第6話 3歳での日常②

 この屋敷では、部屋によっていくつかルールが課されているところがある。

その一つが、書物庫だ。


1. 書物庫の出入りは、二人揃って週に一回。

書物は傷みやすいため、あまり外の空気に触れさせたくないそうだ。


2. 書物庫の本は、基本的に書物庫、または屋敷内のみで読むこと。

無くしたり、これまた痛んだりするのを防ぐためだそうだ。


3. 書物庫の本は、書物庫から持ち出した場合一週間以内に返すこと。

一週間すぎて返されなかったら、盗まれた扱いになるらしい。


なぜこんな厳重に?と思うかもしれない。俺も最初はそう思った。

どうやらこの書物庫の本の多くは貴重なもの、昔のものが多いらしい。下手したらこの国の王族が住む王城の図書室と同じくらいやばいんだとか。なんでだよ。男爵家だろ、ここ。

実は母さん、ルテミリス王国研究者の結構すごい人、らしい。そして趣味が古い本集めだってさ。うん、それだけ。

流石に3歳じゃ得られる情報もあまりない。気長に育つの待つかー。


「…スト、アスト。意識戻してこーい。」


あ、やべ。またやった。


「悪りぃ、アルナ。またやった。」


「本当に、こういう歩いてる、とか二人きりでご飯食べてるとかいうガードが下がった状態の時に考え事してると意識飛ぶ癖やめと欲しいんだけど。こっちの話全く聞かなくなっちゃうから。」


「へーい。」


アルナに飽きられたような視線を向けられる。そんな目をしなくても良くない?


「ほら、さっさと本持って。」


あれ、いつの間に部屋に。


「あ、ああ。」


話が戻るが、週に一回しか書物庫にいけないため俺たちは一週間(7日)で二人合わせて毎週20冊ほど借りている。まぁ、3歳ができる一番の情報収集方法だからな。主に、俺たちがいなかった間の歴史や、最近の有力な国・貴族、そして今の王族なんかを知るためにやっている。1日で3冊ほど読んでいる。もっと速く読むこともできるんだが、3歳の体で完全に本の内容を理解するには一日3冊が限界だった。

 なんせ3歳はできることが少ない。だから、ここ数ヶ月は午前中いっぱい本を読んで時間を潰し、情報を得ている。それに読書は知らないことを知れるから楽しい。飽きない。


そんなことを考えながら、十冊ほどの山積みの本を持ち(魔法があれば今の体でも余裕)、再び部屋を出る。

最初は使用人達に運ばせていたが、自分で運ぶ方が楽だし子供として話さなきゃいけないしでめんどくさいからもう自分たちで運んでいる。

部屋を出たら廊下をまっすぐ行って階段を降りて特別棟通路にってとこに出てその一つの書物庫の通路を通って書物庫に入る。


 ここの書物庫、結構、いやだいぶ広い方だと思う。俺が魔王としていた魔王城には歴代の魔王達が集めた書物や歴史書+頻繁に本を読んでた俺の本とかがあって何十万冊もあったんだが…ここの書物庫、ほとんど母さんが集めたやつだと思うのに最低5000冊はある。本当に、一体母さんはどこからこんな大量の本を入手したんだよ。


 とりあえず腕に積まれた十冊の本をそれぞれの場所に戻す。本の管理は、ここの書物庫にある魔道具が行なっているらしい。ちなみに魔道具とは、魔法とは違うがそれの似たようなことを再現できる道具のことだ。ただこれは、攻撃系の再現はできておらず、音を出したり拡大させたり、部屋を暖めたり涼めたりと平和的なもののみだ。


「今週どの辺借りる?」


「歴史がちょうど区切りいとこで終わったし、現代魔術らへんにしないか?」


「りょーかーい。」


でまた二十冊ほど二人で選別して腕に積み上げていく。途中からは浮遊魔法というものを浮かせられる魔法で乗せている。両手塞がっちゃったら手で取れないんだよな、これが。


「帰ろー。」


「おー。」


このあと部屋にもどて本達を読んで、俺たちの午前中は終わる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る