第42話
やがて、お姉さんとの別れがやって来た。
コユキさんと共に戻ってきたお姉さんの腕の中には、スカーフがある。
赤ちゃんを包み込むような優しい手つきに、思わず頬が緩む。
お姉さんはぼくにスカーフを渡して、『しっかりね』と励ましてくれる。
ぼくは頷き、コユキに歩み寄った。
そして、彼女の首元にそっとスカーフを巻いてあげる。
予想外のぼくの行動に、白い死神はきょとんとしていた。
それから、何かに気付いてスカーフに触れる。
「これは……雪の刺繍かい?」
「うん。コユキの名前は、粉雪でしょ? だから……それをイメージして作ったんだ。お姉さんとぼくで」
「ヒヨリと……ミライで?」
コユキは目を瞬かせると、フッと微笑んだ。
ようやく、自分への贈り物だったのだと気付いたらしい。
それから、お姉さんを手招きし、ぼく達をギュッと抱きしめてくれた。
「ありがとうねえ……あたしゃ、ホントに嬉しいよ」
コユキが心から喜んでくれていると分かり、ぼくはほっと息をつく。
そして、お姉さんと笑いあった。
お姉さんの笑顔が泣き笑いに見えるのは、どうしてなんだろう。
最期の仕事で、こんなに喜んでくれて嬉しかったのかな。
(そうだといいな……)
コユキの温もりを感じながら、ぼくはそう思った。
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