第7話 逃亡テロリスト傷害事件-外伝03
電話の相手の言葉に、ガス人間8号と呼ばれる青年は涼やかな顔を曇らせ問いかけた。
「どういう事です? 放っては置けないでしょう」
「ジジィかよ? 銀八ぃ」
彼をガス人間8号と呼ぶ、1398番宇宙の同一人物に
その間にも、電話の相手は彼に、理由を説明していた。
「彼女はエージェントだ。任せていれば、それで良い」
「彼女に任せていれば、と言われても」
自分の声に不満の微粒子が漂っている事に気付きつつも、銀八は会話を続ける。
「彼女が何者なのかも、我々は知らないのですから」
無理言うな。目の前で彼方を
「お話中に何なんだがよぉ。あの姉ちゃん、
「え?」
「おぉ! 代わりにボウズが立ち向かうってよ。あのピンモヒ相手によぉ」
急展開に目の前が暗転しそうになりながら、銀八は
「お聞きになっていたと思いますが、どういう事ですか?」
「これは……」
想定外だ。そんな言葉に珍しく声を荒らげて、ガス人間8号と
「
「だよなぁ、けどよ。あのボウズ、
対照的に、のんびりとした口調で皮ジャンの男は彼方を
「けどよぉ、ここまでだぁなぁ。やっぱボウズ
「今すぐ助けに……」
電話中でも塔から飛び降りかねない青年を、
「意外に
そのとおりだ。と電話の相手の
「急所への攻撃を巧みにずらしている。更に良く鍛えているようだ、打たれ強い。これも少年の成長に必要な儀式と言った所か」
「貴方の意見は聞いていませんよ。高校生が軍人
再び抑えた口調に戻って、ガス人間8号は電話を切ろうとし、頭に浮かんだ疑問を言葉にした。
「
「必要無いからだ、さっきもそう言ったと思うが?」
ふざけるな! そう怒鳴りたい衝動にかられ、思わず手にしたコミュニケーターを
そんな彼の耳に、目の前の皮ジャンの男の
「あ~あぁ。ついに気ぃ失っちまったかよぉ。ドテッ腹に
ここからだ。そんな電話の相手の一言に、青年は不満を
「
再びの、必要無い。と言う返事に銀八が怒鳴るより早く、彼方を見詰めていた
「ひょうぉお! なんてぇ
「どういう事です? 一体、何が」
「オメェも見てみろよぉ、銀八ぃ」
「
「さてはオメェ、ボウズと同じ仮性近視ってヤツだぁろ?」
「違いますよ。
苦虫を
「おぉ!
「
「
ただの感想か。銀八は電話を切って映像を見たい衝動に
そんな彼の耳に、低く渋い声が割り込んでくる。
「なかなか、よく見ている。
「よく聞き取れますね」
君の使用している機械の性能が良いからだ。電話の向こうから少し前に知り合った中年過ぎの男はそう言った。
「この人の声が異常に大きいからでしょう」
父の発明品を
「うぉお! 更に
そう言われても、現在、何が起きているのか、行われているのか。実況中継をしている男の話からは何の情報も得られない。
コミュニケーターを
「間もなく終わるようです。我々の出番は有りませんでしたね」
「そうでは無い」
「え?」
「むしろ、これからだ」
渋い低音の一言に、ガス人間8号は食いつく。今までは、何だったのだと。
「考えてみたまえ、事件解決後を」
そう言われても。と返しつつ銀八は、電話の向こうの相手、ビューレットと呼ばれていた中年過ぎの
「
受け入れられるものか? そこから導き出される事実を。
耐えられるものなのか? 守るべき女性が実は……などと。
ビューレットが
「なるほど、判りました。我々が偶然、通りかかった。そんな感じに、と言う事なんですね?」
理解が早くて
「タダ働きは
彼方を
その声を拾ったコミュニケーターの向こうから、役得になるだろう件を中年過ぎの
「それで手を打ちましょう。
ふっ。と息の抜ける小さな笑い声を聞いた気がして、銀八は更に
「正直に言えば、そうだな」
「
「彼女の実力を見ておきたかった」
「それほどのエージェントなのですか?」
君は
「そうでは無い。君は、ここ1500番宇宙での単独捜査権を、
「ええ。それが何か?」
その時に会っているはずだが? とビューレットは口にする。
「まさか……」
この世界の、言わば入国管理局に当たる所で、彼は様々な許可の
腰まで届くロングヘア、色香を
「まさか、あの人が?」
あまり女性に興味を
恋愛感情などでは無いが、あまりの
「しかし、似ても似つかない……」
「同じ感想を、少年も
立ち聞き? いや、
「何者なんです? 彼女は」
君も聞いた事が有るだろう?
相手が呟いた名前に銀八の反応は、かなり間抜けだった。
「はぁ? は、はっ? そんな馬鹿な……」
同時に目の前の、異世界の同一人物が振り返った。
「終わったぜぇ、銀八ぃ。あんな
ええ、そうですね。そう答えながら
「しっかりしろよぉ。オレら、
「え?」
「あのボウズを何とかしてやる事もできねぇやな、こんな所じゃぁよぉ。あの
「おそらく……」
「道すがら聞かせてもらうぜぇ、色々とよぉ、さっきの話も含めてなぁ」
再び顔を
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