第43話

「それじゃあ、よろしくね。コユキさん」

「はいよ、任しとくれ」

 湿っぽいのは苦手だと告げたお姉さんは、笑顔でそう告げる。

 対するコユキも、普段と変わらない様子で鎌を構えた。

 そして、振り下ろされた鎌はお姉さんの魂を昇華し、来世へと誘う。

「ミライくん!」

 姿が消え始めた時、お姉さんに名前を呼ばれる。


「コユキさんの事、よろしくね!」


 ぼくは軽く請け負おうとして、はたと気付く。

 お姉さんの眼差しは、口調と裏腹に、とても切実な想いを宿していた。

 さっきコユキと二人で話していた時に、何かを聞いたのだろうか――コユキの、秘密を。

 それがお姉さんにあんな想いを抱かせているのだとしたら……。

 ぼくは一度深呼吸して、もう一度お姉さんを見た。

 そして、今度こそ力強く頷く。

「任せて!」

 すると、お姉さんは安心して笑みを浮かべた。

 それから、コユキを見つめる。


「       」


 最期の言葉は、かき消えて聞こえなかったけど、コユキにはちゃんと届いていたらしい。

 白い死神は優しく微笑むと、『あんたもね』と小さく返すのだった。



 こうして、お姉さんの人生は幕を閉じた。

 自分の為に生きた人だったけど、彼女の歩んだ道は、多くの人の心を華やがせたに違いない。

 彼女にもらった希望を胸に、ぼくは未来へと一歩を踏み出すのだった。

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純白の死神 椿あかね @sakura245

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