逃亡テロリスト傷害事件
第1話 逃亡テロリスト傷害事件-本伝01
午後9時を過ぎた下町のコンビニ。お客は
何か食べる物を、そう思って入ったけど。
偶然、手にとった週刊誌のグラビアに目が釘付け。ただいま空腹さえ忘れて、立ち読み中。
「意外と……かわいい」
なになに、初ビキニ? 台湾出身の巨乳アイドルか……あれ? 確か、どこかで聞いた気が?
それにしても……
「でかっ」
俺、胸よりお尻派なんだけど。いや、それはこの際どうでもイイ。とにかく目が離せない、それほどのスケール、圧倒的ボリュームってヤツ?
気付けば
しかし、本を持つ腕が痛い。
「平日の方がキツイんだな……」
今日から
日曜日のご家族向けと違って、マジ
もっとも、それを望んでの参加だから、俺にとっては願ったり
「誘い断っちゃたからな……埋め合わせしないと」
我が友、
「土曜日、どっか繰り出すかな……」
「少年、そのまま聞いて欲しい」
「え?」
全く気付かなかった。立ち読みにふける俺の横に、5月半ばなのにトレンチコートを着込んだ中年過ぎの
「前を向いて、グラビアを見たままで良い」
うぅ。巨乳アイドルのページ開きっぱなし。ちょい恥ずい。
「お、お久しぶりです」
「そうだな。今日は伝達が有る。そのまま聞いてくれ」
表情が硬いな、ビューレットさん。
言うまでも無く、その人は先日の秋葉原ビル爆破テロ事件でお世話になった、俺の命の恩人だった。
「悪い話で済まない。
「えっ!」
当然だよね。ビル爆破テロの主犯が、現在も逃走中だなんて。ただ……
「生きてたんですか、ピンモヒ」
俺は、そう聞き返していた。
ビルの7階から転落したんだ、もしかしたら助からなかったんじゃないか。たった今まで本気で思っていた。
「ああ見えて、奴は軍人
どうりで。
「しかも本部から
気狂いに刃物。頭にパッと浮かんだ言葉は、それ。ロクでも無い事になってるみたいだね。でも、それをなんで俺に?
「奴の
「え?
再び、コンビニ内の客が振り向く。
「残念だが、おそらく事実だ」
「なんで、俺を?」
俺より頭一つ高い、レイヤーなガンマンさんを見上げて
「あの事件で、奴は君に敗北した。プライドが許さんのだろう、素人にやられた事が」
ちょい待って欲しい。ピンモヒを倒したのは俺じゃない。でも、それを知ってるのは俺だけか……
いや、ピンモヒ自身が知ってるはずじゃないか?
「あの、ビューレットさん」
「む? 何かね」
もう最初の、前を向いて。っての二人とも完全に忘れて互いに向き合う。
「あの、ピンモヒを倒したのは……」
「君では有るまい」
「え? 知ってたんですか?」
「当然だな」
「あ、やっぱり?」
「実は、あの時、見たんです」
興味深そうな視線を、我が恩人が送ってくる。俺は記憶を掘り返して、とにかく言葉を
「ピンモヒにナイフで刺されそうになった時、黒い物が飛んできて……」
「これだろう? 少年」
レイヤーなガンマンさんがポケットから取り出して見せたのは、あの時ピンモヒこと
「
忍者。何となく納得してしまった。ビル6階に突然現れた謎の……多分、女性。
くノ一って奴?
「その後、黒のスラックスが俺の頭の上を通って、ワインレッドのハイヒールの
「
「絶対、本物です!」
「ふむ……」
その一言の後、ビューレットさんは黙り込んでしまった。
「あの……」
おずおずと話しかける俺。それに合わせて我が命の恩人も、考え込みながらって感じで口を開いた。
「この黒い
「え?
「君より先に、
「そんな事、無いですよ。魔術師さんのおかげで俺、助かったんですから」
「そう言ってもらえると、実は私も
班長。
「その手品師も、ある人物に救われて
そう言いつつ、手の平に乗せた黒い
「君を救った者と、おそらく同一人物だろうと思う」
「それは、誰なんですか?」
「さて? そこまでは断定できん。顔を
「そうですか……」
残念だ。できれば会ってお礼を言いたかった。二人目の命の恩人に。
「ともかく、しばらく君は姿を
えー。学校休めっての? いや、
「その間、でき得る限り早く、
「でも、学校が」
授業はツライが学校は楽しい。俺も普通の高校生。やっぱりズル休みはイカンよね。
「その学校が一番危険だ。少年、君は学生証……いや生徒手帳か。最近、落とさなかったかね?」
落とした、確かに。
でも、それは2日前、学校に届けられて無事、俺の元に戻って来てたんだ。
「それをどこで落としたのか、覚えているかね?」
「多分……あの時だと思います」
あの時。そう、あの日。
ピンモヒ一味に捕まって、多元宇宙のもう二人の俺に助け出された、さっきから続いてるビューレットさんとの話の舞台、その当日。
「それを君の学校に届けたのは、誰だと思うね?」
そう耳にした
やたら背の高い男の人で、女みたいな
「ピンモヒだったんだ……」
「家は知られていないかも知れんが、すでに学校は割れていると思った方が良い」
心臓の
「身を
「は、はい」
「もう一つ、いや、何でもない」
それだけ告げて、レイヤーなガンマンさんはコンビニを出て行った。
はくじゃでんせつ。そんな
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