第4話 血筋変異

6/7/23

長い説明のところは流し読みでも、今後物語を読む上で支障はないです。

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 あれからまた数日経った。俺たちは相変わらず念話テレパシーで転生者トークをしているが、たまにルスト兄さんもきてくれるようになった。

 ルスト兄さんは、王都に遊びに言った時の街の様子や、総合魔術学院、略して魔学院についての存在、そして今の国の状況などを話してくれて、これは普通に面白い。

 しかし、生まれてまだ一週間ほどしか経ってない赤ん坊にこんなことを話して理解できると思っているのだろうか?彼は優秀らしいが、意外とバカなのかもしれない。昨日も服を前後ろ間違えているのをメイドに言われるまで気づいてなかったし。


 それはそうとも、今日は魔力量と血筋の鑑定者?がくるらしい。


『なぜ血筋を鑑定されなきゃいけないんだ?嫁の浮気防止?』


『違うでしょ!って言いたいとこだけど私もわかんない。多分私たちが転生した後にできた仕組みだとは思うけど…』


『まぁ、やればわかるだろう。』


『それもそうだね。』


 そんな話をしていると、見知らぬ男女とともに両親がやってきた。


「二人とも、今日はこの鑑定者アエスターであるキールさんと、ミーナさんに来ていただいたよ。キールさんにミーナさん、またよろしくお願いしますね。」


「おう!」


「任せてください!」


『俺たち男爵で一応貴族だが…なんと言うか、とても元気、だな。」


『そう、ね。』


「ルナリエさんとノーヴィスさんには3回目でいい加減聞き飽きたかもしれないですけど、一応鑑定士アエスターの義務の一つなのでなぜ魔力と血筋を鑑定するのかをお話しいたします。」


『そういえば父さんの名前ってノーヴィスなんだな。』


『確かに…ってそれは今じゃないでしょ。』


『わかってまーす。』


「まず、魔力ですが、小さい頃から魔術を教えるべきかどうか見極めるものです。これを調べることによって、幼い頃から魔力量を増やす訓練を中心にやるべきか、それともその工程より魔法を覚えるべきかを判断することができます。」


『はぁ』


『まぁ、予想通りってところかな。』


「一方血筋は、血筋変異をしているかどうかを知るためにあります。血筋変異とは、先祖返りのようなものです。例えば、ご両親以外の遠いご先祖様の血を受けついでいたり、極稀にですが、全然関係ない人の血を受け継いだりします。複数受け継ぐ場合もあります。ちなみに、血筋変異率は高い方がより優れた能力を持つ、と言われています。

 血筋変異者は、その受け継いだ人の得意なことを最大限に引き出したり、本来その家系では生まれないようなことができたりします。わかりやすい例で言ったら、炎の大魔導士と呼ばれた方の血筋を受け継いだ場合、その人と同等あるいはそれ以上に火魔法が得意だったり、魔力量が少ない一族からすごい量の魔力量の方が生まれる、などがあります。そのため、魔力量と同等に、その受け継いだ血筋によって適性が異なるため、今から教育について考えることができます。」


『…教育バカ?』


『だるいってー。俺そんな勉強するつもりないよー。』


「私たち鑑定者は、その人が誰の血筋をどのくらい受け継いでいるかを調べることができます。具体的に言うと、この特別なレンズ越しにグラフのようなものが現れ、この鑑定レンズに登録してある人々の血筋がどれくらいの割合あるか、知ることができます。血筋変異をしていない場合両親の血筋のみで大抵の場合父母の家系の血筋ともに50%前後で現れます。また、血筋変異者はこの王国に20人いるかいないかくらいの割合らしいです。今までの中で一番の血筋変異は、両親以外が全約22%で3人の違う人の能力を受け継いでいます。あと、なぜだかはわかっていませんが、髪の毛や目、肌などの色は両親からのみ受け継がれます。が、噂では顔の形等は」


『…なぁアルナ』


『どうしたの?』


『つまんないから寝ていい?』


『だめ!今後の役にたつかもしれないでしょ!』


『えー』


 別に寝てても聞くぐらいできるだろ。と言うか、アルナと喋ってる方が楽しいからさっさとしてくんないかなー。

 と言うちょっと常人では言わないようなことを考えるアスト。さすが魔王である。


「あ、ちなみに例え自分たちの血筋の%が少なくても不安にならなくて大丈夫です。血筋といっても、魔力のむら、というか質というか感じ、みたいなのが主なので、


「さて、説明も終わりましたし、早速鑑定しちゃいますね!」


「ああ。よろしく頼んだぞ。二人が血筋変異者だといいな。」


「でも血筋変異者って1万人に1人の確率なんでしょ?流石に無理じゃないかしら…」


 どうやらようやく鑑定をしてくれるらしい。二人は虫眼鏡のようなものを取り出し、ミーナさんはアルナを、キールさんは俺をレンズ越しに見つめた。


「じゃあ行きますね。キールさん、大丈夫ですか?」


「おう!いつでもいけるぜ!」


「では、まずは魔力から。」


「「鑑定・魔力」」


 二人がそう言うと同時に、レンズが一瞬光った。


『やっとかー。』


『まぁ、まぁ、そんなこと言わない…』


「「…っつ!!!!!」」


 と、いきなりキールとミーナが超え人あっていない叫び声をあげ、目を抑えた。


「ど、どうした?」


「ま、まさか二人とも魔力がないとか…」


 父さんと母さんはすごく動揺している。まぁ、当たり前だな。魔力がなければ魔法どころか魔術そのものが使えない。色々な観点から考えても、魔力がないことは大げさに言っちゃうと甲斐がない。…流石に言い過ぎか。

 ともかく、俺たちは確実にだいじょうb…


『魔王ルステリオくん。もし私たちに魔力がなかったら、今ここで切り刻んでやるから、光栄に思いなさい。』


『…はぁ。俺たちが魔力なしなわけないだろ。この念話テレパシーは話している双方に魔力がないと無理だろ?』


『たしかに…』


 うちの姉貴はこれだから困る。

 そうこうしているうちに、キールとミーナが目から手をおろした。


「ま、まさかこんなに…」


「今までで一番魔力量が多いとされるフィアーナ様もせいぜい目が一瞬眩むぐらいと聞いていたのに…」


 やはりな。そっちか。


「えっと…」


「つまり…」


『どういうこと?』


 アルナ…

 アストはアルナを哀れみのこもった目で見る。


『な、なんでそんな目でこっち見るの!?』


『いやぁ、まぁ、な。うん。』


 ジトーッとした目で見られて冷や汗をかくアスト。

 そうこうしているうちに、キールとミーナが説明を始めた。


「えっと、ですね。簡潔にいうと、アルナリアちゃんとアストルムくんの魔力は、生まれた時点の魔力は歴代一番…ってことになります。」


 母さんと父さんが沈黙する。


『そのくらい理解できないと、勇者名乗ってられないぞ。』


『…っ!うるっさーい!今は気を抜いていただけー!』


 最近、というか敬語をなくしてからアルナはどうにも言葉遣いが色々混じっている気がする。

 統一はしないのだろうか。

 ちなみに父さんと母さんは黙ったままだ。


「…とりあえず今度は、血筋の方を鑑定してしまいましょう。」


「そう、だな。」


 鑑定者アエスターの二人はとりあえず俺たちの血筋を鑑定することにしたらしい。なんだか嫌な予感がする。


「えっと、では」


「「鑑定アエスト・血筋」」


 またレンズが一瞬光った。そして…


「「うっそーーーん!!!!」」


 と言って目をかっぴらいた。

 あ、父さんと母さん、ようやく思考が停止した状態から帰ってきたみたいだな。


「あれ?つまり二人は魔力量すごーい!天才!!!…ってことでいいのよね?」


「ああ、つまりそういうことだろう。」


 あれー?母さんはこの辺りで一番賢いって聞いたんだが。

 父さんも仮にも男爵家の当主だろ。二人ともさっきので壊れたか?


『…大丈夫、かなぁ?』


『まぁ、なんとかなるだろう。』


 最悪、俺らがなんとかすればいいだろうし。


「えーと、この二人の血筋、なんですが…」


 多分さっきの反応からして…


「まず、お二人とも血筋変異者です。」


「ちょっと待ってくれ!二人とも、二人ともなのか!?」


「えーそして割合の方ですが…」


「あ、あれ、おーい!」


 無視されてる。かわいそうに、父さん。


「二人とも、同じ二人の方から血筋を受け継いでおり、アストルムくんは5%お二人から血筋を受け継いでおり、ほかの方から一人ずつ90%, 5%づつ受け継いでいます。アルナリアちゃんも同じく、お二人からは5%血筋を受け継いでおり、ほかの方からはアストルムくんと同じ人、しかし配分が逆で5%, 90%づつ受け継いでいます。ちなみにそのお二人が受け継いでいる人は、このレンズに登録されていないため、孤児だった、等の理由で登録できなかった方か、もしくは…」


「このレンズが生まれる前に生きていた人物、ということになるな!」


『…わーお、もう割り切っちゃった…』


『おいおい嘘だろ!?』


 やばいぞ。嘘だろ。ありえない。


『どうしたのアスト?そんな焦った声出して?』


『…いいか、あくまでこれは俺の推測になるが、きっと事実だ。頼むから怒るなよ。』


『う、うん。』


『おそらく90%は俺らの前世の血筋だろう。こいつらのいう血筋は、いわゆる魔力筋、俺たちの魔力の性質のことだ。それで…』


『焦らさないでさっさといって!』


『わかった。…簡潔にいうと、残り5%は血筋だってことだ。』


 つまり、同じ魔法で転生した影響で血筋が混ざった、とアストは考えている。

 怒鳴られるだろうな、とかれは覚悟した。だが…


『なーんだ、それならいいや。』


 ?


『…ってっきり怒鳴るのかと。』


『もう私達は敵対してないから怒鳴るもクソもないでしょ。』


『お前…随分あっさりした性格だな。』


『そんなネバネバいってる方がだるいじゃん』


『っふふ。』


『何よ。』


『べっつにー』


 思ったより仲良くできそうだと思っただけだし。

 そうやってニコニコ?しているアストにあるなは不思議そうな視線を向けていた。


 ちなみに二人がそのように話している間、大人たちの間ではこの二人は天才だから早めに色々教えよう、神童だなんやらと騒いでいた。

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