第6話 逃亡テロリスト傷害事件-外伝02
スケートパークを含むオリンピック公園には、様々なスポーツ施設が存在する。
その中の、公園のセンターにあたる中央広場の北側に設けられた池の
「たぁく、んなトコに呼び出しゃあがって」
「文句言わないでください。呼び出されたのは、私も同じなんですから」
普通は誰も登る事のできない、高さ50メートルの記念塔のテッペンで今、二人の男が
一人は5月も
二人は見た目の違いは有れど、その顔立ちが
「しっかしよぉ、ホントに来んのか? あのボウズがよ」
「そういう話ですからね、来てもらわないと困ります」
「んなジジィの話、マトモに信じんのかぁ? ガス人間8号よぉ」
「あの人物の話はともかく、
あの人物ねぇ……
「
「いやぁ、もう
「あぁ、なるほど。まぁ彼が、この1500番宇宙での
「オレ様だってよぉ、なんだがよ?」
「私もそうでしょう? お互い様です、1398番宇宙の
「いつも通りの
苦笑しながら、
昨年の秋、偶然から顔を会わせてしまった多元宇宙の同一人物三人の内、1500番宇宙と呼ばれるこの世界の本人は未だ高校生。
彼を事件に巻き込んでしまった事に若干の
「では
そう告げた薄物のジャケットを
対する皮ジャンの男は、更に複雑で神秘的な生命体だった。
「だぁなぁ……ってよぉ。来やがったぜ、マジか?」
「何です? 一体」
「来やがったんだって、あのボウズがよぉ」
「どこです? 全く見えませんよ」
遠くまで見渡せる記念塔の上から
「まだ見える距離じゃねぇがよ、どんどん近付いて来るぜぇ」
「どうして判るんです?」
「あのボウズ、あん時のタリズマンを持ってやがんだぁ、今よぉ」
「貴方を、その
そう口にして、気化生命体は
「それなら今、貴方はどうやって
もっともな質問に、
「俺様を初めとしてよぉ、1398番宇宙じゃぁ、このタリズマンに収まって生まれて来んだぁな」
「本当に、剣と魔法の世界ですね」
「て、ほどじゃねぇがよ。本物の魔法は、んなもんじゃねぇしなぁ。んで、これの力でケイ素製
あっけらかんと笑いながら自身の種族の秘密を語る、異世界の同一人物に
「では、あの秋の……ニセ総理事件の時の、今は
「ありゃ
「それを、あの時に?」
「ちょいと無理めの件だったからよぉ、
多元宇宙を渡って追い続けた犯人の反撃で、一時は
「確かに。我々に出会い、助力を得た訳ですから幸運をもたらしたと言えるでしょうね」
「よく言うぜぇ
「
「まぁ、アレにゃ感謝してっけどよぉ」
相手の若干照れたような物言いに、
この半年余りで互いの事は、よく判るようになって来ている。
どちらかと言えば品の無いガラッパチで自分と同一人物とは思えそうに無いが、この1398番宇宙の
「で、だぁな。その、
「いやいや、まさに剣と魔法の世界ですよ」
肩をすくめながら言う
「とりあえず私には、そんな
言いつつジャケットの内ポケットから、スマートフォンらしき物を取り出し操作する。と、そこに記念塔から見えるスポーツ施設の画像が次々に浮かび上がった。
「この辺り一帯の防犯カメラを
「ボウズにゃ甘ぇなぁ、
「どちらが甘いんでしょうかね?
「もろ宇宙Da作戦みてぇじゃねぇかよ。まぁ、ありゃここのドラマだけどよぉ」
「スタァートラップですか? 私の世界ではまだ、あんな風に星々を
自分の所では月は拝むものだ、そう言って
「何だぁ? こいつぁ」
そこにスポーツ施設の一つ、改修中のスケートパークを取り囲む金網の支柱に棒状の物を立てかける長身の男が映っていた。
「茶髪のロン毛、バイトの清掃員でしょうか? 売店の方に行くようですが」
「どうでもイイぜぇ、それよかボウズだ。こっから見えてる硬式野球場まで来てんぜぇ」
楽しそうに笑う革ジャンの男を尻目に、
「そのルートなら……目的地はスケートパークか」
「おぉ、当たりじゃねぇかよ」
「しかもよぉ! 女連れたぁな……成長しやがったなぁボウズよぉ」
「何を
「何でぃ、この牛乳瓶の底みてぇな
そして二人して、あっと声を上げる。
「
「そっかぁ。天はボウズを見放さなかったってぇ事だなぁ」
二人は
「にしても、写り悪ぃな。せめて声は出えねぇのかよぉ、
「無理言わないでください、監視カメラの映像なんですから。まして音までは」
「くぅ~。つまんねぇ」
「なんですか、それは。あぁ、二人して売店の方へ、あっ!」
金網から離れ、歩き出した二人の向こうで、支柱に立てかけられていた棒状の物が浮き上がるのを目にし、ガス人間8号は思わず叫ぶ。
「ピンモヒだぜぇ!」
「
金網を
長身のその男が手にした棒状の物が、
「やべぇ、逃げろボウズ!」
振り下ろされる
「これでは……いや、無事のようですね」
「ピンモヒ、ど
後ろに飛び退くリクルートスーツの女子大生の姿に
「こうしちゃ
「ええ、急ぎましょう」
言葉を発した瞬間、
「誰が、今」
画面の映像を切って出た電話の向こうの人物は、こう切り出した。
「今、動く必要は無い」
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