第3話


「いやあ、まさか同じ死人に会えるなんて! 死んでるって気付いた時もびっくりだったけど。あはは!」


 大笑いするおじさん。たぶん、この人が探していた人なんだろう。釈然としないけど。

 でも、どこか安堵している自分もいる。

 もしそうだったなら――コユキがどんな行動を取るのか。今はまだ、知りたくなかった。

 知れば、彼女に対する何かが変わってしまいそうで。

 だけど、コユキは今どんな気持ちなんだろう。

 あんなに懸命に駆け付けて、その相手がこんな調子だなんて――。

「ああ、あたしゃ死神だよ。こっちの坊やは死者で間違いないけどね」

「へえ、そうなんだ! 死神って初めて見たよ。こんなキレイなお姉ちゃんだったんだ!」

「おやおや、嬉しい事を言ってくれるねえ」

 コユキは、割と普通に会話をしていた。

「い、いやいや! コユキ! 君、さっきまで慌ててここに向かってなかった!?」

「慌てて? なんの事だい?」

 思わずツッコんでしまうぼくを、誰が責められるだろうか。

 しかし、彼女は心底不思議そうに問い返してくる。

「え……っ。じゃ、じゃあ……あの真剣な表情は、なんだったの?」

 コユキは首をかしげた。

「死者を見つけたら、現場へ急行する。死神の基本だろう?」

 そんな『刑事の基本だろう』みたいな言い方されても……。

 遠くを見つめるぼくを放置し、彼女は話を再開する。

「まあ、そんなわけで、ビルから飛び降りるあんたの姿が見えてねえ。この子と一緒にここまで来たってわけさ」

「あーなるほど……。それは、悪い事をしたかな……」

 ぼくをチラリと見て、おじさんはバツが悪そうに笑う。

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