第11話 ガン見ドラゴン

 大満足の晩ご飯を終えて、お腹ポッコリドラゴンになった僕は、アンジェリカに抱かれて離宮の廊下を移動していた。自分で歩かなくていいから楽ちんである。


「ケプッ」

「ふふふっ。たくさん食べましたね。少し重くなった気がします」


 実際、重くなっていると思う。お腹がはちきれそうになるくらい食べたからね。1,2キロくらいは体重が増えているだろう。


「着きましたよ」


 メイドさんによる人力自動ドアの向こうは、これまでの部屋とはちょっと違っていた。床は絨毯ではなく、寄木細工のような模様が美しいフローリングとなっている。木製のイスやテーブル、長イスが置かれ、壁には大きめの棚やタンスが並び、大きなハンガーラックにはいくつもの服が吊るされ、大きな鏡まである。たぶんここ、ウォークインクローゼット、衣裳部屋の類だと思う。着替えるのかな?


「ちょっと待っててくださいね」


 そう言って僕をイスに座らせるアンジェリカ。すると……。


「姫様、失礼致します」

「はい。お願いします」


 なんと、メイドさんたちがアンジェリカのドレスを脱がせ始めた。突如始まったお姫様の脱衣ショーに、僕は口をカパッと開いて驚き固まってしまった。だって、美少女の柔肌が徐々に露わになっていくのだ。メイドさんたちの仕事が早いのか、そのスピードは早い。


 いけない。そう思っても目が離せなかった。アンジェリカが身に着けていた下着は、白のレースが美しい下着の上下だった。僅かに光沢を放っている。絹製だろうか?


 アンジェリカの下着は、不思議な形をしていた。まるでコルセットとブラジャーが一体化したような下着だ。ドレスを着るためか、肩紐は無く、その代りに、コルセット部分から紐が下がり、ガーターベルトのように長い白の靴下を留めている。このブラジャーとコルセットとガーターベルトが一体化したような下着は初めて見たな。


 下着姿のアンジェリカは、とても美しかった。白い下着に負けないくらい白く輝く肌をしている。胸はまだまだ控えめだが、コルセットをしているからか、腰はキュッとくびれ、丸く形の良いお尻へと続いていく。脚は驚くほど細く、しなやかな印象を受ける。ビックリするくらいスタイルが良い。美少女でなおかつこのスタイル……最強かな?


 そして、その下着さえ取り払ってしまおうとメイドさんたちがテキパキと動く。僕を焦らすように、最初は靴下から脱がすようだ。靴下を結んでいる紐を外し、右脚、左脚と脱いでいく。たぶん人前で脚を晒したことなんてないだろう。日焼けなど知らない真っ白な新雪のようなしなやかな脚が露わとなる。僕はアンジェリカの脚を見ただけで、固唾を飲み込んでしまった。ゴクリと、自分でも驚くほど大きな音が鳴る。


 靴下を脱ぎ終わったら次は上かと思ったら下だった。メイドさんは、躊躇なくアンジェリカのパンツを下ろしてしまう。どことは言わないけど、アンジェリカはツルツルだった。15、6歳くらいだと思ったけど、もしかしたら、アンジェリカは僕が思っているよりも幼いのかもしれない。


 そして、最後にコルセットのような下着が緩められ、ストンと下ろされる。アンジェリカの慎ましやかな、しかし、たしかに膨らんでいる双丘、そしてお腹が露わになる。頂点が小さく淡い桜色に染まってかわいらしい。コルセットが外れたというのに、ウェストはキュッとしたくびれを維持していた。おへその形も綺麗だ。


 僕の目線は、アンジェリカの裸に釘付けだ。一糸纏わぬアンジェリカは、まるで美の女神のようにとても美しかった。見逃してはなるものかと、視線で穴が開くほど見つめ、脳内にアンジェリカの裸体を記憶していく。


 不意に、アンジェリカが僕を見た。ドキリとする。見ていたことがバレてしまった。


「お待たせしました」


 怒られるかなと思ったら、アンジェリカは笑顔を浮かべて僕に歩み寄る。は、裸のアンジェリカが目の前に……ッ!?


 呆然と見ていることしかできなかった僕を、アンジェリカが抱っこする。甘いミルクのような、花の蜜のようなアンジェリカの匂いを強く感じた。


 僕を抱っこしたアンジェリカは、僕の座っていたイスに腰を下ろした。僕は裸のアンジェリカの膝の上だ。アンジェリカの太ももは、細い外見とは裏腹に柔らかく、温かかった。裸のアンジェリカに抱かれることで、背中にアンジェリカの柔らかいお腹と胸の感触がダイレクトに感じる。


 この体勢は非常に気持ちが良い。柔らかいアンジェリカに包まれて、アンジェリカの体温に、じんわりと体が温められていく。1つ難点を挙げるとしたら、アンジェリカの顔も体も見れないことだろうか。僕はそれが我慢できなくて、アンジェリカの腕の中でクルリと反対側に体の向きを変える。アンジェリカと向かい合って抱き合うような形だ。


「ルー? どうしました?」


 アンジェリカの声に上を向けば、キスでもしそうなほど至近距離にアンジェリカの顔があった。メイドたちが丹精込めて整えたであろう優美な眉毛。零れそうなほど大きな、まるでサファイヤのような青い瞳。スッと通った鼻筋に、ツヤツヤ桜色の小さな唇。


 至近距離で見つめ合う僕とアンジェリカ。


「ルー?」


 僕はアンジェリカに名を呼ばれて、ハッと自分を取り戻す。そして、アンジェリカのような美人さんと見つめ合っていることが無性に恥ずかしくなってきた。


「クー…」


 自分でもなにを言ったのか分からない鳴き声を上げて、僕はアンジェリカの瞳から逃げるように下を向いた。

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