第15話 カナすらいむの攻略?
「……カナさん、いい加減に――ほげげげげ……お、俺、今日はもうネカフェ行くんで!!」
「すばるくん、おーい? ――って、あら? なるほどなるほど……少年にはすらいむな装備が有効……と。それなら次はもっと喜んでもらいますかね」
見てはいけないモノを見てしまった。いや、正確には全てを見たわけじゃなく、すらいむから溢れ出たある部分のインパクトが強烈だっただけだ。
心の準備が必要過ぎて、思わず自分の部屋から逃亡せざるを得なかった。アニメヒロインの過激な格好は見慣れているものの、さすがにリアルは免疫が無い。
自分の部屋を占拠されたようで何とも言えないが、ネカフェに泊まって朝にこっそり戻って学校に行くしかなさそうだ。
翌日になり、全身をシーツで完全に覆って眠りこけているカナを確認したところで、俺は何とか学校に向かうことに。
朝の休み時間、さっそくこいつに声をかけた。
「なぁ、横山。聞きたいことがあるんだけど」
「……ん?」
昨日カナがすらいむによる挑発的な格好で俺に攻撃してきたことについて、唯一答えを持っていそうな奴に聞いてみることにした。
正直言って、真っ黒いすらいむな姿を見せつけられた時から理性がおかしくなりかけているだけに、そういう知識を知っておく必要がある。
「すらいむが挑発? しかも投げつけてきた? それの対応を知りたいのか? そんなの攻略サイトで拾えば――」
ゲームならそうするのが手っ取り早い。しかしゲームではなく、生身のすらいむを身につけてる奴に対する対応策を知らなければ。
「攻撃は触手とか体を溶かすショット的な攻撃だったか?」
「……いや、まぁ投げてはきたけど」
「魔法だな。魔法なら一発だ。物理に強い奴以外なら、やっぱり魔法が一番効く」
「リアルなすらいむの場合はどうする?」
「はぁ? リアルだぁ? それならなおさら魔法……氷でもかければ動きは止まるんじゃねえの? 知らんけど……」
横山は俺をかなりおかしな目で見つつ、生温かく見守ることを決めたようだった。何にしてもこれで俺は、すらいむなカナを克服出来る攻略方法を知ることが出来た。
平日はバイトを減らしていることもあって、放課後になって俺はすぐにアパートに帰ることに。
コンビニに寄ろうとも思ったが、小桜キイが最近になって動きを活発化させているだけに、寄り道するのも命がけという問題が発生している。
「た、ただいま」
まだ夕方手前の時間帯。自分の部屋なのにおそるおそる入ろうとすると、当然のように返事が返ってくる。
「おかえり~! 帰ってきてくれたようで何よりだぜ!」
「……ちなみに今はどんな格好を?」
玄関から部屋へは、半分だけ開けっ放しのドアを通過すればすぐだ。だが、カナは俺の反応を楽しむという悪いクセがあるので油断してはならない。
「それは見てのお楽しみだぜ! 恐れなくてもあたしは普通の格好なんだぜ」
「本当に?」
「本当だとも!! すばるくんに置いてもらってる身なんだし、信用してもらわないとお姉さんは悲しくなっちゃうぞ!」
力強い返事ではあるが、念には念を入れて洗面所に寄ってから部屋に向かうことにする。
さすがに俺の趣味空間に氷をぶん投げるわけにはいかないので、密かに用意した冷感タオルを使ってカナに不意打ちすることにした。
「ちょっと顔を洗ってきてから顔を見せますんで」
「おぉう! 男前アップさせてから見せてくれるわけだね?」
「そんなところです」
果たしてうまくいくかどうか。
「カナさん、もうすぐ部屋に行くので大人しく待ってて」
「…………」
しかし返事がない。
今まではそれが当たり前だったとはいえ、独り言はなかなかに空しいものがある。
そんなことをしみじみと思っていたら、背中に何かがぶつかってきた。
「うっ!? えぇっ? ちょっと、何をして……」
「サプラァ~イズ! どうだい、二日目のすらいむの感触は」
制服を脱いでTシャツだけになっているせいか、背中に当たっている何かの感触はやけに弾みがある。
どう考えてもすらいむそのものだ。やはり調子に乗っていたらしい。それならそれで、振り向きざまに冷感タオルで頭でも冷やしてやろう。
「カナさん……俺には通用しないですよ! お返しだー!!」
「うわおぅ!? す、すばるくん、急に振り向いたら……」
「――えっ?」
頭や顔に向けて冷感タオルをかけるつもりが、カナの弾みのある部分に命中。
俺が驚くよりも先に、
「ひっ、ひええええええ!!! 冷たい冷たい冷たいいいいいいいい!!」
カナは驚きと冷たさが同時に襲われたことで、手をばたばたとさせながら慌てて浴室へと駆けこんでいった。
「……何で何も身につけてなかったんだよ」
すらいむよりも凶悪な格好をしていたとか、一体何を考えてるんだあの人は。
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