる。そして姉さんに向かって俺はいう。


「そうですね。考えたことはありませんでした。強いていうなら…なんとなく?」


「アスト、それ理由になってなくない?でも、確かに私もアストと同じで考えたことはなかったです。なんとなくそう呼んでたぐらいで…」


「…あなたたち、本当に3歳なのよね?口調があまりにも大人びている、というか…」


「「気のせいです」」


「そ、そう?」


「母さんはアストちゃんとアルナちゃんが賢い子に育ってくれて嬉しいわー。」


「母さん。ちゃん付けはやめてくださいといつも言っています。」


「そうですよ。さすがに母親からちゃんはちょっと…」


そう俺がいうと、なぜか母さんは俺たちのことを不思議そうに見てくる。


「子供のことをちゃん付けにするのは当たり前じゃない。あと、アスト。」


「はい?」


「あなた、敬語で話すの苦手で、嫌いでしょ。」


俺はコテっと首をかしげる。


「いや、別にそのように思ったことはありませんが。」


そう言うとすかさずアルナから念話テレパシーがおくられてくる。他の人の前で会話する時は常につなげているようにしているのだ。


『嘘つけ』


『うるさい』


母さんはしばらく俺のことを不思議そうな目で見ると、


「そう?」

といってきた。


「いや、別に嫌いになる要素なくないですか?」

と俺は返す。


「…まぁそう言うことにしておいてあげる。」

そう母さんは再び昼食を口にし始めた。一旦このことは聞くのはやめることにしたようだ。


『母さんって変なところで鋭くないか?』


『それはそう。なんかふんわりした雰囲気に流れそうになるけど油断してたらなんかボロが出そうで怖い。てかなんでアストは敬語嫌いなの?』


『それは、んー、秘密。』


『…あんたそんなキャラだっけ?』


『悪いかよ、今キャラ迷走期なんだから。甘めに見て。』


『あ、了解。あるよね、そう言う時期。私も産まれたての頃はまさに迷走期だったわ。て言うかなんでこんな時期あるんだろうね。本当に自分で自分のキャラ忘れるから嫌になっちゃう。』


『まじそれな。あ、キャラ迷走といえば…』


「どうしたのよ、二人沿って黙り込んで?まさか二人でこっそり脳内で話してる、みたいな双子特殊技能でも使って話してるんじゃないのかしら?」

ベル姉さんは俺たちにそう問う。


「「いいえ、何も。と言うかそんなことできるはずもないじゃないですか」」


「そんな一字一句同じにして返さなくてもいいじゃない!可愛すぎるでしょ!」


こうしてリガーレ家の昼はすぎて行く。

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