第4話

「まったくだよ。いくら死んでるからって、あんな高い所から飛び降りるなんて。この子を驚かせちゃ可哀想じゃないかい」

「……え?」

今、『死んでる』って言わなかった? それで『飛び降りた』って……。

慌てて辺りを確認するが、おじさんがいた交差点近くに、死体も血痕の跡も見当たらない。

という事は――。

「で、あんた。いったいどこで死んだんだい?」

「んー……俺の家、かな。朝起きたら、もう死んでた」

ぼくは頭を抱えてしゃがみ込みたくなった。

ひとまず、ぼくの心配を返して……。

「……うわ、めんどくさ」

ふと聞こえた声に、ぼくは顔をあげる。コユキの右肩に乗っているミアと目が合った。

「ボク、寝てるから。――後はよろしく」

そう宣言した黒猫は体を丸めて、目を閉じた。

猫……っ!! 心の中でそう叫び、ぼくはがっくりと膝をついた。

「ミライ? どうかしたのかい」

「なんでも……というか、それならもっと早く教えてくれればよかったのに」

「おや、それもそうだねえ。あたしが悪かったよ、許しておくれ」

言われて初めて、己の非に気付いたようだ。どっと感じる疲れに、深いため息が出てしまう。

それから、決まり悪そうにしているおじさんに問いかける。

「……それで、なんで飛び降りてたんですか。もう死んでるんでしょう?」

「ああ、それはね……なんとなく、やってみたくなったんだ!」

「――は?」

返ってきた返答は、意味不明なものだった。

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